「つながり」を拡げることで、嬬恋村をより魅力溢れる地域にしたい。 -地域活性化起業人 大八木 孝宣さんの取り組み-
こんにちは。
ルネサンスnote編集チームです。
過去のnoteでルネサンスの「地域創生」について、取り組みの背景や想いをご紹介しました。
ルネサンスは「地域創生」の取り組みの一環として、総務省が推進する「地域活性化起業人(以下、起業人)」の制度を活用し、人材を派遣しています。
2023年3月時点では、14の自治体でルネサンスの起業人が活躍し、地域課題に寄り添った取り組みを実施しています。
今回は群馬県吾妻郡嬬恋村の起業人である大八木 孝宣(おおやぎ たかのぶ)さんに、嬬恋村での取り組みや想いについてお伺いしました。
また、一緒にお仕事をされている嬬恋村役場 未来創造課の久保 宗之(くぼ むねゆき)さんに村の変化を教えていただきました。
「まん延防止期間」のピンチが、チャンスだと思った。
ーー大八木さんは、どのようなミッションで嬬恋村へ起業人として行かれたんですか。
大八木:私は2021年10月から嬬恋村に着任しました。嬬恋村は群馬県の中でも山間部に位置し、軽井沢と草津温泉の草津町に挟まれた「高原キャベツ」が有名な村です。
村の課題として、2020年には約9,000人だった村の人口が、2040年には約7,000人と大きく減少し、高齢化は更に加速し高齢人口と生産人口が逆転することが見込まれています。
着任当初は生産人口となる働く世代の方々を中心に、村民の皆さんの健康づくりに取り組んでいました。
例えば、地域振興と運動実践普及啓発を目的とし、当社で制作したご当地ダンス体操を村民の皆さんと一緒にムービーの撮影をしたり、
スポーツ庁の事業として、健康増進プロジェクト「嬬恋ウェルネスチャレンジ!」と称し、働く世代に向けた身体測定や運動習慣づくりの体操教室を実施しました。
ただ、これらは昨年(2022年)1月までの期限付きの取り組みだったため、その後の計画をまだ立てられていませんでした。
更に、追い打ちをかけるように新型コロナウイルスの影響によって「まん延防止」期間となってしまい、村の行事(マラソン大会やお祭り)やこども向けの放課後教室、高齢者の「通いの場」や「フレイル予防教室」なども全て中止になり、今後の活動を見込んでいた「場」は全て無くなってしまいました。
そこで私は「関係団体や事業に参加されていた住民の皆さんは、ぽっかり空いてしまった時間を何をして過ごしているんだろう?」と疑問を持ち、「これは逆にチャンスなのかもしれない、今こそ提案を持ち掛ける時ではないか」と思ったんです。
嬬恋村には地域資源として、学校のプールやトレーニングルーム、大きなホールなどの屋内施設だけではなく、豊かな自然もありますし、通いの場を運営されている方もいました。
そのため、これらを活用して何かできることが無いかと考えました。
私が考えた事業を進めていくには、役場各課の皆さんはもちろん、村の事業者や企業・団体の皆さんの協力が欠かせませんでした。
役場の中にいるだけでは、新たな事業を切り開いていくキーマンに辿り着くことはできないと考えました。そのため、一緒に働く嬬恋村役場未来創造課の久保さんに協力いただきながら、教育委員会や社会福祉協議会、地域包括支援センターや村内の各学校、そして企業など、とにかく片っ端から村民の方々にお話しを伺いながら、提案を持ちかけることを繰り返していきました。
実際にお話をしてみると、「それ、面白そうですね。一緒にやってみましょう!」と前向きな回答をもらえることが多く、徐々にその輪が広がっていき、昨年1年間で様々な事業やイベントを実現することができました。
スポーツ庁長官にも表彰された「嬬恋フィットネスフェスタ」
ーー具体的な取り組み事例について、教えてください。
大八木:2022年度は、春・夏・秋・冬と四季に合わせたイベント「嬬恋フィットネスフェスタ」を実施しました。
この「嬬恋フィットネスフェスタ」は
をテーマにし、
・できるだけ多くの多世代の村民の皆さんにご参加いただく
・できるだけ村民の皆さんが主体となり、村内の既存事業に繋がるものにする
・できるだけ持続可能で継続性のあるものにする
この3つを念頭に企画をしました。
いろいろな方に相談を持ち掛ける度に話はどんどん膨らみ、役場内の協力だけでなく、気づけば村全体を巻き込むイベントになっていました。
これらの取り組みは、スポーツ庁の「Sport in Life推進プロジェクト」の一環として実施された「第2回Sport in Lifeアワード」の自治体部門において、優秀賞を受賞し、スポーツ庁長官の室伏広治さんより表彰されました。
人がつながるコミュニティができた
ーーこれらの取り組みを通して、村民の皆さんの変化をどのように感じていらっしゃいますか。
