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夏バテ防止にイワシの梅煮 ロワール川沿いのピノ・ノワール
仕事帰りに閉店前のスーパーに寄るとイワシの梅煮がお買い得で売られていた。暑さが続く中、身体が梅の酸味と魚の滋養を求めているようだ。迷わずレジかごに入れる。青魚特有の風味を、どうワインに合わせようかと考えを巡らしながら帰路につく。
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梅については、一般財団法人 梅研究会のサイトが詳しく参考になる。梅は中国原産、日本に伝来したのは、3世紀の終わり頃とされる。梅の実は奈良時代にはすでに柿・桃・梨・あんずなどと同様に生菓子に加工して食べていたようで、梅干しの原型ともいえる梅の塩漬けが「梅干し」として初めて書物に現れるのは平安時代中期。村上天皇(在位946〜967年)が疫病にかかったとき、梅干しと昆布を入れたお茶を飲んで回復されたという記録もあり、これが元旦に飲む縁起物として今に受け継がれている「大福茶」の起源とされる。
鎌倉時代の『世俗立要集』という文献によれば梅干しはお坊さんの酒のさかなでもあった。この風潮はやがて、武家の食膳にも広がり、武士の出陣の際には、縁起をかついで必ず梅干しを食べたといわれる。
古くから親しまれ、病気の回復にも役立ったという梅干しを使ったイワシの梅煮を食べて滋養を得よう。夏バテ防止だ。合わせたワインは、先日開栓したスペインのスパークリングワインとフランス ロワールのピノ・ノワール。
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ルシャレル ア・パル, アンセストラル オーガニック, 3,366円
Loxarel, Ancestral, Xarello, Spain, 2020, 12.5%
リンゴのコンポート、リンゴジャム、蜜漬けの花梨の果実香、シナモン、白胡椒のスパイス香、白い花、黄色い花、酵母やパンの香りがやや荒々しく香る。
パワフルな果実味、力強くやや荒々しい酸味に同時にジューシーな果実味、余韻にはビターなタッチがやや明瞭に。
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ドメーヌ ・メリオー, ピノ・ノワール, レ・ヘキサゴナル, 2019, 1,782円
Merieau Pinot Noir Les Hexagonales, Loire, France
フレッシュなダークチェリー、軽やかにアメリカンチェリー、ほのかに茎のヴェジェタルなタッチ、敢えて抑えめにされた樽のニュアンスに醸造家の意図を強く感じる。
みずみずしく透明感のあるピュアでクリーンな果実味、明瞭な酸味、中盤から後半にかけてしっとりと舌に残るタンニン。
やや軽めのボディだがバランスの良い一本で、これで1,000円台とはコストパフォーマンスに優れる。
イワシの梅煮にワインを合わせていく。
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まずはスペインのスパークリングに。ワインのジューシーな果実味に、魚の青臭みが強めに立ってしまう。泡の刺激と、梅チューブで追加投入した梅肉でほぼマスキングされるが、やはり少し気になってしまう。
★★☆☆☆
続いてロワールのピノ・ノワールに。ピノ・ノワールのチャーミングな果実味に、魚の青臭みが立ち上がってしまうかと思いきや、一歩手前で止まり、イワシの風味の個性を楽しむ範囲でおさまった。ワイン無しで食べるより、魚の旨味、深みをより一層楽しめる。梅肉を追加投入した方がワインとの相性がより一層高まるが、そうせずともしっかりと合わさる。
★★★☆☆