何歳からでも遅くない。
祖父が亡くなった。70歳だった。
2022年3月24日。
祖父は40歳ごろから精神的な病気にかかってしまって、そのころから一切働いていない。
それまでなにをしてきたかって、どんちゃん騒ぎ、遊びまくり、DV、いまなら捕まるけど、動物を殺したりとか。
祖母はそんな祖父を何十年もめんどうをみてきた。
いまになって話を聞くけど、怖くてたまらなかったらしい。
口をまともに動かせなくなっても、体をまともに動かせなくなってもずっと。
そんなにも恐れていた祖父が亡くなるのを見て、それでも涙を流す祖母の姿は、さすがに堪えたな、と今では思う。
祖母は70年間、遊んだことがない。
一人でどこかに出かけたこともないし、行きたいことややりたいことというのは全部あきらめてきた。
祖父に止められるうえに、下手すりゃなにをされるかわからない。殺されるかもしれない。
文字にするとバカらしいと思うかもしれない。別に思ったっていい。なんなら伝わらなくたっていい。何よりこの文章は、自分の想いをただただ書き留めるため、祖母への愛と尊敬をこめた文章をどんな形でもいいから世に残しておきたいから書いているだけだから。
なにかをしようとしたら、○○が怒って怒ってしかたないのよ。
祖母はそう語る。
だからこそ、したいこと、やりたいことを全部我慢してきたという。
そんな祖母が、第二の人生を歩み始めている。
やっと、らしい。
やっと、自分が思うように、自分がいいなと思ったことを素直にやれる時間が来たらしい。
毎日散歩に出かけているし、スーパーに行って値引きの品を見るのも楽しい、服を見るのが楽しい、景色を見るのが楽しい、何もかも楽しい。
高齢者の運動プログラムのようなものに申し込んで、交流を作って楽しんでいるらしい。
交流すら持たせてもらえなかったみたいだから。
祖父が怒るから。
本当に、何歳からでも遅くないんだなって思う。
たとえ何十年の我慢があっても、いつかはそうして笑って自分の思うように生きられる日が必ず来る。
生きてさえいればそれでいい。
いつかは必ずそういう日が来る。
祖母を見ているとそう思う。