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運営最年長の22歳でも、気持ちは高校球児に戻って(運営 宇佐美和貴インタビュー 後編)

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迷走する中で出会った学部

――2020年の夏は、選抜に出場予定だった高校が甲子園交流試合に出場しましたが、その光景を見てどのように感じましたか?
 やっぱり物足りなさを感じましたね。観客がいてブラスバンドがいて、この試合に負けたら終わりというのが甲子園だと思います。彼らにとっては、すごくいい思い出だったとは思いますし、あの試合ができたのは最大限良かったとは思うのですが、どこかに物足りなさを感じながら見ていましたし、プレーしていた選手も感じていたのではないかと思います。

――宇佐美さんは社会人経験を経てから、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部に入学されましたが、入学を決めた理由などあれば教えてください
 今振り返れば、高校卒業後はいい意味で迷走していた時期だったと思います。そういった中で大学は卒業しておきたいということと、せっかく4年間大学に通うのであれば変わったことがしたいと思っていました。そんな時に学部長の伊藤洋一先生が出演されているYouTubeを見て、ここなら自分が主体的を持って、やりたいことをやれる場なのではないかと思い入学しました。
 一応『アントレプレナーシップ学部』という起業家を養成する学部ではあるのですが、起業することが全てではなく、アントレプレナー『シップ』ということで、失敗を恐れずに自分の志を立てて挑戦していくマインドを身に付けるという意味でも、自分に合っていると思って飛び込みました。

衝撃を受けた大武優斗の発想

――同じ学部の1学年上の大武優斗が「あの夏を取り戻せプロジェクト」を立ち上げましたが、その当時はどのように感じていましたか?
 大武優斗は同じ大学の同じ学部の1個上の先輩で、最初に『大武優斗』という名前を知ったのは、自分の学部で最初に会社を立ち上げたという話を聞いた時でした。その話は知っていたので、行動力のある人間だなとは思っていました。
 ある日彼がSlackという連絡ツールの武蔵野大学のチャンネルで、「僕は弱い人間です。だからこの場を借りて覚悟決めます。自分は高校まで野球をやっていて、それが命でしたが、コロナにより甲子園がなくなりやり切れない気持ちが今でもあります。だから、もう一度甲子園をやります」という内容の宣言を突然していました。
 自分は「なんだこいつ?こいつ何を言っているんだろう?」と、「『もう一度甲子園をやります』って何?」と思っていました。ただ、成功するとか実現するとかではなく、その発想がすごいと思っていました。
 その時は面識がなかったのですが、DMで「宇佐美です。今年この学部に入学して年齢は1個上ですが、もし何かあれば小山台高校で野球をやっていたので、協力させてください」と送りました。その時は面識もなく1歳年上ということも伝えたので、「分かりました。ありがとうございます。よろしくお願いします。」という初々しい返信が送られてきました。
 それからしばらく経って、グループチャットか何かに「これから本格的にプロジェクトを進めていくので、本気で手伝ってくれる人は自分に連絡ください」という連絡がありました。その連絡が来たのが英語の授業中で、本当はいけないのですが授業中に連絡が来たその瞬間に「やります」と連絡をしていました。
 実はそのとき、まったく同じことを目の前の席の人間がやっていました。それが今同じ運営メンバーとして働いている小泉真俊でした。打ち合わせも何もしていなく、偶然彼と自分は同じことをしていました。

――最終的に運営として参加しようとした決め手は何でしたか?
 決め手としては2つあります。
 自分のときまでは、甲子園は当たり前にあるものだと何の疑問も持っていなかったので、突然パンデミックによってなくなるということが自分たちには考えられないことでした。そういう1個下の代の子たちの精神状態も全く分からない状況で、何とか悔しい思いを昇華させてあげたいということは常々思っていました。そんな時にこのようなプロジェクトをやる人間が、自分の身近なところにいるのなら、手伝いたいと思ったのが1つです。
 もう1つは、大武の発想です。「甲子園をもう1回やる」というインパクトが強すぎて、面白いと感じていました。そんなぶっ飛んだことがやれるのなら、一緒にやりたいと思ったのが決め手です。

プロジェクトは『もうひとつの青春』

――宇佐美さんは、運営ではどのようなことをされていますか?
 自分の仕事を一言で表すと『業務管理』ですね。具体的に言うと、色々なことが並行的に進んでいく中で、色々な人と連絡を取って日程調節を行ったり、選手などの情報をまとめて必要な情報を提供したり、このプロジェクトを進めるうえで各班の進捗を確認したり、どの班にも該当しない業務を行ったりと、細かい内容を行っています。

――やりがいを感じる瞬間はいつですか?
 2つあって、1つはプロジェクトの認知が広がって、自分たちの学部の教授らから「結構凄いことになってるよ」といった声をいただいた時です。そういう言葉を聞いた時に、プロジェクトが浸透している、注目されていると分かって、学生が中心となって進める大きなプロジェクトに自分も携われていてありがたいなと思っています。
 もう1つはこれから感じることになるのでしょうが、成功させたときに当時の選手のやり切れなかった気持ちが昇華されるのであろうと考えると、やる気が湧いてきて自分を後押ししてくれます。

