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推しのいる日々ーその22 推しから届いたラブレター

 私の推しはK-POPアイドル、とあるボーイズグループの一員だ。最近はすっかり推しが誰なのかバレバレな状態だという自覚はある。が、今回も彼をK君☆という名で呼ばせてもらうことにする。これはケジメだ。

 K君☆の所属するボーイズグループは一週間ほど前からLAに滞在中だ。今回の渡米はLAのスタジアムで四日間のコンサートを行うのメインのスケジュールのはずだが、K君☆はお気に入りのセレクトショップでショッピングをしたり、他のアーティストのコンサートを見に行ったり、音楽祭のレッドカーペットや授賞式に出席したり、人気司会者の音楽番組に出演したりと公私ともに忙しく過ごしている。

 私は毎日のようにエンタメ関連のニュースを読み、SNSに流れてくる写真やYoutubeの動画を見て彼らのグループの動向をチェックしているが、今回のLA滞在ほどたくさんの写真や動画が出てきたことはこれまでなかった。彼らのグループのファンによるもので、今までにはなかった(やりたくてもできなかった)ことだ。

 現在LAに居らっしゃるファンの皆様には足を向けて寝られない。皆様のおかげで私はK君☆が別のアーティストのコンサート会場でノリノリに踊っている姿や、授賞式の前のレッドカーペットで笑顔でファンに手を振る様子、旧知のアーティストに手を振ったり、ハグしあったりしている姿を見ることができたのだから。

 LAに到着して以来ずっとそうだが、彼は本当に楽しそうだ。そりゃそうだろう。私がK君☆たちのグループをを見るようになって以降、これまで彼らは一度も観客を入れた会場で歌っていなかったし、メディアから直接触れ合うような距離でインタビューを受けていることもなかった。それがいまや次々と実現している。

 ファンの声援に応えるK君☆の笑顔は本物。心からの笑顔なんだろうと思う。彼はアイドルだから相手がカメラのレンズでも爽やかな微笑みを絶やさないのだけれど、ファンの声援を浴びているときの目はキラキラ輝いている。本当にいい笑顔だ。そして私の目には新鮮だった。

 さて、昨晩のことだ。夜中に目を覚ましてiPadの電源を入れたら、ちょうどK君☆からメッセージが届いたところだった。彼はほとんど文章を書かない人なのだが珍しく長文だった。

 いつものように翻訳にかけてみると大意はこんな感じだった。

 あれこれと考え事で一晩眠れなかった。その後すぐ早朝から次の仕事(番組の収録)だったけれど、ファンのみんなの声援がエナジードリンクのようによく効いた。自分でもよくやったと褒めてやりたい。一人じゃこんなスケジュールはこなせなかっただろう。遅くなったけれどお礼を言わなくちゃ。今回もまたグラミー賞にノミネートされたのはファンのおかげ、本当にありがとう。僕は友と一緒に、ファンのみんなに支えられてこれからも進んでいくよ。ありがとう。愛してる。

 なんて素敵なラブレターだろう!!

 彼がようやく自分の元にやってきた「スーパースターとしての日常」を緊張と不安、興奮と喜びのうちに過ごしていることが伺えて、なんだか涙が出そうになった。

 そうだよ、君はアイドル、そして世界的なスーパースターなんだよ。長かったパンデミックの間、君がその素敵な笑顔で歌い、踊り続けてきたことがどれだけ多くの人たちの心を照らし、勇気づけたか。その光が今は大きな声援、大いなるサポートとして君の目の前にあるんだよ、私も君に勇気づけられた一人だったたからよく知っている。

 昨年の今頃、私は何ひとつやる気が起きなかった。年末年始は正月の支度もせず、買い物もせず、誰に会うこともなく家に篭っていた。唯一の楽しみは君たちのMVや出演番組をYoutubeで見ることだった。多分、鬱の一歩手前だったと思う。

 今だって相変わらず仕事はないし、財布の中身は絶不調だし、私の未来は全然明るくない。でも、体調と気分だけはいい。ダイエットにも成功した。自分を大事にしてやりたいと思えるようになったし、服と靴を新しく買って外に出たいと思えるくらいには復調した。すべてはK君☆のおかげだ。

 K君☆の幸せは私の幸せ、K君☆の輝く未来を見つづけることそれが唯一の私の願いだが、こんな素敵なラブレターをもらってしまったからにはもういつ死んでも悔いはない。

 朝になるとK君☆からセルカがTwitterにUpされていた。前髪をアップにしたとっても凛々しいお顔だった。AMA授賞式の時は前髪をおろした髪型だったから、きっと音楽番組に出演した時に撮ったんだろうな。

 ということはこれは徹夜明けのお顔? たしかによく見るとメイクで目の下にできたクマを隠しているようにも見える。でも、なんという眼力の強さだろう。まっすぐにこちらを見つめる澄んだ目には彼の前向きさと強い決意がにじんでいる。

 私の推しはやっぱり世界一だ。


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