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【Vol.20】給料の正体
カール・マルクスが提唱した考えに「労働力再生産」というものがあります。
私は難解なマルクス経済学など勉強したことがないので、小暮太一さんの著書「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?」で初めて知りました。
給料の正体はなんとこの「労働力再生産の経費」だというのです。
私にとってこの事実はとてつもない衝撃でした。
「労働力」はサラリーマン(労働者)がもつ唯一の「商品」です。
労働力を構成するのは時間と肉体(生産力)なので、健康に生きている限りはほとんどの人が持っているものと言えます。
概念的で現実世界では見えにくいのですが、資本主義経済の世界では、サラリーマン(労働者)は時間と肉体(生産力)を会社(資本家)に売り、会社(資本家)が買っています。
労働時間が同じであれば、肉体(生産力の高さ)の価値で価格が決まるので、若者の方が中高年より生産力が高くて割安(低賃金)なので人気があります。
古くから「体が資本」という言葉がありますが、マルクス経済学が定義する資本主義の世界では「体が商品」と言えます。
「再生産の経費」はサラリーマン(労働者)が次の日も元気に働くために必要な生活費です。
衣食住の生活費は当然として、趣味や気晴らしの費用もすべて含めた額が給料の正体です。
独身の人と家庭のある人では必要な生活費が異なるので、能力の高い単身者の若者より、能力の低い中高年(養う子あり)の方が給料は高いのです。
ただ、給料の基準額があからさまだったり、相場より低すぎると、若者がやる気をなくしたり、他の会社に転職してしまうので、会社(資本家)も出世競争やボーナスなどで絶妙に工夫しています。
しかし、会社が急成長して売り上げが10倍になっても、毎月の給料はほとんど変わりません。
また、再生産の経費に含まれる重要な観点として、高収入・高支出の罠もあります。
医師や商社マンなどは激務なので当然給料も高いですが、支出も高いはずです。
激務の仕事にはそのストレスを解消するための高い費用が必要です。また、社会的な階級を維持するための社交費も必要です。収入が高くても、散財してしまい、支出も高くなるものです。
給料が労働力再生産の対価でしかないなら、労働者が豊かになることは不可能だというのがカール・マルクスが出した結論(気が遠くなるような分析をしています)です。
ただ、小さな例外ですが、商品の価格(給料)を形成するもう一つの重要な要素として、「需要と供給」という経済学の概念もあります。
同じスペックの労働力でも、業界が異なる(労働力の需要と供給が異なる)と給料の額が違ったりする(高く売れたり、安く買われる)のはよくあることです。
労働者にとっては一つの歪みなので、自分の労働力をなるべく高く買ってくれる業界、業種を選ぶ方が得です。(もちろん需要と供給のバランスは一過性なので、それだけで職業を決めるのはどうかと思いますが)
経済学は机上の研究理論なので、現実世界にはすべて当てはまりません。
今の時代は資本主義時代初期のような劣悪な環境ではないので、それほど深刻ではないと思いますが、カール・マルクスが訴えた「労働者は搾取されている」という資本主義の問題点は、現代では「労働者は豊かになれない」という形でまだ続いていると思います。
社会を維持していくためには、労働者は必要です。(最近はテクノロジーの進化で無人化が進んでいるのが不気味です)
その解決法がカール・マルクスが提示した共産主義ではないことは歴史で証明されていますが、他にあるのでしょうか?