初めてWWE日本公演を見た話
はじめに
2024.7.27、両国国技館で行われたWWE日本公演を観に行った。
私にとって、この日が人生初のWWE観戦だ。
今回、観戦するという投稿をした時に他の方からこのような反応をいただいたのだけれども、私は元々、海外のプロレスに対して興味や関心を抱いてこなかった。
それは、海外のプロレスが嫌いだからという訳では決して無くて、現地で追えるところに愛着を抱くタイプだからなのかもしれない。
野球でもサッカーでも海外リーグより国内リーグに興味を持つタイプで、プロレスも同じ流れでそうなったのだと思う。
それ故に、私はWWEの選手や抗争劇の流れを、あまりよく知らない。
そもそも、今回観戦に至ったのも、ひょんなことから観戦する前夜に御縁があった事が最大の理由だ。
でも、他の人によるSNS上の投稿で見かけた「選手とか知らなくても、WWEのスーパースター達が全力で観客を盛り上げてくれるから心配いらないよ!」という言葉を見かけて、当日の空気に身を任せてみる事にしたのだ。
結論から言おう。
自分の中で前々から抱いていたWWEに対する疑問点とかスゴさとかが、日本公演の中だけでも幾つか感じられる、非常に素晴らしい興行だった。
コール&レスポンスに象徴される、声援の凄まじさ
今回のWWE日本公演で実感したのは、コール&レスポンスを始めとした声援の凄まじさである。
入場曲のシンガロングを始め、選手個人のオリジナルムーヴに対する反応、選手への応援など、会場中の声援が全ての試合で軸になっていたのだ。
正直、今までABEMAのWWE中継で試合映像とかを見ていても、試合内容の雰囲気とかで個人的にピンと来ない所があったのだけれども、生観戦してみて私なりにハッキリ分かった。
極端な話、技数が少なかったとしても、コール&レスポンスで試合を組み立ててしまえる強さがWWEにはあったのだ。
それは決して否定的な事ではなく、『ダミアン・プリーストvsジェイ・ウーソ』はジェイ・ウーソの「YEET」だけで序盤の約5分を盛り上げていたし、後述するブーイングが試合に火を点ける場面も多々あった。
配信でいつでもどこでも試合が見られるようになった現代において、WWEに関しては生観戦が絶対的に強いんだろうなあと実感させられた。
観客参加型という、これ以上ない強み。
観客席から自然発生する「This is awesome」コールにしても、内容が盛り上がってきたところに発するタイミングが絶妙で、個人的に日本国内の団体で同じコールを聞く時にちょいちょい感じていた「ただawesomeと言いたいだけ」みたいな違和感は1つも無かった。
会場で思わず真似したくなる・叫びたくなるムーヴの多さも魅力的だった。
前述したジェイ・ウーソの「YEET」とか、入場時にスマートフォンのライトを点灯させるところとか、人がやってるとついつい真似したくなるアクションが随所に詰まっていた。
善悪の分かりやすさ
前述したように、私はWWEに関する選手やユニットの歴史や知識に疎い。
ただ、今大会では、そういう予備知識がなくとも分かりやすい善悪の構図があった。
東京大会2日目のオープニングを飾った『コフィ・キングストン&エグゼビア・ウッズvsフィン・ベイラー&JDマクドナ』のタッグ王座戦における、ドミニク・ミステリオの乱入劇であったり、2試合目の『リヴ・モーガンsカイリ・セイン』で観客を煽って大ブーイングを浴びるモーガンだったり、ブーイングすべき人を初心者にもハッキリ認識させていたのが印象的だった。
特に後者では、近くの客席にいた子供が「悪者頑張らないで!」とリヴ・モーガンに思わず叫ぶなど、名前が分からずとも悪い人だと子供が認識している所が非常に興味深かった。
新日本プロレス所属後期に本隊に所属していたタマ・トンガやタンガ・ロアも、"凱旋"の舞台では『ブラッドライン』の一員として観客から容赦ないブーイングを浴びせられていたのも、個人的には忘れられない1シーンだ。
ヒールレスラーにやられている選手(今回だとカイリ・セインやサミ・ゼインetc)を観客が全力で応援する事も、善悪をハッキリ印象付ける事に貢献した。
