【短編/刑事モノ】窓一重~後篇~
あらすじ
主人公・知沙(21)は、親友の友梨佳が何者かに殺害され動揺のさなか。しかし、悲しむ暇もなく見知らぬ『K.S.』と名乗る人物からの手紙を見つけてしまう。刑事である兄・浩介(27)は妹を救えるのか!? 女子大生 vs ストーカー vs 刑事視点で描く、手に汗握る短編刑事アクション。
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⑪西原台第二団地・8階
鮫島、鼻歌をうたいながら807号室前に近づいている。
エレベーターのドアが開き大野が足を踏み出す。
鮫島、こちらを見て表情を一変させる。
向かい合う大野と鮫島。
2発の銃声音。
⑫西原台第二団地・地上
逃げようとしていた知沙。
銃声音に団地を振り返る。
8階から色とりどりの花びらが舞う。
知沙「兄ちゃん……!」
団地へ一目散に駆けていく知沙。
⑬西原台第二団地・4階踊り場
階段を登り息を切らしている知沙。
遠くから、鮫島の歩く音が近づいてくる。
はっと息をのみ辺りを見回す知沙。
402号室の扉が開いていることに気づき、中に入る。
⑭西原台第二団地・402号室
誰もいない空き部屋。
中の様子を伺いながら進む知沙。
窓際に三脚と数十枚の写真が散らばっている。
すべて知沙が玄関を出るときの盗撮写真。
知沙、写真をめくりながら目を見張る。
知沙「なにこれ……」
立ち上がり玄関の方へ戻る知沙。
鮫島の足音が先程より大きく聞こえる。
口を押える知沙。
静かに部屋に引き返し、風呂場へ。
湯船の中に隠れる。
⑮同団地・4階共用部
鮫島が血だらけの腕を押さえながらゆっくりと階段を降りてくる。
鮫島「知沙ちゃん、どこ行っちゃったのなぁ」
⑯同団地・402号室
湯船の中で縮こまる知沙。
足音が近づいてくる。
隣の部屋の扉を銃でバンと叩く音。
知沙、びくっと肩をすくめる。
足音が402号室の扉の前で止まる。
鮫島、大きく笑い、部屋に入ってくる。
知沙、目をつぶる。
鮫島が居間の方へ歩いていき、クローゼットを開ける音。
そのまま足音が近づいてくる。
風呂場の前で足音が止まる。
知沙、息を止める。
一眼レフを操作する音。その後、足音は外へ。
知沙、目を開け、静かに呼吸をする。
<フラッシュバック
大野「兄ちゃん、負けたことないだろ? 大丈夫だ」>
知沙「嘘ばっかり」
知沙の涙が落ちる。
共用部を進んでいた鮫島、足を止め振り
返り不敵な笑みを浮かべる。
知沙、足音が聞こえないことを確認し風呂の蓋を開け起き上がる。
湯船の上には共用部外廊下に面した窓。
ゆっくりと窓に顔を近づける知沙。
窓には外側から鮫島がぴったり顔をくっつけ笑っている。
知沙、息を呑み全身が震え膝をつく。
近づいてくる足音。風呂のドアが開く。
鮫島現れ、銃を知沙に向ける。知沙目をつぶる。
鮫島「知沙ちゃん見っけ」
銃声。
知沙、目を開ける。
鮫島が倒れる。
銃を鮫島に向けていた大野、倒れる。
知沙「お兄ちゃん……!」
警察のサイレン音。
⑰西原病院
ベッドに寝ている大野。見守る知沙と柳沢。
大野が目を開ける。
知沙「お兄ちゃん?」
大野「知沙、柳沢……」
知沙「(安心したように)良かった」
柳沢「心配させんなよ。お前ひとりで突っ込んでいくんだから」
知沙「昔から喧嘩も勝ったことないくせに」
大野「は? 勝ったことあるし! あいててて……。お前ら俺の見舞いに来たんじゃないのかよ」
見合わせ笑いあう知沙、大野、柳沢。
終わり
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