じいちゃんとゆで卵
ちょうど15年前なくなったじいちゃんはゆで卵が好物だった。
小さい時アレルギーで卵が食べられなかった僕だが、食べられるようになったときとても嬉しかった。
大好きな人と同じものが食べられる。そんな小さい幸せが自分にとっては重要だった。
でも初めてゆで卵を口にしたときのパサパサで硫黄の独特の匂いの黄身と味の薄い白身に心底がっかりしたものだ。
「じいちゃんはなんでこんなものが好きなん?」と真顔で聞いていた。
そんな質問をしたときじいちゃんはこれよりもうまいものはたくさんあるけど俺はこれが好きと言っていた。
なんでゆで卵が好きなのか知ったのは小学6年のとき。
じいちゃんが亡くなる2年前。
戦争の話を聞いてこいという宿題が学校ででた。じいちゃんが戦争に行っていたらしいと言うのを聞いたことがあったので親と話を聞いた。
じいちゃんが高校1年のときに戦争が佳境になったらしい。
じいちゃんは体が強くて勉強もできたので空軍の予科練生として滋賀にいた。
結局飛行機に乗ることもなく訓練をしていたら戦争が終わったらしい。
戦争直後に家に帰ったとき食べるものがとても少ない状態だった。
飢えにあえぐ中知り合いにもらった卵を茹でて塩かけて食べたときむちゃくちゃうまくて、たかが卵一個だがむちゃくちゃ元気になったらしい。
以来戦後もバブルのときも、爺になってもじいちゃんの一番の贅沢は朝に食べるゆで卵。
亡くなる直前好きなもの食べていいよと言われてゆで卵を病院で食べてたのを今でも思い出す。
意味はないんだろうが親父とじいちゃんの葬式のときに二人でパッサパサの固茹でのゆで卵を食べた。
じいちゃんがなくなって15年たった。
今でも何故か固茹でのゆで卵は特別だ。
美味しいゆで卵レシピ
卵は冷蔵庫に入れた状態のものを使う。
鍋にたっぷりの湯を沸かす。
湯が沸くのをまつ間に卵のお尻に小さいヒビをスプーンを使って入れる。
湯が沸騰したらそっと卵を入れる。
そのまま8分待ち卵を湯から引き上げ氷水で冷やす。
しっかりと冷えていれば殻をむくのが簡単だ。