歴史的瞬間は日常でもあり得る
一昨日、バドミントン部で試合がある。と次男が言った時から心配だった。
次男は小学生の時にADHD(注意欠如多動症)の診断を受けている。まず、感情のコントロールが難しい。小さい頃から注意されることが多かったからか、自責の念が強い。空気が読めないところがあるからか、友達とのコミュニケーションを図るのもなかなか難しい。と色々生きづらさを感じて生きている。
小学校の時に学童で入っていた卓球クラブでは試合で負けると、泣いたり暴れたり叩かれたりして、それはそれはなだめるのが大変だった。周りの人達もわたしの根気強さに感動してくれていたらしい(後から聞いた)。
だから部活で大会に出ると聞いて慄いた。大丈夫だろうか…部活に入部しているからにはいつかこんな日が来ると思っていたが、とうとうその時が。
「大丈夫?負けてもイライラしない?」と心配して聞く。「もう、大丈夫。負けてもイライラしなくなったから。」
そうなのだろうか。本当に大丈夫なのだろうか。あれから年は経ったと言えども、つい最近のことのように感じるわたしは心配で仕方ない。
当日、暴れてもわたしが謝れるように見に行こう。ちょっと遠いし、朝早いけど、家で心配しているよりもまだマシ。そう決意して当日を迎えた。
少しだけ遅れて到着すると、ちょうど次男の試合が始まるところだった。ドキドキ。
初めての試合で戸惑っている様子だったが、周りに促されながら何とか礼をして試合が始まった。
最初から接戦でハラハラする。イライラしないだろうか…あっ落とした!あっスマッシュが決まった!一喜一憂しながら手に汗握り、心の中で叫んで応援する。
あー負けた〜。
と思いきやまだ試合は続くらしい。
どうやらゲームは2セットを先に奪取した方の勝ちみたいだ。よくルールがわかっていなかった。
さあ、気を取り直して次!
あっ打たれた!あっ決まった!
もう心臓に悪いから早く負けて終わってほしい…
と親とは思えない言葉。
1セットとった!!
えーまぐれかな。あんなに練習行かない日もあったのに。まさかとれるなんて。
まあ、良かった良かった。1セットとれただけでも。でもまだ試合続くんだ。心臓もたないかも…
1点、2点…
どんどん点数をとっていく。まさか、でも、そんな…あれよあれよといううちに、点数は増えていき、なんとなんと勝ったではないか!
きゃー!って保護者席で立ち上がって叫びたいのを我慢する。すると目から熱いものが…
公式戦でもあるまいし、小さな大会なのに、しかも優勝したわけでもないのに。涙が止まらない。隣の人も何泣いてんだ。ってびっくりだろう。
でもいいのだ。わたしには涙を流して喜ぶ理由がある。次男が試合に集中し、感情をコントロールして、自分に勝った瞬間をわたしは見届けたのだから。
次の試合ではあえなくストレート負けをしてしまった。でも友達が応援してくれて、リラックスしながら試合ができていたようだ。
色んな友達と仲良く話している姿を見ているだけで幸せな気持ちになる。良かった。本当に良かった。
成長したんだ。小学生の時のあの辛い経験を乗り越えて、彼は勝ったんだ。自分に。
みんなにとっては当たり前でも、わたし達家族にとっては歴史的瞬間だったりする。一般的にはもう中学生なんだから。なのかもしれない。でもわたしにとってはまだまだ中学生。やっと入り口に立とうとしている。そんな感じ。
次男の笑顔を見ながらそっと席を立ち、帰り道を急ぐ。帰ってくるまでに次男の大好物のジュースとドーナツを買っておこう。そしてお祝いだ!他の人には味わえない、わたし達の歴史的瞬間にカンパーイ!