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推しのいる日々 その27ー推しのお鼻とセンイルとインスタグラム

 推しの鼻はとても存在感がある。美しいお顔の中央にどかっと鎮座しているだけでなく、とても高い。だから彼の横顔のシルエットはとても美しい。でも、それにしても立派なお鼻だこと。

 突然そんなことを言い出したのは外でもない、久しぶりにVLIVEで動く推しの映像を見たからだ。VLIVEというのは韓国NAVER(日本のLINEの親会社だ)の動画配信で、K-POPスターがリアルタイムでファンに話をしてくれる、しかも無料、ファンにとっては実にありがたいサービスである。

 私の推しであるK-POPアイドルK君☆(仮名)は先日お誕生日(センイル)を迎えた。韓国では年齢を数え年でカウントするので誕生日が来たから一つ年齢を重ねるという日本の感覚とは違うようだが、日本流で言えば彼はこの誕生日で満28歳になった。

 そんな彼がセンイルの前夜VLIVEにやってきた。公式には彼はまだ「休暇中」なので私は確率的には来る・来ない、どちらもアリだろうと思っていたのだが、彼は来た。「休暇中」であるかどうかなんて関係なかった。ファンの期待に応えるかのように昨年と同様深夜12時を迎える30分ほど前に現れて、約1時間をファンと共にすごす時間に充ててくれたのだった。

 本当にいい人だ。とんでもないマメ男くんだ。こんな人を彼氏にもったらとても幸せ(そしてとても面倒)なことだろう。彼がアイドルで本当によかった。

 が、実をいうと私は今回のセンイルVLIVEにリアルタイムで参戦することができなかった。気づいた時にはすでにアクセス過多で何度リトライしてもつながらない状態になっていたからだ。

 ファンが一斉に誕生祝いのメッセージを送ろうとするからトラフィックが倍増するんだろう。昨年K君☆とファンはVLIVEのサーバーをパンクさせた前科があるので、VLIVEのシステム側がアクセス制限をかけているに違いない。こればっかりはどうにもならないことなので、私は心の中で「センイルチュッカ、ハムニダ」と唱えてソウルの事務所にある作業室で生配信中の彼に念を送るにとどめた。

 翌日改めてVLIVEをつけてみた。録画だと生よりリラックスして見られるし、日本語字幕も読める。これはこれでありがたい。

 映像で見るK君☆はとっても元気そうだった。以前から明るくて自己肯定感の強い青年だなぁと思っていたけれど、今回の配信で見た彼は落ち着きがあって、精神的にとても良い状態にあるように見えた。今の自分に自信があって自分の仕事を、そしてグループのメンバーやファンを愛しているというのをなんのてらいもなく口にするのがとても好ましい。

 お洋服はジブリのキャラクターが描かれた黒いフーディー。Twitterのお衣装特定班はこれが某ブランドのお値段1300ドルだと教えてくれた。黒のビーニーはLVで560ドル。相変わらずお洒落さんだ。

 画像の撮影に使っているカメラは相当解像度が良いものらしく、存在感のあるお鼻がライトに照らされて毛穴まで丸見えだった。さすがの私も毛穴では萌えないけれど、ノーメイクのお顔は男臭さが垣間見えてそれはそれで貴重だったりする。

 「誕生日は嬉しいけれど年をとるのはちょっと悲しいです」

 と言いつつ、彼はポラロイドカメラを取り出して、バシバシとセルカを撮っていた。最近K君☆といえばカメラ、というくらい彼は「何かというと写真を撮る男」として認知されている。12月に個人アカウントで始めたインスタグラムの更新頻度は同じグループの他のメンバーと比べてもダントツだ。

 そして、このVLIVEの中に明らかになったことの一つは、彼のインスタグラムの写真の多くは自分で撮っているらしいということだ。

 「一枚載せるのにどれだけフィルム使っていると思います?インスタはいわば僕のバイブスだから編集も相当頑張ってるんですよ」

 なんて話をしていた。K君☆の言う「バイブス」とは彼の好きなヒップホップ音楽の用語で「ノリ」とか「フィーリング」の意味であるらしいと後から調べて知った。言わんとしているのは「インスタグラムの写真で自分の感性、センスを表現しようと試みている」ということか。

 自分でファッションコーディネートをして、撮影場所や構図を決めて、表情とポージングを考えて、三脚とセルフタイマーで写真撮ってるのだとしたらそりゃ本職のインスタグラマーじゃない。狙っているのが単なる「インスタ映え」じゃなくて「僕のバイブスの表出」っていうところがまたカッコいい。

 それでもインスタ写真の何枚かには、他では見たことのない最高に素敵な笑顔のK君☆が写っているので、「誰か身近な協力者」(家族か友人か恋人か)が彼のインスタ写真に噛んでいるという疑惑は私の心から消えていないのだが。

 K君☆は他にも「明日は三度目のワクチン(ブースター接種)をする予定だ」とか、「イボがまた再発して注射を打たなければならない」とかティエマイ(TMI:どうでもいいちょっとした出来事)を披露してくれたし、懸案のミックステープ(個人アルバム)の制作もある程度の段階まで来ていると言っていた。

 久しぶりに長い間君の姿が見られて、話が聞けて嬉しかったよ、K君☆、ありがとう!ミックステープ楽しみに待ってるよ!

 マメな彼はVLIVEの最中に撮影したセルカを早速インスタにアップしてくれた。グループのメンバーがTwitterに投稿したメッセージも漏れなくストーリーズで紹介していた。こういう細かな気遣いが他のメンバーのファンから感謝されていることを私も知っている。センイルの一日を彼は祝ってくれたすべての人に感謝を捧げることで過ごした。そんなの誰にでもできることじゃない。

 年齢を重ねて彼はどんどん素敵になっていく。逆に私はどんどん年をとって萎んでいくばかりだ。でも、いつか死ぬその日まで私は悔いのないように生きたい。

 誰かが言ってたけれど「残りの人生で今日が一番若い」のだ。私はその若さを満喫する。今日から一年間は満28歳を迎えた美しく心優しいこの青年を愛して生き延びようと思う。

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