レンフリー
自分のこと、VRChatのこと、日々思うこと。感じたことを感じたままに書き綴る、私のお話。もしくは思考の切れ端
VERMILION.studio(https://kv2.booth.pm/)の展開する3Dモデルシリーズを題材とした日常系短編集
VRChatを舞台にした短編小説群。続き物だったりそうじゃなかったりします。
VRChatに関係なく、世界も時代も異なる、1話限りの短編集。
noteにて様々な小説を投稿しております、レンフリーと申します。最近は初めましてな方が増えてきたこと、またnote以外での活動の場が少しずつ増えてきたため、自己紹介記事を書かせていただきました。各種リンクも張っておりますので、気になるものがございましたら、ぜひご覧ください。 プロフィール VRChatのすみっこの方でふわふわ揺蕩っております「renfree/レンフリー」と申します。 普段はイベントに参加したり、アバター集会イベントを開催しながら、主に和装改変を加えたアバタ
人に迷惑をかけることが、嫌いです。 私には、誰かの時間を奪う価値なんてないから。 人に迷惑をかける自分が、嫌いです。 いるだけで迷惑だと知っているのに、それでも今日を生きているから。 私自身が嫌いです。 この居場所を欲しがった誰かがいたはずなのに、私よりも上手くできる誰かがいるはずなのに。 そんな誰かを差し置いて、私があることが嫌いです。 辛いんじゃありません。苦しいんじゃありません。 そんな権利はありません。 ただ、生きることへの罪悪感と、上手くできない不甲斐なさ
心はいつも、消えたがっている。 思考はいつも、終わりたがっている。 消えればすぐに、楽になる。 終わればもう、苦しくない。 こちらの辛いことは、 あちらに行けば消えてなくなる。 仕事も、親も、職場も、未来も。 夢も、期待も、願いも、救いも。 きれいさっぱりなくなって、永遠の静寂の中、 ただ静かに揺蕩うだろう。 揺蕩ううちに身体も心もなにもかも、 溶けて消えてなくなって、 ボクはもう、どこにもいない。 そんな終わりが、欲しいんだ。 そんな安らぎが、欲しいのに。 い
俺こと尾張田猛は、大学の夏季休暇を利用して、栃木県にある鬼怒川温泉を満喫していた。 昨日はチェックインを済ませた後に古い温泉街を巡り、温泉と豪華な夕食を楽しんだ。今は旅館の客室にある謎のスペースに備え付けられた椅子に座り、昇る朝日を眺めながら、コーヒーを味わっている。 「これこそ、最高の休日だよなぁ」 急に思い立って実行した旅行だったが、正解だったと思う。 青々と木々が茂る山々と、ホテルのすぐそばを眺める鬼怒川が客室の窓越しから一望できるというシチュエーションは、都会
10月31日は世界的にみても、ハロウィンである。 子供たちは様々な仮装に身を包み、家々を訪ねてはお菓子をねだる。 大人たちはコスプレをして街へとくり出し、お祭り騒ぎに興じる。 そしてそれは、仮想世界に住む、VERMILIONのみんなも同じである。 「がおー!でいいんだっけ?キョンシーって?」 「絶対に違ぇだろ。東洋のゾンビだろ?」 「じゃあ、うがぁ!」 「シィ、まずは叫ぶの止めよっか」 シィ、デルタフレア、リーサルフリートの3人は、庭でそれぞれの仮装した姿を見せあっ
幻の月が、ボクの仮初の身体を照らす。 作り物の桜は月の光を反射し、鮮やかなサクラピンクの花びらを粉雪のように舞い踊らせていた。 幻想的とも、風雅とでも言えそうな美しい世界の中、ボクの心は別のことに囚われていた。 楽しいこと、ではない。むしろにがくて苦しくて、直視なんかしたくないものだ。 直視したくないのに、目の前の現実はボクの思考を支配し続ける。ボクは抵抗することもできず、現実から吹き込む湿り気を帯びた冷たい風に、心の熱を奪われ続けていた。 現実から逃げるために、こ
金属片を腕に押し付け、ゆっくりとなぞる。 鋭い痛みが、ボクの胸にくすぶる苦しみを、ほんの一瞬、忘れさせてくれた。 腕を掴み、爪を立て、力強く握り込む。 持続する痛みが、ボクの思考をクリアにさせてくれた。 日々のストレスに心が追いつかず、感受性すらも枯れ果て、「辛い」という感情に支配され続ける日々。 けれど痛みは、ボクに新鮮な感情を、泡沫の理性を、沸き立たせてくれる。 腕を見る。 浮かび上がる赤い線は、ボクの努力の証だ。 ほんの少しの間、訪れる安らぎの時間。
※注意、このエッセイには自死、希死念慮が含まれます。引きづられないように気をつけてお読みください。 最初に「死」を意識したのは、いつだっただろう。 たぶん、高校時代だったと思う。 子供の頃から続けていたバスケが嫌で、別の、文芸部なんかに行きたかった。中学とは違うノリが支配している環境は、すごく息苦しかった。何より、両親の言う将来が、何ひとつ、楽しいものには思えなかった。 ただ、耐えることだけを考えていた。 耐えて耐えて、耐え続けて卒業さえしてしまえば、この息苦しい場所
「VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた」というアニメがある。 TVアニメ『VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた』公式サイト (vden.jp) 小説投稿サイト「カクヨム」での投稿していたものが、書籍化を経て、今期の夏アニメとして放送されている。 あらすじとしては、大手VTuber運営会社『ライブオン』の三期生ライバーとしてデビューした清楚系ライバー『心音淡雪』は、あまり人気の出ないギリギリの日々を過ごしていた。ある時、配信を切り忘れて隠してい
旅行は好きだが、好きじゃない。 知らない土地に行くのは好きだ。 土地の名物を味わうのも好きだし、何ともない街並みを歩くのも好きだ。 名所に行って絶景を愛でるのも好きだし、その土地の博物館や民族館に赴き、歴史に思いを馳せるのも好きだ。 最近は美術も面白いと感じてきたので、美術館やギャラリーを巡るのも面白いと思う。 だが、旅にはお金がかかる。 本当に、お金が、かかる。 移動だけなら良いが、泊まるとなると嫌になるくらいお金が、飛ぶ。 VRにハマってるんだからVRで済ま
私はきっと、報われない いつも輪の外にいるから 私はきっと、消え去りたい 輪の中に入れないから だから私は、輪になりたい。 輪になって、人の中に埋もれたい。 だけど私には、人を集める魅力がない。 能力で魅せようにも、有能ではなく、 語りで魅せようにも、喋れない。 姿で魅せようにも、人様に自慢できる顔じゃない。 仮面で隠した人柄は嘘くさく、 美辞麗句で重ねた言葉は羽毛より軽い。 だから私はひとりになる。 誰も来ない部屋の中で、ひとりぼっちで夜を越す。 進んでひと
目も眩むような鮮やかな赤色と光輝く黒色が、空一面を彩っていた。 「黄昏時って、知ってる?」 鮮やかな空の光を背景に、神社の境内で佇む女性は、口角を上げる。 「朝と夜の境に存在する、妖怪とか幽霊とか、おかしなものに出会う時間」 現代では見る機会の少なくなった巫女装束を身にまとう姿は、どこか非現実さに溢れていた。人ではない別のナニカに、魅入られたような気さえしてくる。 「ねぇ。あなたには、私はどう見える?」 俺は差し伸べられた手をじっと見つめながら、口に溜まった唾を飲
日本の祭りは数え切れないほど存在しているが、その中でも1年に2回開催され、大きく盛り上がるイベントがある。 ひとつは、同人の祭典コミックマーケット。 もうひとつは、ネット上で開催される、VRのお祭り。 Vketである。 「いや~、今年も大賑わいだね」 このイベントは年々規模を拡大し、テーマごとにクリエイターの展示が並ぶ一般スペースも、企業の大型展示が並ぶ企業スペースも、大賑わいの様相を見せていた。 かくいう俺も、ここで出会ったかわいらしい和なアバターを使い、今日も一
人物紹介 上司:VRとかわかんない人。YouTuberが流行っているのは知ってる。 部下:VRチョットわかる人。最近はAIボイスチェンジャーにハマってる。 上司「VRCやってる?」 部下「やってないです。どうしたんですか急に」 上司「いやね。昨日、今後の事業展開に関する会議があったんだけど、バーチャル業界に進出することになったんだよ」 部下「バーチャル?ノウハウ何もないじゃないですか」 上司「そうなんだよ!だから社内で詳しいやつがいないか聞いて回ってるんだ」 部下「は〜
私の彼は、センスがない。 どうしようもないくらい、センスがない。 「このレストラン、美味しくてオススメだよ」 そう言って連れてきてくれたお店は、私が気になっていた場所だった。 「このネックレス、君に似合うと思うんだ」 そう言ってプレゼントしてくれたのは、私の好きなブランドの新作だった。 「じっとしてて。大丈夫、勝ってくるから」 「姫プレイは趣味じゃねーんだよっ!」 「ごっ、ごめん!じゃあ一緒に勝ちに行こう」 「くっそ!何であたしよりあとに初めてもうプラチナ何だよ!立
事故物件という話は、聞いていない。 それでも、この部屋は何かがおかしい。 規則的に叩かれる壁、誰かに見られているような感覚。夜、耳元で聞こえる誰かの声。 引っ越す金もなく、途方に暮れていた私は、友人からの勧めで霊媒師を呼ぶことにした。 「先生。この部屋で変なことばかり起こるんです。これは、幽霊の仕業なのでしょうか」 年老いたお婆さんが来ると思っていた私は、自分と同年代くらいの、どこにでもいるような女性がやってきたので、少し緊張していた。 彼女は手にした数珠を鳴らしな