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自分が変わらなくても社会が変化すればその意味は変わる。だから常に自分も変化させる

※今回は有料マガジンの宣伝も込めて大部分を配信します(登録くださっている方すみません)。

先ほどまで、architecturephotoの記事の更新をしていたのですが、最近は作品よってはその特質を伝えるべく(でも矮小化しないように注意しながら)、小見出しのようなものをタイトルに付け加えています。

それって、当初は全くやっていなかったことなのは間違いないですし、この施策も自発的にというより、弊サイトを取り巻く環境の変化も関係しているのだなと思いまして、最初に書いた「自分が変わらなくても社会が変化すればその意味は変わる。だから常に自分も変化させる」をテーマで自身の活動を振り返ってみたいと思います。

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弊サイトがarchitecturephotoという名義になった2007年ごろ、ネット上で建築作品が見られるということは凄く珍しいことでした。つまりそのような社会環境の下では、ただ、「建築作品がウェブで見られる」ということ自体に価値があったのでした。

振り返ってみても、(恥ずかしいほどに)今ほどに編集意図をもって写真や文章を構成できていませんでしたし、ただ、掲載する、実現させるということに主眼をおいて活動していたように回顧します。でも、ネットに建築情報がなかった時代にはそれでも、凄く満足して貰えてたんですね。

また加えて言うと、掲載する写真のサイズもめちゃくちゃ小さくても良かった。だいたい横幅400pxくらい。いまのアーキテクチャーフォトでは、拡大すると2400px幅サイズで見られるので、1/6の小さな写真でも満足してもらえる時代だったんですね。このサイズの話は、ADSLとかの通信環境とも関係してくる話だと思います。

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その後、インターネット回線が高速化すると共に、ネット上でストレスなく閲覧できる画像サイズの大きさも変わってきます。つまり大容量の写真が掲載できるようになりました。それに合わせて、アーキテクチャーフォトでも、写真を拡大できる機能を導入しました。やはり今までは小さいサイズで満足できたものでも、他で、より大きな写真が見られる状況に変化すれば、それは物足りないものになってしまうのですね。

また、情報配信の仕組みも大きく変わりましたよね。2007年当初はウェブの更新に関しては皆さん、ブックマークからクリックして確認していたと思いますが、その後、RSSリーダーというものが登場します。これによって、ブログ等の更新も登録しておけば、一括でチェックできるようになったのです。しかし、これもSNSの発展と共に衰退していきます。世の中の多くが、情報のチェックをタイムラインで行うようになったのです。

これに関しても、アーキテクチャーフォトではtwitter、fb、instaのアカウントを開設する等で、情報の入り口となる部分を増やしていきました。これも、RSSだけで配信していたら、今頃どうなっていただろうと予想します。怖い。笑

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そして、誰しもがネットで発信することが当たり前、建築家自身がSNSやウェブを駆使して写真や情報を発信するのが当たり前な時代になっています。アーキテクチャーフォトに類似するサイトも色々と出てきました。

つまり、同じ写真や文章が色々なところで目にする時代になっていると言えると思うんです。そんな状況の変化の中で、建築を伝えるためにアーキテクチャーフォトが行うべきことも変化していて、それを無意識のうちに実践していたなとも思うんです。

つまり、近年では、アーキテクチャーフォトに載っているから見えてくる、視点や閲覧経験を生み出すことを意識し建築家の皆さんの記事を構成するようになっています。

弊サイトは、作品を評価するメディアの側面もあると思っていますが、同時に、掲載を希望してくれた建築家の作品の良さを引き出し、それをネット上でより遠くまで届けるという、ある種のプロモーションの役割を担いたいと思っています。

それは、個々の建築家に貢献することを越えて、建築設計業界の役割や存在を世に問う効果もあると考えているからです。

そのために、建築家と建築写真家の方がコラボして制作された写真を読み込み、文章を読み込み、そこでの作品で目指されたことを理解したうえで、社会の遠くまで届くであろう見るべきポイントを、「写真の組み合わせ」「文章の構成」「改行」「タイトルでの短いコピー」で、作為性のない出来るだけ自然な経験として、その試みが受け入れられるように毎度記事を熟慮して構成しているんです(最近は、編集パートナーの皆さんともコラボしているので、それによって明確化されている部分も大きいです。ありがとう!)。

