暴力団の稼ぎ方
暴力団がお金を稼ぐことを「シノギ」という。
警察は「資金獲得活動」という無駄に長い呼び方を使っていたりする。警察が挙げる暴力団のシノギとして、
◯覚せい剤
◯恐喝
◯賭博
◯ノミ行為
の四つが代表とされる。(今の時代はフロント企業がいたり投資をしてたりいろいろあるらしいが)
この代表的な4つをそれぞれ解説していこう。
覚せい剤
●覚せい剤と組の背景
覚醒剤は、日本国内では取り締まりが厳しいため製造されていない。つまり日本で流通しているすべての覚せい剤は海外で作られ、日本に密輸入されたもの。
卸や、密輸入元など、流通を仕切っているのがほとんどの場合暴力団なのだ。小売りをする人は「バイ人」といい、外国人(イラン人など)が多い。
バイ人は暴力団の組員自身がやっていることもある。ただ覚せい剤を扱ってしまうとその人の上司や、属する組織が危うくなってしまうので、組員がやるのはちょっと危ない。警察はそれを理由に大物逮捕や組の勢力削減に動けてしまうから。
もし見つかってしまった場合は、組が被害を被る前に対策を行ったりする。バイ人をした本人はもちろん、その組の組長などが、さらに上の組や本部から破門や絶縁、あるいは謹慎処分などにあったり。
「え、ヤクザって麻薬取引だめなの?」と不思議に感じるかもしれない。実際に過去には覚せい剤を扱ったという理由で処分を受けた組や組長がある。だから、とくに大きな組になると、「表向きには」覚せい剤は禁止している。
暴力団からクスリは切っても切れない。その理由のひとつとして「利益」がある。
●どのくらい儲かるの?
ちょっと前までは、北朝鮮製の覚せい剤が密輸されていた。北朝鮮は、外貨獲得のために国内に製造工場を何個も作っているくらいだ。しかしこの密輸が何回か発覚し、取り締まりが厳しくなったため中国経由で来ることが多くなった。
運び方も「一度に大量」という感じから、旅行者に扮して持たせるなど分散化、少量化されている。
さて、お値段に関しては日本の末端価格で「1パケ」が1〜2万円といわれている。
1パケとはビニール袋に覚せい剤が0.3g入ったもので、仕入れ価格や品薄などの供給量の状況によって価格は変動したりする。通常覚せい剤の使用量は1回で0.03gといわれてるので、1パケで10回楽しめる計算。ただ実態としてたいていは初心者で3、4回分。慣れた人なら1、2回で使い切る量らしい。
密造地での出荷価格は1g当たり200~数百円。1kg換算だと20万~数十万円で、最低取引量が20kgからだとすれば、200万円ほどで出荷される。
これが日本に入ってくると、中堅のバイ人で1g3000~15000円で取引される。仮に出荷した10kgすべてを1g5000円でさばききったとすれば5000万円もの売り上げになる。(まあ人件費や流通など費用は置いといて、)そもそも400g売れば元が取れちゃう計算だ。
原産地の出荷価格と、消費地での末端の価格は150倍近くもある。
このとび具合が、暴力団を魅了しているのかもしれない。チマチマ稼ぐよりも、こっちに走ってしまう理由が分かる。
恐喝
「恐喝」は暴力団の伝統的なシノギで、簡単に言うと人を脅してお金や物を奪うこと。「カツアゲ」とも呼ばれる。
脅されてお金を渡すと「恐喝」が成立し、恐喝罪は10年以下の懲役。未遂でもつかまる。ある年では、恐喝で検挙された人のうち、45%近くが組員だったということもある。
幹部クラスが他の組に恐喝すると100万近くは軽く動くこともあり、それ以上もあったりするらしい。
「恐喝」という行為は準備や元手がいらず、もっとも簡単でやりやすいという特徴がある。
だからこそ伝統的に行われているのかもしれない。
半グレや学校の不良たちがカツアゲをする理由が分かる。めちゃくちゃ手っ取り早い。
賭博
賭博にもいろいろ種類がある。有名なある力士が行っていた野球賭博は、本来は暴力団のシノギ。
競馬や競艇、闇カジノのノミ行為などはほとんどが暴力団の経営だったりする。
「ノミ屋」とは、公営の競技に乗っかって自分で投票所(賭けの場)を作っちゃう人たちのことを言う。
他人が人を集め、苦労して計画し、金を出して開催するものにタダ乗りするというわけだ。
たとえば競輪などは、主催者が売り上げの25%を国や自治体などに納め、残りを客に分配するという配分だったりする。
しかしノミ屋はそんな必要がない。つまり出費が少ないため、自分の取り分を取るだけであとはお客さんにより配当率のいいサービスをすることができるのだ。
さらには、負けた客に10%払い戻す、かけるお金がないときは建て替えてあげる、などのサービスをしているところも少なくないという。こういった大きなメリットがあるからこそ、違法な賭け事に人がいっぱい集まるのだろうなぁ。
野球賭博は、もともと高校野球から始まりプロ野球へも広がった。暴力団が胴元となり、その日の試合でどっちのチームが勝つかをお客さんに張らせる。
勝った人は、胴元が「テラ銭」(賭け代のようなもの)を抜いた後にお金を受け取れる。さて、当然負けたほうからはお金を取り立てなければいけないが、素人が胴元を行っていたらどうだろう?
違法だからと法律を盾にされたり、払われずに逃げられたりと、逆に損してしまうことが自明である。
暴力団であれば、力があり、資金力があり、威圧感があります。「逃げたらどうなるか分かるんだろうな?」とかめっちゃ説得力ある。
ちなみに賭博は今では下火になっていると言うウワサ。
みかじめ料
ケツ持ち、守料、用心棒代ともいわれる。
◯ここら一帯(お前の店)はうちが仕切っている。許可を出すから金を払え。
◯客でほかの組やチンピラが来たら対処してやる。いつでも連絡しろよ、まあだから金払え。
という二つのニュアンスだと思えばいい。
「暴れると怖い人が出てくる」というのは、バックについてる暴力団のことだったのだ!
みかじめ料の相場は業種によって変わる。ソープやデリヘル、ヘルスなどの風俗、ギャンブル関係は高く、高級クラブやキャバクラ、スナックなどは前者ほど高くない。
お店がグレーになるほど収益が多くとれるので、その分みかじめ料も高くなると言う仕組み。
たとえばファッションヘルスの場合1室当たり1万円くらい。お店に10室あれば月10万円。カジノは50~100万が相場だが、やくざの直系が多いらしいからよくわからん。
このみかじめ料というやりかた、手間がいらずに回収も安定していてよさそう。ある地域では、2000件以上のお店の内、99%がみかじめを払っているということもあるらしい。想像もつかないほど莫大な金額が稼げそうだな。
しかも暴力団対策法や暴力団排除条例によると、払ったほうも罰せられてしまうので訴えられることはまれなんじゃないか?経営出来なくなる。
まとめ
代表的なものをあげてみた。非日常なものって意外な知識があっておもしろい。あと、なんで組に高学歴の人がいるのか分かるなあ。法律と戦うためにも、合理的にやるためにも、他の組とやりあうためにも頭が必要だ。
参考書籍↓
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?