映画が好きなおかげで 株が上がっちゃった件

かれこれ40年くらい前の話しになる。

私は高2の時、初めて彼ができた。

コピーバンドをやっていた、同い年の彼。

付き合ってるといっても、もっぱら彼の家に遊びに行って、彼の大好きなポール・マッカートニーの歌を聞きながら、たわいのない話をしたり、バンド仲間やその彼女と集まってわいわいするって感じ。

そんな彼がある日、映画を見に行こうと誘ってくれたのだ!

何かの記念日だったっけ?

なんせ40年も前のことで、記憶がところどころ、抜け落ちている。

特に映画好きではなかった彼とは、今まで映画の話をしたことがなかったし、私の映画好きも伝えていなかったけれど、きっと、デートの定番といえる映画に連れて行って私を喜ばせようと、一念発起してくれたのだと思う。

当日、私たちは、電車に揺られて30分くらいの所にある映画館に出かけた。

駅から映画館まで、そんなに遠くなかったけれど、その道のりを、私たちは手をつないで歩いた。

いつもと違うシチュエーションに、何だか少しドキドキしたのを覚えている。

地方の小さな映画館。

今の映画館はとても大きくて、1カ所で、複合的にいろんな映画を上映しているから、その中から自分の見たい映画のチケットを買って、上映している会場に入るって感じだけど、当時は1つの映画館で、メインの映画と、同時上映といって、少しマイナーなもう1本との、計2本上映しているというスタイル。

残念なことに、その日何を見に行ったのか、どうしても思い出せない。
確か、とてもロマンチックな、ラブロマンス映画だったと思う。

彼がデートのために、私のために、一生懸命選んでくれた1本に違いなかった。

彼も嬉しそうに私の手を引いて、いよいよ上映会場の中へ。

ところが、ところがである。

あの独特な、重厚な扉を開けて中に入ると、目の前で上映していたのは何と、007だった!

あれ!?
どこで間違えたんだろう?
バリバリのアクション映画!

映画館を間違えたのか?
それとも、上映期間を間違えたのか?
私も浮かれていたのか、すっかり彼任せで、全く気付かなかった。
彼もチケットを買う時点でわからなかったのか?

うーん。謎である。
でも事件は起きた。

1番驚いたのは、紛れもなく彼で
「ごめん! ほんとにごめん」
と何度も何度も謝る。
けど私は
「大丈夫だよ。こういう映画も好きだもん」
と、言った。
嘘じゃない。だって映画好きな私は、本当に007好きだったから。

でも彼はその言葉を、私の優しさだと勘違いをしてしまったらしく、それからというもの
「優しいよね~」
「あんな風に言ってくれるなんて」
と、あの時惚れ直したって話を、何度も何度もしてくれた。

本当に007、好きだっただけなんだけどな。

映画が好きだったおかげで、私の株は見事に上がっちゃったわけである。

私にとって、青春時代のいい思い出。
あの彼は今、どうしているのかな。

きっと、そんなに多くはなかったと思われるお小遣いの中から、私に映画を見せてくれて、ありがとう。

ジェームス・ボンドみたいにかっこ良かったよ!





#映画にまつわる思い出

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