最初の話に戻りますが、やはりこうするようになったのも、アーキテクチャーフォトを取り巻く環境の変化が大きいんです。
誰もが発信出来て、メディアになれる現在では、ただ頂いた資料を載せているだけでは意味がなくなってしまった。自身のサイトでも発表はできるし、世界順にメディアは無数にある。そんな中で選んでもらえるサイトにならなければいけない。

18年建築を見て、ウェブを更新してきて蓄積された、それぞれの建築作品の固有性を見出して、それを編集技術で、遠くまで届けるという、付加価値を提供しなければいけなくなっていて、そういうメディアになるべく、アーキテクチャーフォトも進化しているということなんだと思います。そしてそれは、アーキテクチャーフォトだからできる部分でもある。

なので、建築家の方に、この写真をメインで使いたいと言って頂くことも時々あるのですが、ご説明して、こちらの編集意図を理解して貰い毎度記事を構成している感じです。やはり膨大な作品を見ているので、その個性を見出し構成して伝えるという部分にはプロフェッショナルの自負があります。

こうやって、意図を込めて構成しているのですが、やはり実際にポジティブな効果もあって、建築家の皆さんから見せ方の勉強になるという嬉しいコメントを貰ったり、実際にtwitterやinstagramでの投稿では、10万を越えるアカウントに作品が届くケースも出てきたり、投稿切っ掛けで、テレビ取材に繋がったり、仕事の依頼に繋がるケースも多々あるようです。

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最後の方、編集の方法論になってしまいましたが、やはり、周辺環境の変化というのは大きくて、自分が変わらなくても、周りが変わると、それの見方が変わってしまうんですよね。

ちょっとジャンルは変わりますが、プロゴルファーのジャンボ尾崎氏が、次のようなことを話していたんです。

尾崎氏は、毎年ゴルフの練習法を少しづつ変えているのだそうで、その理由は、自身の肉体が少しづつ衰えていくからだそうで、その衰え(変化)に対し、練習法を変えることで補おうとしていたのだそうです。

ぼくはこれを聞いて、本当に素晴らしいと感激したんです。自身の肉体の変化にまでこれほど意識的だということに。自身の体が仕事道具なのですから、それは当たり前なのかもしれませんが、ともかく感動したんです。

そう考えると、ぼくらは、社会環境の変化と共に、その仕事も進化・変化させていかなければならないと共に、自身の老いとも向きあって、組織体制を構築していかなければだなと、最近思います。

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また、このメディア事業で食べていこうと一本に絞った時、アーキテクチャーフォトの名前だけではなく「後藤連平」という個人にもブランド力というか影響力を付与しておかなければ将来生き残れないのではないか、という直感がありました。それは薄々、同じような状況が永遠に続くわけではないと思っていたからかもしれません。

その時からtwitterアカウントを本名にしたりfbのアイコンを実写にしたりしたのですが、時を経てそれが功を奏したのか、ぼく自身への様々な依頼が舞い込み(アトリエや組織設計のサイトコンサルや、セミナー等)、それ自体がアーキテクチャーフォトとは別の事業に育っている感覚もあります。

全てが戦略的にというわけではないのですが、最初に書いた

「自分が変わらなくても社会が変化すればその意味は変わる。だから常に自分も変化させる」

という意識を昔から持っていたからこそ、なのは間違いないと思います。これからも変わり続ける自分を楽しみたいと同時に、建築家の皆さんにも変わり続けて欲しいと思います。

また余談ですが、あのフィリップジョンソンは、グラスハウスのような歴史に残る作品を完成させたあとも、建築の歴史の変化に意識的で、晩年には(1996年)、デコンストラクション的な作品も作ったりしています( https://www.domusweb.it/content/dam/domusweb/it/Designer/gallery/2020/03/13/philip-johnson/gallery/domus-philip-johnson-23.jpg )。

ぼくはこういう姿に本当に勇気を貰えるんですよね。

これからの建築人生も、変化して生き残りたいです!

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