真っ暗なトイレの個室の中からパンツ下げたままの状態で「EXCUSE ME!!!!」って大声で叫ばなくていいように、まず一声ください。
金曜だってこともあったのか、勤務先全体がクリスマス前の浮かれムードで、 朝からみんなあまり仕事に身が入ってない雰囲気だった。社長(イギリス人女性)の席からしてクリスマスソングが流れていたし。
で、4時半過ぎに彼女から「As only two weekends before Christmas – make sure you leave the office by 5pm! Enjoy and have a fun weekend with plenty of Christmas cheer.」という一斉メールが来た。遅番の10時出勤の人はラッキーだ。
社長の命令に従順な日本人チームはぴったり5時に退社して、キングスクロスの日本食レストランで忘年会。そのあとお決まり通り2次会へ、の流れを振り切って俺だけ会社に戻った。週末使うために買い物したのを荷物になるから置いてきていたのだ。
エレベータで上がるとフロアにはまだ電気がついていた。セキュリティを解除して中に入る。会社にはもう誰もいないようだ。誰か居てもびっくりするが、誰もいないのもシンとしていて落ち着かなさを感じる。
デスクにカバンを置いてトイレへ。個室に入って座る。狭く閉ざされたところは怖いから嫌だが、だからといって扉を開けっぱなしにするのも抵抗がある。誰も居ないと思いこんでいるところへ人が入ってきたら怖すぎるからだ。
用足しのプロセスの前半部から中盤が終了し、残りがどの程度かを探りに入っているときに思ってもいないことが起きる。
前触れもなしに電気が消えて辺りが真っ暗になったのだ。
パニックにまではならなかったがびっくりしたのは間違いない。
警備の人が見回りに来て電気を消しちゃったんだな。と冷静に考えた。同僚ならフロアの電気を消したりはしない。時間的に掃除の人でもない。泥棒もわざわざそんなことしない。とすれば警備の人である。
もちろんこの時間、オフィスには通常は誰もいないわけで、警備の人もいつものように電気を消しちゃったんだろう。しかし、だ。まあ普段しないのかもしれないけども、せめてもう一回確認してくれよ、って思うのは人情だろう。
真っ暗なトイレの個室の中からパンツ下げたままの状態で「Excuse me!!! EXCUSE ME!!!!」って大声で叫びましたがな。
しかし幾たびものその努力に対する結果は芳しくなく明かりはつかなかった。
諦めた俺は覚悟を決めて、手探りでトイレットペーパーをちぎり、
全神経を後処理に集中させ、いつもよりも更に念を入れて済ませた(オーストラリアのトイレにはウォシュレットは普及していないのだ)。
窓もないから個室を出ても真っ暗。狭くて閉ざされているところが嫌いな奴は大抵暗いところも嫌いである。もう怖いことこの上ない。
記憶を辿りながらトイレの出口を探る。探っているときに変な物でも触ったらと思うと怖いし、この状態で後ろから肩でも叩かれたら失神する自信がある。
漸くドアを探り当て、開けた先に非常口のライトの光がうっすらと感じられたときは左の目から一筋の涙がこぼれたことも告白しよう。
怖かったし。
というわけで、一声かける親切な気持ちを忘れてはいかんな、と
俺が反省したというお話でした。ちゃんちゃん。