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岩手県産ムール貝の白ワイン蒸し ブルゴーニュ南部のまったりシャルドネ

悪友同期とのビストロでの夕食の続き。

シャンパンにサーモンの前菜の後、岩手県産ムール貝を注文。鍋に豪快に盛られたムール貝。スープにはバターがたっぷりと使われていて、トマト、セロリ、玉ねぎみじん切り、ニンニク少々。残ったスープでリゾット作れますので、とスタッフの嬉しいひと言。

ムール貝に合わせるワインのセレクトに店内奥のワインセラーへ。自然派のワインで固められたセラー。ここは自然派ワインが売りのビストロだ。目に入れば好んで飲むが、こちらから積極的に手を伸ばして掴みにいくことはないのが今の私にとっての自然派ワインのポジションだ。だが、美味しかったワインが結果的に自然派だったということは多々ある。ボジョレーのマルセル・ラピエール、ブルゴーニュ広域フィリップ・パカレ、フレデリック・コサール、ジュラのフィリップ・ボールナールなどの有名どころはミーハー的に喉を通してきた。より小規模なものもいろいろ試した。大当たりの感動も大きいが、反対のパターンもあるのが自然派ワインの難しさであり、楽しさでもある。大人数で飲むときは大当たりでもハズレでもグラス一杯ずつだが、一人晩酌、夫婦晩酌で当たり以外を引くと残ったワインはしばしセラーに鎮座。きっと明日は開くはずと朝日を信じながら闇の中、じわじわと消化していくことになる。このリスクを最近は積極的に取りにいくのを避けているのは少しずつ年を取ってきたせいなのか。いや、マイナーな土地など、産地のリスクを取ることにはまだまだ勇敢だ。挑戦とその対価が見合っていると個人的嗜好が充足するワインは積極的にチャレンジしながら手に取り続けている。いずれにしても自然派ワインは私の領域外であり、エチケットも見ていて新鮮で純粋に楽しい。しばしセラーを眺めサンセールのミュスカデに心を決めようとしていたところ、スタッフからサン・ヴェランを薦められる。ブルゴーニュ南側で肉厚な果実味、それに合わせるように強めに樽が効いているスタイルが典型的な産地との印象だ。磯の香り豊かな貝に、肉厚な果実味と樽が果たして合うのかなと疑問がよぎるが、スタッフのアドバイスを信じてみた。そしてこれが大正解だった。

Domaine Innocenti, Saint Veran, Bourgogne, France, 2018, 13%, 5,980円(レストラン提供価格)
厚みのある果実味、ややしっかりと効いた樽香と相まってふくよかでバタリーな口当たり。酸味も的確に折り込まれていてきれいな輪郭。

さて、ムール貝にワインを合わせる。

バターの効いたスープで炊かれたムール貝は、クリーミーな乳脂肪分に磯の香りが包まれた逸品。そこにセロリ、タマネギのみじん、刻みニンニクがの爽やかさとスパイスが加わり、味覚が全方位的に刺激される。ムール貝の余韻にワインをひと口。バターの乳脂肪分にワインの厚みのある果実味と樽香が磁石のように引き付けられる。そこに浸っていると間髪を入れずにムール貝の磯のニュアンス、セロリのハーバルなタッチが爽やかに広がる。ビストロのスタッフのワインセレクションは積極的に信じてみるものだ。

その後、鍋底に残ったスープを染み込ませたリゾットをスプーンですくいながら残りのサン・ヴェランのボトルを空にした。
相性: ★★★★☆

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