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異星人組曲 2(連載小説)

『わたし、見つけちゃったんだよね』
『なーにを見つけたんや?』
 放課後の図書室。
 棚の奥にひっそりと佇む、机と椅子が一つ。
 椅子には誰も座っていないが、その横で椅子に寄り掛かる女子高生が一人。
『学校の裏山に、ご神木と言われていた大きな木があったの知ってるよね?』
『確かこの間、ごっつい雷に打たれて、裂けてしもた言うとった?』
『そう、危ないから立ち入り禁止になってたんだけど、どうしても気になって見に行ってみたの』
『相変わらず好奇心半端ないな』
『えっへへ~』
『あんま危ない目に合わへんように、気いつけなあかんで。わいかてずっと守ったりできひんかもしれんし』
『八木君。王子様みたいなこと言ってくれちゃってる。好き』
『王子ちゃうし、惚れたらあかん! これは、善意やから!』
『ちぇー』
『で、なんやってん?』
『裂け目の中心に、金属のような見た目だけど継ぎ目のない球みたいなものがあって、思わずつついてみたのね。そしたら、すごく堅くて、なのに、空洞じゃないのか音もしなくて。これは絶対地球外のものだって思ったのよ』
『ほーん?』
『だから、八木君に報告しようと思って、離れようとしたの。そしたら……』
『したら?』
『ぱっかーんって音がして、そこから白いものが飛んできて』
『え?』
『今、ここにいます』
「はあああああ?!」
 椅子が勢い良く倒れて、女の子の隣に眼鏡をかけた男子高生が現れる。
「ここて、どこや?」
 少しだけ、頬を赤らめて未唯子みいこは胸元のリボンをシュルっと引き抜く。
 白く細い指が、シャツのボタンを開けていった。
 二つ程開けられたそこには、白くてふさふさした小さな生き物が収まっていた。
『なんや、イエティの幼生やん。驚いて損したわ』
『イエティって、雪男じゃなかったっけ?』
『いや、元は宇宙からやってきた異星人や。確かQ365星雲やったか。たまにやってきて、雪山に住み着いてるらしいで。まあ、そんな害もないし。刺激せな温厚な異星人代表やな』
『道理で。ふさふさなのに、ひんやりしてて気持ち良いと思った』
『あんさん。もはや異星人ホイホイやな』
『ほんと?』
『間口が広すぎるんや。ほんま気いつけてや』
『はーい』
『で、どないするん?』
『まだ子供みたいだし、家で世話するよ』
『嘘やん』
『なんかあったら、連絡するね』
『離れたら聞こえへんのに?』
『だから、この間スマホ買ったんでしょ? 役立てようよ』
『ううー。地球の情報ぎょうさんすぎて、パンクするあれやな』
『大丈夫大丈夫。慣れれば簡単よ』
『ほんま、すぐ連絡するんやで』
『了解です』
 リボンを結んで、元通りに整えて。
 未唯子は八木の隣に立つ。
 そして制服をつついて遊んでいた。
 見た目は布で柔らかそうに見えるが、カッチカチに硬いのでギャップが面白いらしい。
 六月に入って夏服仕様になったコーティング。
 肌はさすがに隠すのが変なので、特殊で強力な日焼け止めを塗りたくっている。
 紫外線との戦いに疲れ果て、学校の日以外は全く外出する気が起きない為、地球の調査とやらはあまり進んでいないらしい。
『ところで、食事は終わったの?』
『いや、もう少し食べる』
『じゃあ、続きを読もうかな』
 ふっと八木の姿は消えてしまう。
 先ほどと同じように、椅子に寄り掛かって未唯子は本を開く。
 光合成の間は見えなくなる。
 それが、E62星雲の異星人の特徴だった。

「今日も空気が美味しいわぁ」
『そら、どうも』

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