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23.信じる (下)



浮いている。そんな自分が恥ずかしかったけれど
無理矢理笑うこともできない。
誰かに合わせて笑ったり、顔色を伺うことは
きっと疲れるのですぐに諦めた。
そんな余裕もなかった。



ただ毎日同じような日々が続いていく、
きっともう私には、この集団の中に
〝私という人間として〟混じり合っていくことはできないと感じた。

今日もいつも通りの学校生活、
昼食を食べたら図書室へ逃げようと計画していたその時。
「れな一緒にご飯食べよ」と一言わたしに声をかけてくれた人がいる。

引き攣った顔で「え」と答えた。
ずいぶん長く、教室の中で黙っていたような感覚で
喋り方を忘れそうになっていた。

机をくっつけて、一緒にご飯を食べた。

おいしかった。

食べている間に、何を話したかは思い出せなかった。
そんなに会話は弾まなかったと思う。
私があまりにぎこちなくて…周りの視線も怖くてみられなかった。
ただその子はよく笑っていた。
昼休み、私は図書室へは行かずに
女子トイレで少しだけ泣いた。

それから毎日、私たちは一緒にご飯を食べた。
気付いたら、昼の時間だけではなく
帰り道も一緒に帰るようになっていた。

気付いたら、そばに居てくれていた。いつも。

寒い寒い冬が終わる頃にひょっこり咲く
春のオレンジ色のポピーみたいだった。

そうか、私がオレンジを好きになったのは
ポピーちゃんのおかげだったのか…

正直なことを言うと、はじめは怖かった。
私と一緒にいて誰かに嫌な思いをさせられないか、
そして、また急に居なくなったりするかもなとも

ポピーはいつもあの笑顔でずっとそばにいてくれた
わたしは相変わらず、自分のことを話すのが苦手なまま
大抵の会話はポピーの話を聞かせてもらうことで成り立っていたが
いつの間にか冗談を言って笑い合える仲になっていた。

6月生まれのポピー
これを読んでいる皆さん花言葉も調べてみてね、
私も今ちょうど、何だったかなと調べたら
彼女のままで思わず笑いました。

学年が変わり、2年生になると、
ポピーとは別々のクラスになった。
1学年で30クラスもあるマンモス校で、
また新たに1年が始まろうとしている。

はなればなれ、
ポピーのいない時間がとても怖かった。

いつも顔色を伺い、人に合わせ、上手に目立たず
鳥居れなはキャラクターになった。

けれど窓際から向こうに見える、
今、深い緑のカーテンがふんわりと揺れた2年13組で
ポピーがどんな顔で授業を受けているだろうかと考えるだけで、わたしは私でいられた

そうして過ごしているうちに
こころも雪解けて、16歳。
あの頃の自分になっていたんだと思う。
わたしは私になれた





期待していたことや、
想像していた未来にならなかったとしても、
それは誰のせいでもなくて
ただ行き着いた結末とそこにある事実。

誰かを信じることは、
自分を信じることだと思う。

私を信じてくれたポピーに愛を込めて

誰の言葉にも揺らぐことなく、
自分の目で見たことで、
自分の心でみたことで決断していくの

23歳の鳥居れな なりに考えた
信じる ということ。



信じる(下)

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