大八木:まずは、健康に対する意識や知識が大きく変わったのかなと思っています。もともと嬬恋村は観光地ということもあって、ゴルフ場やテニスコートのような屋外の運動施設はあったのですが、屋内で運動をする文化や習慣は、ほとんどない印象でした。
村民の多くの方が「フィットネス」という言葉に触れること自体が初めてという感じです。
ですから、「○○ストレッチ」のようなレッスンでも「ものすごい身体が楽になった!」というように 大きなリアクションがあり、効果を実感していただけています。
私がスポーツクラブで働いていた時には、お客様に来館していただくことを前提としていました。ですが、嬬恋村では自分から出向いて村民の方の生活に近いところでプログラムを届けているので、農家やサービス業で働く方など、嬬恋村での生活や個別のニーズに寄り添った提案ができている感覚があります。
ーー嬬恋村役場としては、大八木さんの取り組みをどのように見ていらっしゃいますか。
久保:大八木さんは、村役場の職員向けに運動教室を実施してくれています。ですから大八木さんに会うと運動や食事など身体や健康づくりの相談をする職員も多いですし、ダイエットに成功した職員もいます。
職員だけでなく村民の皆さんも、身体や健康づくりに興味があったものの、環境が無くて今までできなかったので、大八木さんのおかげでその環境が創られてきていると思います。
大八木さんには嬬恋村の健康課題を解決するために起業人として来てもらっています。村民の皆さんの声を聞いて、次々とやりたいことを提案してくれるので、私たちとしてもそれを実現するための仕組みをつくったり、関わってくれる人を増やしながら、村の中での繋がりが広がっているように感じています。
「健康づくり」という共通の目的を持った人が集まる「場」を創ると、その中で「あの動きってどうやってやるんだっけ?」や「ちょっと痩せてきたんじゃない?」のような参加者同士でのコミュニケーションが生まれて、コミュニティができます。
私自身も「健康づくり」の場に参加させてもらっています。
運動は1人だとなかなか継続するのが難しいのですが、その場にみんながいることを考えると足を運んで運動しなくては!という気持ちになります。
きっと大八木さんもそのような「人がつながる場づくり」を意識して取り組んでくれているんだと思いますし、今まではその旗振りをしてくれる人が村内にはいませんでした。なので、大八木さんの存在は嬬恋村にとってはとても良い影響を与えてくれていると思います。
より魅力溢れる嬬恋村を目指して
ーー起業人としての任期は着任から3年とお伺いしています。残りの約1年半の間に、どんなことに取り組みたいですか。
大八木:嬬恋村に来て、様々な方の協力を得ながらたくさんの事業やイベントを実施してきましたが、取り組みを通して、起業人の役割は事業を納品したり、イベントを実施することだけではないと感じました。
特に重要だと考えているのは、私が離れた後も健康的な習慣が「自立・自走」し、嬬恋村の中で継続していく事です。
そのため、私は残りの1年半の間に、嬬恋村に「多世代が交流できるコミュニティ拠点」を創りたいと考えて現在取り組んでいます。
現時点では、屋内に村民の皆さんが世代を超えて集えるような場所がほとんどありませんが、今日に至るまでの取り組みを通じて、そのような場が求められていることを実感しました。
拠点の候補地として予定しているのは、河川敷の空き地です。
ここは春になると桜並木が満開になり、絶景スポットに変わります。
この場所に健康づくりの拠点となるジム・スタジオを誕生させ、将来的にはカフェや図書館、託児施設、高齢者や障がい者のワークスペース、ドッグランや子どもが安全に遊べる大きな遊具などの併設を思い描いています。
村の憩いの場として、子どもから子育て世代、嬬恋村のアスリートからご高齢の方まで「多世代が日常生活のなかで自然と交流できる場」を創出したいです。
また、「嬬恋フィットネスフェスタ」で実施したように季節に応じて嬬恋村の大自然を満喫しながら、人と人とが交流出来るイベントを実施していくことで、より村民の皆さんにとって愛着の湧く場にすることができると思います。
嬬恋村に来た当初は、このようなプロジェクトを実施できるとは思っていませんでした。
ですが、これまでの取り組みを通じて、この夢に賛同してくれる仲間が増えました。村役場の皆さんだけでなく、地元企業や団体、村民の皆さんからも「それ、いいね!実現させよう!」というように後押しをしてもらっています。
私はルネサンスで、このように人と人の想いを「つなぐ力」を培ってきたのではないかと思います。
この「つながり」をより強く、大きく広げていくことで、嬬恋村をもっと魅力あふれる地域にしていきたいです。
このような取り組みを通して、ルネサンスは「人生100年時代を豊かにする健康のソリューションカンパニー」を目指していきます。
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