独自大会を通して後輩に伝えたかったこと(仙台育英高校OB 菅野友雅インタビュー 後編)
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3年生全員が出場して掴み取った独自大会優勝
――各都道府県で独自大会開催の動きが広まりましたが、開催を聞いたときはどういったお気持ちでしたか?
須江先生が「お前たちのために何とかする」とずっと言ってくださって、大会を開催するために須江先生がずっと動いていてくれたのは自分が一番近くで見ていました。ここまで自分たちのために動いてくださる監督は全国でもなかなかいないと思うので、「ここまで本気でやってくれる監督がいるなら自分たちも本気でやろう」という風に思っていました。
甲子園が中止になったとはいえ、大人の方々が自分たち高校球児のことを思って苦しい中で大会を開催してくれるということに感謝しかなかったので、それ以上のものを試合で見せたいという風に思っていました。
――仙台育英は準決勝までで3年生が全員出場されたとのことですが、そのような独自大会だったからこそできたことに関してはどうお感じですか?
実際に本気で甲子園を目指していくとなれば、1~3年生のベストメンバーで戦うというのが毎年の戦い方だったのですが、甲子園がないという中で須江先生が自分たち3年生に「独自大会は3年生で頑張ろう」という話をしてくれました。そこから勝ちにこだわると同時に、甲子園中止という高校野球生活が最悪な形で終わりそうだったところを楽しい思い出に変えていけたのかと思います。
3年生全員でやることで、1,2年生に「俺たちはこれだけ本気でやってるから、1,2年生は甲子園で優勝目指して頑張ってくれ」という風に、自分たちのプレーとか行動とかで見せていこうという話は3年生全体でしていました。それがどんどんと後輩に繋がっていって去年の優勝につながったのではないかと思っています。自分たちも上の学年の先輩たちから色々なものを受け継いで、見て学んできたので、自分たちも甲子園中止になったという中で後輩に何を遺すのかを考えました。そして、保護者の方々や応援してくださる方々に「仙台育英の野球って面白いな、今年も強かったな」という風に思わせるような大会にしようという話をしていて、それを実際に実現できたのでとても良い大会だったと思います。
――県大会の6試合の中で印象に残っている試合はありますか?
自分の中では決勝戦が最も思いが入っていたというか、その日は自分の誕生日で「お前のために絶対優勝する」ということを皆が言ってくれて嬉しかったです。
準決勝まで3年生全員で繋いできたバトンが、3年生のベストメンバーと呼ばれる人たちに託された瞬間だったので、3年生皆で繋いできたものが優勝という結果に繋がって、甲子園中止という中でも同学年の40人で頑張ってきてよかったと思えた印象に残る瞬間でした。
――優勝を決めた瞬間はどういった心境でしたか?
ホッとしたというのが一番で、甲子園がないとはいえ仙台育英の看板を背負っている以上は絶対に負けたらいけないと全員が思っていました。6試合の中で厳しい試合もたくさんあって、そんなに簡単に優勝できたわけでもなかったです。自分としては優勝できてよかったという思いと、本当だったら甲子園に行けていたんだろうなという思いがありました。
後輩と共に戦うことで伝えられること
――東北地方は全国で唯一地方大会が開催されましたが、東北大会について印象に残っていることを教えてください
県大会とは違って、東北大会は2020年の仙台育英ベストメンバーでいこうという話になって、1~3年生のベストメンバーで大会に挑みました。結果は決勝戦で聖光学院さんに負けて準優勝という形でした。
試合をする上で優勝するというのが一番の目標だったので、負けてしまって悔しいという気持ちが一番で、まだまだ自分達の実力が足りていなかったのだと思いました。その中でも県大会とは異なりベンチに後輩たちが入っていたので、試合を通じて伝えられるものを伝えようという話を3年生でしていました。どれだけ下級生がミスしても3年生がカバーするという気持ちで声をかけたりと、後輩たちが3年生になったときに自分達の姿を真似したいと思ってもらえるような大会にしたいと考えていました。
結果的には準優勝という形で終わってしまいましたが、結果以上に後輩に伝えられるものがあったと思うので、東北大会があってよかったと思いました。
――東北大会の後には甲子園交流試合もありましたが、甲子園交流試合の話を聞いたときはどういった心境でしたか?
嬉しい気持ち反面、自分達だけが甲子園にすんなり行けていいのかなという思いがありました。甲子園に立てるということは嬉しかったのですが、他の高校生がもう一回甲子園を目指して、自分達も甲子園という舞台を懸けて本気で試合をしたかったなという思いでした。
でもそれを抜きにすれば、甲子園の舞台で終われるということは嬉しいことですし、色々な人に感謝しなければならないと思っていました。
――甲子園交流試合では倉敷商業と対戦し1-6で敗れてしまいましたが、試合を通して印象に残ったことはありますか?
