記事一覧
一発屋芸人の不本意な日常(少しご紹介③)
かつて、「最高月収を発表する」という企画がバラエティー界を席巻した時代があった。
文字通り、一発屋と呼ばれるジャンルの芸人が、最も売れていた頃のギャラを公開するというもので、
「最高月収は……○○万円です!!」
と過去の栄光、懐事情を自ら暴露するという、なんとも下衆な場面が数多くのテレビで繰り広げられたのである。
当時、筆者が釈然としなかったのは、一発屋ではない出演者、即ち、番組のレギュラ
一発屋芸人の不本意な日常(少しご紹介②)
筆者の職業は漫才師。
コンビ名を髭男爵という。
20年ほどの芸歴の真ん中あたり、2008年に一度そこそこ“売れた”ものの現状は芳しくなく、世間様からは「一発屋」などと呼ばれて久しい。
一発屋のレッテルを貼られた芸人には、それ相応の仕事しか舞い込んでこない。
それは、求人情報誌のページを何枚捲っても見当たらないカテゴリーのオファー。
もはや、「一発屋仕事」とでも命名するしかない案件である。
一発屋芸人列伝〜おわりに〜(無料公開)
筆者には娘が一人いる。
この原稿を書いている時点で5歳……幼稚園の年長さんである。
先日。
彼女と一緒にテレビを眺めていた。
とあるアニメ映画のDVDだが、親子共々、幾度となく鑑賞済みの作品である。
にも拘らず、
「キャハハ!」
「あー、あぶなーい!」
「パパー、このひとわるいよー!?」
製作者の指揮棒通り、要所要所で新鮮なリアクションを引き出される娘。
ディズニーの世界観、作品の魅力たるや畏
『パパが貴族』~グリコと都市問題~(無料公開)
長女が小1の頃、「グリコ」を初めてやったときの話。
まず、ジャンケンをする。
グーで勝てば「グリコ」、チョキなら「チョコレート」、パーは「パイナップル」だ。
それぞれ、3歩、6歩、6歩と文字の数だけ進んで行く遊び、あれである。
本当は長めの階段なんかでやった方が面白いのだが、近所には見当たらぬし、あったとしても、昼日中、髭面の中年男が「パ・イ・ナ・ツ・プ・ル!」などとはしゃぐ光景を、いかに子
『パパが貴族』~金のかかる女 ぽーちゃん~(無料公開)
四十を過ぎたいい大人がいつまでも何をぐちぐちと……とお叱りを受けそうだが、あえて書く。
子供の頃おもちゃを買って貰えなかった。
ラジコン、ファミコン、プラモデル、キン肉マン消しゴムにビックリマンシールと、同世代の友達が夢中になっていたありとあらゆる娯楽と無縁だった筆者。
大袈裟でなく、刑務所のような少年時代である。
父は税関勤めの小役人で高卒の叩き上げ。
いや、大して出世もしなかったよう
『パパが貴族』~怖い絵~(無料公開)
「だって、いつもは3つあるのに、パパがおしごとにいくと2つだもん!」。
これまで、長女(小1)には自分の職業を頑なに伏せてきた筆者。
何度も説明した通り、一発屋という苦い言葉から幼い娘を遠ざけておきたい、その一心である。
とは言え、子供の成長は早い。
幼稚園に入ると、
「パパひげだんしゃくっていうんでしょー?」
などと迫られる場面が増え、最近では客観的証拠を突き付けられる事態に。
冒頭の台詞がそ
『パパが貴族』~はじめに~ (無料公開)
筆者の職業は漫才師。
コンビ名を「髭男爵」という。
その名の通り、髭を蓄えシルクハットを被り、手にしたワイングラスで「○○やないか―い!」とツッコむ乾杯漫才、あるいは、「ルネッサーンス!」の人。
……まあ、何でもいいが、“あれ”である。
今より10年と少し前、1度だけ売れっ子と呼ばれた時期もあったが、現状はサッパリ。
俗に言う、一発屋……それが筆者だ。
45年の人生を振り返れば、失敗に塗
『ヒキコモリ漂流記』あとがき
拙著、『ヒキコモリ漂流記』が刊行されて早3年。
有難いことに、これが瞬く間にベストセラーとなり、それをキッカケに、本業のお笑いの方でも再ブレイク……などという事実は全くない。
当時、筆者の頭をチラリと過った、妄想ストーリーである。
現実には、売れない芸人が本を出したというだけ。
とはいえ、それなりに反響もあり、仕事の面でも多少の変化があった。
一つは、文章を書く仕事をするようになったこと