シェアメートは野菜炒めを作っていた。 俺もうどんを煮ようとお湯沸かした。
先日、俺が仕事から帰ってくると、
水球系のシェアメートが野菜炒めを作っていた。
彼は大学のときに水球部で本格的に水球をやっていた。そのためなのかどうかいつもパンツ一丁だ。名前はひろし。
俺も着替えてキッチンに行き、 うどんを煮ようとお湯沸かす。
「あ、家賃払います。」
「じゃあ飯の後で。」
彼は使い終わったフライパンを流しで洗いながらそう言い、
俺はうどんの袋をあけながらそう答えた。
「あっ」と背中で声がした。
声の方を振り返るとちょっと目を疑う光景がそこに現れた。
笑顔の彼の右手にはフライパンの丸い方。
笑顔の彼の左手にはフライパンの棒の方。
お、おっ、折れている!!
筋肉のみで構成された裸の上半身が
放出したエネルギー量の膨大さを物語っている。
「折れちゃいましたね」と屈託のない笑顔。
「折ったんだよ、お前が」と言いたい俺だが、
びっくりしすぎて声がでない。
そこへ登岩系シェアメートが登場する。
彼はクライミング(ロープを使わないやつ)をしにオーストラリアにきている。指の第一関節さえ引っかかればどこにだって登っていける。そのためなのかどうかいつもパンツ一丁だ。名前はひろし。
彼は蛇口からコップに水を注いで一口飲み、そして言った。
「直そうか?」
な、な、直るんかーーーい?!
柄の付け根の部分がぽっきりと折れている。直るわけがない。
フライパンを手に取って状況を確かめる。
「無理か。」
「あたりまえじゃ」俺は心の中で突っ込む。
しかしそんな俺の心を踏みつけるような、
予想外の言葉が登岩系の口から飛び出す。
「曲げていい?」
えっ?
うどんの袋を持ったまま、開いた俺の口は、ちょっとその広がりを増す。
登岩系気合一発。
はーーーーっ!
さっきまで丸かったフライパンの鉄部分は、
クリームを挟んだワッフルのようにクイッって半分に折れ曲がった。
無駄なく引き締まった彼の上半身も
放出したエネルギー量の膨大さを物語っている。
初めから直す気なんてなかっただろ!
と口にはせずに突っ込む。
おおーーっ
拍手して称える水球系と満足そうな登岩系。
お前たち、本当に人類か…?
力が有り余ってるからといって、
俺んちのものをそうやって笑顔で破壊していかないでね。
頼むから。