ファッションのオフプライス流通 – オフプライスストアが海外で好調、国内の動向は?
オフプライスとは?
オフプライスとは、最終在庫・過剰在庫となったブランド品などを買い取り、正規価格や卸売価格から割引して価格設定することです。
アウトレットと混同されがちですが、アウトレットはブランドが自社の売れ残り品を安く販売すること。それに対し、オフプライスは小売店がブランドの売れ残り品を仕入れて安く販売することをいいます。
アメリカのオフプライス市場は5兆円を超え、売上ベースでは約15%も占めており、TJXカンパニーやRoss Storesなどが代表的企業です。
海外で広がるオフプライス流通、日本が一歩遅れている理由
米国では百貨店を凌駕するまでに成長しているオフプライスストアですが、日本での勢いはそれにおよばないのが現状です。その背景には、ブランド側の流通規制があります。値下げした商品を市場に放出すると、正規価格での流通が破綻して、自社売上が脅かされる可能性があるためです。
一方、アメリカではブランド側がオフプライス流通を容認しています。また、オフプライスストア(OPS)と呼ばれる専門巨大チェーンが数社存在することも、アメリカでオフプライスが拡大する理由のひとつでしょう。
オフプライス流通の国内動向
最近は、あまり世の中に出てこなかった二次流通がマスメディアで紹介されはじめ、国内のオフプライス流通の認知も少しずつ広まっています。(Renameも二次流通のひとつです)
また、フラッシュセール(=期間限定の会員向けセールサイト)は、ブランドをオフプライスで販売するオフプライスECサイトと言えます。あとで述べる「GLADD」や「GILT」はその例です。
さらに、2018年12月には、SPAC研究会にて「オフプライス流通はアパレルを救えるか」をテーマにしたディスカッションも開かれました。(弊社COOの津田も登壇)
(繊研新聞「SPAC研究会 〝オフプライス流通〟でディスカッション」より)
徐々にではありますが、国内でもオフプライス流通への注目が高まり、その成長が予想されます。実際、次のようなオフプライスストアが国内にも現れています。
オフプライス国内事例
古着売上高トップを独走するゲオによる「Luck・Rack Clearance Market」
ゲオグループ初となるオフプライスストアが「Luck・Rack Clearance Market(ラックラック クリアランスマーケット)」です。「トレジャーハント感覚で楽しい買物体験」というコンセプトで、2019年4月に神奈川県横浜市に1号店をオープンしました。それを皮切りに次々と店舗を拡大し、2020年3月には5号店を埼玉県所沢市に、4月には6号店を大阪府岸和田市に出店します。5号店ではメインターゲットを女性に絞り、化粧品の取り扱いも始めるそうです。
数々の有名ブランドを抱える大手アパレル・ワールドによる「&Bridge」
「&Bridge(アンドブリッジ)」は株式会社ワールドと株式会社ゴードン・ブラザーズ・ジャパンにより設立された合弁会社です。両社の長所をかけ合わせた最適なオフプライスストア業態の開発をおこないます。2019年9月中旬には1号店を埼玉県さいたま市に出店し、年間売上高は計画比10%増の3億3000万円を見込んでいます。そして、2020年3月には2号店を神奈川県相模原市に出店し、年商2億円を目指すとのことです。
日本最大級ディスカウントストアのドンキによる「オフプラ メガ ドン・キホーテ」
ドン・キホーテもオフプライスストア事業に参入します。オフプライスストア「オフプラ メガ ドン・キホーテ」1号店は、2020年3月24日に愛知県でオープン予定です。店頭に並ぶ商品は、海外アパレルメーカーやブランド、小売店の余剰在庫、廃棄・焼却処分される予定の商品など。また、一点物や日本未発売のものも用意し、消費者が宝探し感覚で買い物を楽しめる場所を提供します。
(WWD JAPAN「ドンキがオフプライスストアに参入 愛知県に1号店」より)
“Rename”でアパレル廃棄に取り組むFINEによる「offprice.ec」
Renameや在庫再販でアパレル廃棄のない社会を目指す、私たち株式会社FINE(ファイン)も、2019年9月にオンライン版オフプライスストアをリリースしました。その名も、「offprice.ec(オフプライス・イーシー)」。すぐに届いて自宅で試着でき、返品・サイズ交換も自由におこなえるのが魅力です。また、商品はすべてブランドや正規ルートから仕入れたものなので、安心してお得なお買い物が楽しめます。
日本でも遠からずオフプライス流通は成長する
“適正なタイミングで二次販売チャネルに流せば、それなりの価値で再流通して資金を回収でき、エシカルにもなるのに残念というしかない。(商業界ONLINE「小島健輔が提言『オフプライスストア革命が迫る』」より)”
2019年5月、このように小島ファッションマーケティングの小島氏は「オフプライス=エシカルにもなる」という提言もし、同記事内では「OPSは遠からず爆発的急成長が始まる」と予測していました。
実際1年も経たないうちに次々とオフプライスストアが立ち上がり、ブランドの価格帯による“オフプライスストア成功戦略”なるものも生まれつつあると、同氏は述べています。
昨今、注目が高まりつつあるアパレル在庫削減。解決策として有効な手段だと考えられるオフプライス流通が、日本でも脚光を浴びる日も近いのではないでしょうか。
(編集:中原 愛海)