余談だが、17:00開始予定だった大会は、実際は告知事項等で約30分開始が遅くなったのだけれども、リングアナウンサーが会場を盛り上げた直後に流れた直近のハイライト映像や『極悪女王』のプロモーションビデオには容赦なく観客からブーイングが浴びせられていた(笑)。
開始が遅れていたタイミングで流された事への落胆が大きかったとはいえ、日本の団体だと中々見れない光景だった気がする。
「海外の応援スタイルはスゴい!でも、日本は~」に肯首しにくい個人的理由
今回のWWE日本公演の盛り上がりを生で体感してみて、前述したようなコール&レスポンスに衝撃を受けたし、入場曲のシンガロングにも圧倒された。
その流れで「日本の団体が盛り上がってない」、「日本だと応援の仕方が良くない」みたいな比較論も見かけたけれど、これに関しては単純に比較も出来ない事のように私は思う。
日本だと、各人が自由に声を出して応援出来る環境なのに対して、海外はパターンがカッチリと決まっていて定番化しているシステマティックな気質のようなものを、私は声援を聞いていて感じたのだ。
日本だと、選手の名前を叫んだり、拍手付きで「○○(選手名)!○○!」と観客がコールしたりする流れが一般的だが、そうしたコールに近い雰囲気も私が観に行った2日目には『ベイリーvs里村明衣子』の時の里村コールにしか無かった印象だ。
【「Let's go ○○(選手名1)!」→「□□(選手名2)!」】というパターンのコールが基本軸で展開される海外流の応援には、日本のように個人が出したいタイミングで声を出す気質と食い合わせが悪いのではないか、と。
海外の応援の仕方だと、チャントのパターンや選択肢が複数決まっている分、日本みたいな「○○やり返せ!」みたいな、観客の意思を反映したようなコールが入れづらそうだなあ、と。
(海外にも「○○やり返せ!」みたいな即興声援はあるのだろうか…?)
あと、現地で何度か見られた【アリーナ席で選手入場時に何度となく立ち上がったりする観客の姿】にしても、日本の団体でやったらルールで禁じられたりネットで晒されたりする行為だろうから、真似できない(というより真似が憚られる)行為はどうしても存在する。
入場曲をシンガロングする習慣にしても、日本の各団体に定着していないし、今回シンガロングが起こったコーディ・ローデスの入場曲『Kingdom』だって、新日本プロレスに参戦していた時期には客席からのシンガロングは起きていなかったと記憶している。
こういうコールやシンガロングを定着させようにも、応援する側の時間、勇気、根本からの大きな変化が伴うだろう。
今で言えば、新日本プロレスなら上村優也の入場曲、プロレスリング・ノアなら拳王の『失恋モッシュ』を、全国各地の会場中でシンガロングするのが当たり前になる所まで持って行かないと、中々難しいんじゃないかなあと。
個人的に、(悪質なヤジ問題とかは付いて回る今だけど、)選手に声援を送りたいタイミングで声を出せるのは、日本流の応援の魅力だと思う。
ただ、ああいうシンガロングは、聞いていて嫉妬してしまうくらい盛り上がりが凄かったから、日本でも定着したら面白いよなあ…(羨望)。
まとめ
大盛り上がりとなったWWE日本公演。
グッズも2日目の試合終了後にはTシャツ類を始めとしたほぼ全ての商品が完売し、大阪公演も含めた3日間の盛り上がりはSNSでもハッキリ伝わってくるものがあった。
私が足を運んだのは東京大会2日目だけだったが、スマホのカメラでも各方角のコーナーに立つ選手たちの姿が見れたりして、正面側だけ向くみたいな方角の絶対性も無い所に感動してしまった。
本音を言えば、スマホカメラ以外で写真を撮りたい気持ちもあったけれど、一眼やミラーレスがOKか否かで意見が分かれていたし、結果的にカメラを持たずに行って楽しい思いが出来たから、私は大満足だった。
何より、真似したくなる声援のパターンが複数存在している点に、私は羨ましさすら感じた。
冒頭で述べたような、私個人の海外団体に対する興味や価値観は今回の観戦で一気に変わった訳では無い。
けれど、次回来日公演があった際には是非観に行きたいと感じる程、観客参加型の魔物に憑りつかれた事だけは確かだ。
楽しかった!