【SS】VERMILIONハロウィン
10月31日は世界的にみても、ハロウィンである。
子供たちは様々な仮装に身を包み、家々を訪ねてはお菓子をねだる。
大人たちはコスプレをして街へとくり出し、お祭り騒ぎに興じる。
そしてそれは、仮想世界に住む、VERMILIONのみんなも同じである。
「がおー!でいいんだっけ?キョンシーって?」
「絶対に違ぇだろ。東洋のゾンビだろ?」
「じゃあ、うがぁ!」
「シィ、まずは叫ぶの止めよっか」
シィ、デルタフレア、リーサルフリートの3人は、庭でそれぞれの仮装した姿を見せあっていた。
青いキョンシーの衣装を着たシィはぶかぶかの袖をプラプラとさせながら、どう怖がらせたものかを考える。
「デルタは囚人服?」
「そうだよ。ほら、鎖とかかっこいいでしょ!」
「うん!可愛いと思う!」
「……カッコ良いか聞いたんだけど?」
「え~、可愛いでもいいじゃん」
「っは!ざまぁねぇなデルタ!」
「うっさいリーサル」
デルタフレアは自分の腕くらい太い銀色の鎖に目を輝かせながら、量販店で買ってきたであろう囚人服を着ている。
「リーサルは……何?」
「吸血鬼だよ!この赤!キバ!いけてんだろ?」
「リーサルはあれだね。カッコいい衣装にそれっぽい設定つけただけって感じ」
「あん?チェーンでカッコつけたいだけのデルタに言われたかねぇな」
「つまり、ふたりともかっこいいのが好きってことだね!」
「まってシィ。リーサルと一緒くたにしないで」
「そうだ。オレとこいつはかっこいいの路線がちげぇ」
「ええ~?」
リーサルフリートは裏地が赤い紳士服を着て、吸血鬼らしい決めポーズをとる。
そんなことをしていると、3人の元気な声を聞きつけたであろうラムダが、庭へと入ってきた。
「お~、ちびたちもばっちりきまってるねぇ!」
「わ~ラムダさん、きれ~」
「……何の衣装?」
「シスター。清楚な私にぴったりでしょ?」
「「えぇ……」」
「何よあんたらふたり、その顔は」
「いつもの姿とギャップありすぎ。イメチェンかな」
「かっこいいが、イメージとあわねぇ~」
「あっはっはっは。この美しさが分からないなんて、おこちゃまねぇ」
「いつもとイメージが変わっていいよね!」
「シィ、あんたのは誉め言葉になってないからね」
「?」
ラムダは太ももが露になった白黒のシスター服を着ていた。本人は清楚と言っているが、腰に手を当てて胸を張る姿には、清楚よりも勇ましさの方が勝っている。
「あーもうみんな可愛い!」
騒ぎを聞きつけたリリモカは、家の中から庭へ出ると、ラムダを除く3人へと抱きついた。
「うわっ!急に抱きつかないでもリリモカ!」
「え~、いいじゃんいいじゃん!うりうり~」
「やめろ!3人いっきに抱きしめようとするんじゃねぇ!」
「ひとりずつならいいの!」
「よくねぇよ!」「良くない!」「いいよ!」
「「シィはちょっと黙って!」」
「リリモカさん、せっかくセットした髪が駄目になるからその辺で」
リリモカから遅れて、庭に下りてきたのがファイだ。料理中だったのか、手にはお玉が握られている。
「あっ、お姉ちゃん!魔女っ娘かわいー!」
「ふふ、ありがとうシィ。あなたも可愛いわよ」
「へっへ~。でしょ~」
「いいからこいつをはやくどかしてくれ……!」
リリモカはスカートを履いたピエロのような恰好で、頭につけたピエロ帽子の先端をぴょこぴょこと揺らしている。
ファイは制服のような魔女姿。ローブに魔女っ子帽子をかぶりながら、ついでにエプロンもつけていた。
「さ、ご飯にしよっ。今日はリリモカさんと腕によりを掛けたから」
「わ~い!ごっはん、ごっはん!」
「ん~、西洋のお祭りだし、ビール……ウォッカ……いやワインか!」
「あ、私も飲む~」
「この吞兵衛どもが……」
「まったく、騒がしい日常だね」
特別な日もいつも通り。
そんな、VERMILIONの日常。