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面白がる力

「何ひとつとして上手くいかない。」



今思えば極限状態のトライアウト期間も順調だったのだなと。



開幕から9試合を終えた。
途中出場2試合。
ベンチ入り出場なし2試合。
メンバー外5試合。

開幕からの2試合は途中出場したものの、インパクトを残せず終わった。
それ以降、完全に構想から外れた。

u23の試合には4部のメンバー外の選手が試合だけ降りてくる。

4部所属のトップチームは土曜試合。
6部所属のu23チームは日曜試合。

u23チームのスタメンは元4部のベテラン選手と4部のメンバー外選手で構成される。

おかげでチームは無傷の7勝2分で首位。

今の自分に入る余地はない。
練習で良いプレーをしているのに評価してもらえないとかではない。
そもそも全然勝てていない。

何にも上手くいかないじゃないか。
サッカーしに来たんじゃないのか。

「つらい。苦しい。逃げたい。帰りたい。」

上手くいかないのはサッカーだけじゃない。
相変わらずドイツ語ももさっぱり、友達もいない。仕事もない。居場所がない。

弱い自分が現れた。
嫌というほど自分の無力さを痛感した。
ここまで何も出来ないのかと。

どうしようもなく苦しい。

ただどうしたことだろうか。
これをほんの少しだけ「面白がっている」自分もいる。

何も上手くいかない日々を。
真っ暗なトンネルを。
地獄のような毎日を。
それに苦しむ自分自身を。

苦しみをほんの少し面白がれる自分。

そんな自分を作ってくれた人物は大学時代に出会った友人であった。


彼の口癖は「おもろい」。
ずっとケタケタ笑っていて、
「おもろい、おもろい」言っている。
なんも面白くない事も。
でも本人は面白いと思っている。



全てに全力であり、エネルギーのある人間とはこうゆう人だと思い知らされる。



とにかく毎日楽しそうで幸せそう。
見ているこっちまで明るくなる(笑)


大学4年間、部活や授業と全ての時間を共にしてきた。当然彼の上手くいかない時も間近で見てきた。

大事なタイミングで怪我をした時、
試合に出る環境がなくなった時、
ピッチ上に同期がいなくなった時、
キャプテンマークを巻きチームが勝てない時、
降格のプレッシャーがのしかかった時、

そんな誰がどう見ても苦しい状況でも、
彼にはそれを「面白がる力」があった。

なぜ面白がれるのか?
それはなんなのか?


本人に聞いたわけではない。
ここからはあくまで個人的な想像だが、

彼の優れている点は、
自分の置かれている状況を客観的に見れる事。
そして多方面から見れる事。

どれだけ苦しい出来事でも、少し目線を離してみれば大した悩みでなかったりする。

そしてその悩みも角度を変えて見てみれば、成長出来るきっかけであったり、とても大切なことだったりする。

その能力に長けた彼は物事を、
「適切な距離」
「適切な角度」で見ることが出来る。


大学4年間を通して、彼から強く影響を受けていたらしい。それをドイツに来て実感した。

自分のこととなると、
地獄のように苦しく、辛く、逃げ出したくなる。

そんな状態では力が湧いてこない。


ならばそんな自分を、
他人事のように楽観視し、
誰かにアドバイスをするように多方面から見てみる。

それだけで肩の力が抜け、自分のやるべきことが整理され、また前を向いて歩いていける。


「苦しむ自分を面白がる」


大学時代に彼との出会いがなければ、この思考になっていないかもしれない。

なんならそもそも渡欧などというわけわからない事になど挑戦していないかもしれない。

遠く離れた地でも力をくれる友人がいることを幸せに思う。


そして自分も誰かの力になりたいと感じている。

このままでは終われない。



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