――宇佐美さんは学生メンバーの中で最年長ですが、その点について感じることはありますか?
 多くの学生メンバーが自分より年下だという気持ちは全くないです。「自分たちは甲子園があったのに、無かった代の甲子園を手伝ってやっている」というような気持ちは全くなくて、同じ思い、同じ気持ちです。
 ある意味これも高校野球みたいな感じで、球児の気持ちに戻って、一緒に1つの目標を目指す『もうひとつの青春』みたいな感じです。他のメンバーと一緒に甲子園目指している感覚です。そういう気持ちでやっているので、あまり年齢については考えていません。

――高校時代の経験がプロジェクトでも活きていると感じる場面はありますか?
 やっぱり今言ったように、皆と同じ目標に向かって頑張ることが好きなのだと思います。自分1人でやり遂げることは好きじゃないというか、できないと思っています。チームとして1つの方向を向いて頑張ることが好きで、それが好きだということを再確認できたのは高校野球の存在が大きいと思います。

日常の場面からも分かる大武優斗の芯の強さ

――宇佐美さんから見た大武優斗とは、どのような人間ですか?
 一言でいうと『ぶっ飛んだ人間』ですが、あまりに抽象的すぎるのでもう少し具体的に言うと、『ものすごく芯の強い人間』です。
 これはプロジェクトに限ったことではないということが、近くで見ているとよくわかります。彼は野球のプロジェクトをやっているのに、普段はサッカーをしています。フットサルやサッカーをするグループに、自分はやらないのに何故か入れられました。例えば雨の日やサッカーをやるのに十分な人数が集まらない日もあり、「今日は中止じゃない?」という雰囲気になることもあるのですが、大武優斗は1人だけ「やる。○○来い。やるぞ」と勝手に試合の相手も決めたりしています。
 彼は『やると決めたらやる人間』で、それによって迷惑被っている人間もたくさんいると思うのですが、そのぐらい自分が決めたことはやり通す人間です。あんなにやり通す人間はいい意味でも悪い意味でも出会ったことがなくて、それは凄いなと思います。それはこのプロジェクトでも同じで、彼はやり通すのだろうなと思います。

――宇佐美さんにとって『甲子園』とはどのような場所ですか?
 これを言うとこのプロジェクトの意義が損なわれる可能性があるのですが、恐れずに言うと、『行かずとも自分を磨いてくれた場所』ですね。
 その場所で野球をやるということに命をかけて3年間、そして更に長い期間野球をやってきたのですが、結果として自分は甲子園に行くことはできませんでした。そんな自分にとって、甲子園は無形遺産だと思っています。甲子園という形はありますが、それそのものに特別大きな価値はなくて、それを作っている構図に参加することによって、自分は凄く磨かれました。
 自分だけでなく大武優斗にとっても、甲子園に挑戦する機会すら与えられなかったことで、その悔しさからこのプロジェクトをやっていて、そう思わせる甲子園って凄いなと思います。
 普通に考えたら少し立派な球場というだけなのに、あの球場でこれまで行われてきた伝統や、そこに乗せられた日本国民の気持ち、自分たち高校球児の気持ちがあの場所には宿っていると思っていて、そういった意味では『行かずとも自分を磨いてくれた』ものですね。

日本一のプロジェクトに

――運営メンバーとしての今後の目標を教えてください?
 『日本一のプロジェクト』というのが自分の中で抱いている目標です。
 運営メンバー皆の共通の目標としては、このプロジェクトが無事に終わって、成功したと誰もが思えるものにすることだと思います。ただ自分の中では、やるからには「今まで日本のプロジェクトで一番すごかったの何?」って聞かれたときに、「あの夏を取り戻せプロジェクトだ」と言ってもらえるようなプロジェクトにしたいと思っていて、それのための一助になれるように頑張っていきたいと思います。

――プロジェクトへ参加する多数の選手へ、メッセージをお願いいたします
 まず、集まってくれてありがとうございます。
 プロジェクトを成功させるために、色々と協力してもらわないとできないことが多数あると思っています。別に自分たちだけで作り上げていこうなんてことは考えていなくて、当時の選手と一緒に作り上げていかなければならないプロジェクトなので、一緒に最高のプロジェクトにしていきましょう。
 ご協力をお願いします。

――最後に、このプロジェクトを応援してくださる方々へ、メッセージをお願いいたします
 今、私は22歳なのですが、気持ちは高校球児に戻って、このプロジェクトを皆で一丸となって成功させたいと思っておりますので、是非皆さん力を貸してください。
 応援よろしくお願いいたします。


プロジェクト公式サイト:https://www.re2020.website/
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