勝って終わるということを目標にしていて、結果としてはその目標は達成できませんでした。試合を振り返ると勝てていた試合というか、自分達のミスを積み重ねて負けてしまった試合だったので、3年生にとっては後悔が残る部分でもありました。
ただ1,2年生は甲子園で簡単に勝てないということを肌で感じることができたと思うので、そういうことを踏まえたら甲子園に1試合でも立てたということはこれからの仙台育英に絶対活きてくることだと思ったので、そういった意味ではよかったのではないかと思いました。
少しでも甲子園優勝の力になれたら……
――交流試合から時が経ち、秋のドラフト会議ではチームメイトの入江選手が楽天イーグルスから指名を受けました。その当時のチームメイトの皆さんはどういった様子でしたか?
野球や練習に対する取り組みに努力しているところは見ていました。誰からも好かれる選手で、入江にはプロに行ってほしいと全員が思っていたので、自分達の学年はできる限りのサポートをしようと思っていました。身近な人がプロに行くということになって、感動というか良かったなという思いになりました。
――卒業式の日に3年生全員がボールに名前を書いて、そのボールを後輩の皆さんが選抜のベンチに持っていったと聞きました。そのことについて詳しく教えてください。
自分達の学年が甲子園中止になって、そこから後輩に対して何を残していけるのかを考えたときに、少しでも目に見えるもので一緒に戦ってほしいという気持ちがあり、卒業式の日にボールに名前を書いて後輩にあげようという話をしていました。それを実際にベンチに入れて戦ってくれたので、自分達としても嬉しかったですし、やってよかったなという気持ちでした。
――「後輩に伝えられることを……」というお話がありましたが、当時の1年生が3年生になった去年、東北勢初の優勝を成し遂げました。その優勝を見届けた際はどうでしたか?
自分達が入学して先輩たちから色々なものを引き継いできて、それを自分達も後輩に繋げていこうということで繋いできて、それが最終的に去年の3年生が甲子園で優勝したということで、今まで育英でやってきた人たちの思いが繋がってきての優勝だと思っています。
やってくれたのは彼らですが、その中に自分達の力が少しでも加わっていてくれたら嬉しいなと思っていました。色々な人たちから繋いできたものが優勝という結果に結び付いたと思うので、それを達成してくれた後輩にはすごく感謝しています。
2020年世代全員で成功させる企画に
ーーこの「あの夏を取り戻せ」というプロジェクトについて聞いたときはどう思いましたか?
高校の同級生を伝って自分のところに話が来て、「こういうプロジェクトがあるみたいだ」という話を聞き、そこで初めて自分から調べました。自分達のことを考えて行動してくれる大人の方々がいることは知っていましたが、同世代の人にもいるということにすごく感動しました。一緒になって頑張っていくということで仙台育英として応募させていただいたのですが、一番は同世代でも自ら行動して企画を進めてくれるということに感動したというのが率直な心境です。
――当時のチームメイトの皆さんはこのプロジェクトの話を聞いてどういった反応でしたか?
自分達の学年は40人いるのですが、LINEのアンケートでこういうプロジェクトに出たいか意見を聞いた結果、満場一致で出たいという回答になりました。そこで「甲子園にまた行きたいね」という話になって、卒業してから会える機会は年に1回あるかないかくらいなのですが、そういった中でも仲間との繋がりを確認できたいい機会だったのかと思います。
ーーこのプロジェクトでの目標を教えてください
2020年世代がコロナ世代と言われがちだと思いますが、コロナウイルスと戦って色々な問題と直面してきた中で、あのときは負の感情しかなかったのですが、今思えば他の学年では経験できないようなことを経験できたと思っています。
そういう今までの人なら考えもしなかったことを自分達の学年ならできると思っているので、プレーして元気づけるとか勇気づけるといった薄いものではなく、甲子園中止から時が経って自分達はこういう風に成長したという姿を見せられたらと思います。
ーー最後に応援してくださっている方々へ意気込みをお願いします
このような企画を発案してくれた実行委員の人たちに感謝をするということはもちろん、そういった人たち含めて2020年世代全員で素晴らしい企画を成功させられるように、自分達も少しでも力を貸したいと思います。
横の繋がりを大事にして、2020年世代全員でこの企画を成功させることができたらと思います。
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