変化(へんげ)できればある年齢層には人気者になれたかもしれない。だがそうはなれなかった。とても可哀そうだ。
まあ何がイヤかって、
アイロンがけが嫌だ。
好きなことなのにできないこともあるが
できることなのに嫌いなことだってある。
技術的にはできるんだけど、
気持ちが全面的に拒否してしまうのだ。
それがアイロンがけ。
(あ、車の運転も…)
本当に本当に本当に
ぎっりぎりまで見て見ぬふりをしていたのだが、
もうさすがに着ていくシャツがなくなったので、
もうさすがに限界がきたと観念して、
覚悟を決めてさっきまとめてアイロンをかけた。
そんな状況だったからかどうかは分からない。
ホルモンのバランスも良くはなかったのかもしれない。
アイロンがけしながら考えたのは「鼻くそ」のことだった。
なんだか急に「鼻くそ」のことがとても可哀そうになったのだ。
「鼻くそ」って平仮名で書いてもあっても
「鼻クソ」って片仮名にしてあっても、見た目が悪い。
実物も見た目が悪いが、書き文字の見た目まで悪い。
可哀そうだがどうしてあげようもない。
個人的な見解でしかないが、「鼻」という漢字との相性が悪いのだ。
というか、そもそも「鼻」の字自体がださい。
団子鼻の両方の穴から鼻毛をちょろっと出している。
良かれと思って誰かがやったのだろう。
左の鼻毛がくるんって外向きなデザインも、
当時はイケてると思ったのかもしれない。
しかし今となってはダサさが3倍増しになっただけだ。
そもそもだらけで悪いが、
そもそも何故その「鼻毛」を出さねばならぬのか。
作ったのは絶対ダジャレ好きな親父に違いない。
センスがいいと思い込んでいるのだ。
役人の考えそうなことである。
民間に任せよ、民間に。
そんな字と組み合わせれば平仮名だろうが片仮名だろうが
上手く馴染むわけはない。
その上、音の感じもよくない。
ただの「クソ」ならば、「うんち」とか「うんこ」とかにすれば
音的に可愛さが増す余地もある。
残念なことに「鼻うんち」とは言えない。
同じように「目くそ」は「目やに」、「耳くそ」は「耳垢」と言い換えることによって多少でも雰囲気の軽減がある。
しかし「鼻くそ」だけその余地も全くない。
「うんち」に変化できればある年齢層には人気者になれたかもしれない。だがそうはなれない。
「垢」って雰囲気にまで薄められもしない。
そういえは「鼻ふん」とも言わない。
「ふん」とも別にされている。
言葉の変遷の歴史に取り残されたというか、忘れられていたというか。
物凄く切ない感じがする。
が、愛しさと心強さは不随していない。
哀れな感じしかしない。
「鼻くそ」
とても可哀そうである。
と、 「鼻くそ」のことを考えながらアイロンがけをした。
お察しいただけただろうか。
嫌いなのだ。アイロンがけ。