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"企画モノ"を超越した新人デビュー~2022.10.23『上谷沙弥&妃南vsフワちゃん&葉月』~

はじめに

2022.9.11、プロレス界で話題となったニュースがある。


フワちゃんのプロレスデビュー。

後に、これはテレビ番組(『行列のできる相談所』)の企画であると明かされ、それに向けて4ヶ月半もの練習期間を積んだという。



前置きすると、私は、フワちゃんの事をあまり知らない。

普段テレビを見ない私でも、かろうじて名前は聞いたことがある人だけど、彼女がYoutuberだという事は今回のプロレスデビューで初めて知ったレベルだ。


今回のプロレスデビューに対し、「4ヶ月半の練習期間でデビューできるのか?」など、所謂芸能畑からの参入に否定的な意見も聞かれた。

でも、私は、彼女のプロレスラーデビューを否定する気にはなれなかった。
何故なら、試合を見ない事には判断のしようも無いからである。


例え、出自が女優や芸能畑であっても、リング上では一選手としてジャッジされる。
これは私の強がりとかではなく、過去に同様の事例でも、その後大成して世界レベルに上り詰めた選手を見ているからだ。

誤解を恐れず言うと、芸能という経歴と"下駄"で内容の拙さを隠すことなんて、とてもじゃないけど出来ない。


実際、女優からプロレスラーになった人が集うアクトレスガールズ(※)なんかは、安納サオリを始め、女優出身だと感じさせないくらい、プロレスで素晴らしい選手達を輩出していった。
(※2021年末にプロレス団体としての活動は終了)

安納サオリ


これは私の経験によるものだが、舐めているか否かなんて、試合を見た時に何となく感じ取れてしまう。
そういう空気感はプロでも誤魔化せないし、見ている人には無意識のうちに伝わってしまうものだ。
言葉で上手く形容できないけれども…。


それに、今のスターダムは、タイトル戦線に絡めるトップグループと、他の選手の実力差が良い意味で縮まりつつあり、全体的に実力も底上げされている。
(他団体にも言える事かもしれないが、)テレビの企画だからと言って、簡単に上がれるようなリングでは決してない。

2022.7.9『朱里vs渡辺桃』
2022.6.28『中野たむvsなつぽい』


ただ、デビュー前から新人選手に賛否が起こるシチュエーションなんて、滅多にない。


私は、この日の大会を見に行く事を決めた。
それは、「自分の目で見て、判断できない景色がある」という、至極単純な動機と好奇心に他ならない。

見ないで批評なんか、誰でも出来る。
大事なのは、見た上で、自分の感想を持つ事なのだ…。




『上谷沙弥&妃南vsフワちゃん&葉月』

フワちゃんのデビュー戦は、本戦前のダークマッチで組まれた。

この試合はPPVでの配信は無く、テレビのオンエア前に最速で見れたのは、現地に足を運んだ観客のみ。


先に入場したのは、デビュー戦で対戦相手を務める上谷沙弥と妃南。
上谷は、現在ワンダー・オブ・スターダム王座を保持する現役チャンピオンだ。


フワちゃん&葉月は後から入場。
葉月はフワちゃんのコーチ役を務めた選手。まさに師弟タッグである。


フワちゃんが入場シーンの時点で纏っていた華は、新人選手の持つ"それ"では全く無かった。
今振り返ってみると、この時点で【普通の新人選手】とは一線を画していた気がする。


そして、運命のゴング…


結論から言うと、フワちゃんのデビュー戦は非常に素晴らしい内容だった。

例え、企画や経歴云々を抜きにデビューしたとしても、試合を見た人達が「この新人選手はスゴい!」とハッキリ話題にしたくなるような、出色の出来。


前述したように、私はフワちゃんの事を詳しく知らない。
それでも、試合を見ていて胸が熱くなってしまい、思わず涙が出そうになった。

そんな新人デビュー戦を見たのは、この試合が初めてだ。

試合前、東スポのインタビューで「生半可な気持ちだったら徹底的に潰したいと思います」と語っていた上谷は、通常の試合で見せるようなドロップキックや重いエルボーを、容赦なくフワちゃんに浴びせていった。

それらの攻撃をフワちゃんが引かずに受けきったシーンだけで、彼女がただの"企画モノ"ではない事がハッキリ分かった。


目を見張るシーンは、それだけに留まらなかった。
個人的に印象に残った場面の一つは、フワちゃんが妃南にボディスラムを浴びせた後で、逆エビ固めをかけにいった時だ。


逆エビに向かう際、極める前に妃南の両肩をマットにつけて3カウントを狙い、妃南が肩を上げた反動を利用して逆エビ固めに持って行ったのである。


プロレスだとたまに見られるシーンではあったが、新人の段階でこれを使える選手を、私は見た記憶が無い。
ルールや技の意図を把握していないと出来ない事まで、フワちゃんは見事にやってのけたのである。


その後も、ドロップキック、ビッグブーツ、卍固めを上谷に決めるフワちゃん。
中でも、試合前の煽りVでも映像が出たドロップキックに関しては、相手に当たる直前にバネが伸びるような強烈な当たり方だった。


そして、遂には、中々投げ切れなかった上谷をブレーンバスターで投げ切ってしまったのである。


フワちゃんの技でドッと沸き立つ会場の盛り上がりは、まるでセミファイナルかメインイベントかというくらい、最高潮に達しようとしていた。


それでも、上谷が反撃に転じる。


キツい角度から逆エビ固めを極められて万事休すと思われたが、フワちゃんも何とか自力でエスケープ。


しかし、直後に上谷と妃南がドロップキックを浴びせると、最後は上谷がファイヤーバードスプラッシュを決めて、フワちゃんから3カウントを奪取。


フワちゃんのデビュー戦は、黒星に終わった。


試合後、上谷と妃南がマイクを握る。

上谷「フワちゃんデビューおめでとう!フワちゃんは、立派なプロレスラーだよ。スターダムからデビューしてくれてありがとう。」

妃南「デビューおめでとうございます!私、JKの中で人気のフワちゃんと対戦できて嬉しいです。明日学校で、フワちゃんが強かったことを皆に伝えたいです!」


続いて、フワちゃんもマイクを握ってコメント。

フワちゃん「やられた、負けました!すいません、負けた~、悔しい!皆さんありがとうございました!マジで、葉月さんもありがとうございました!マジで、生意気かもしれないけど、これがアドレナリンか…!頭も首も肩も腰も全部痛かったけど、楽しかったよね~。強かったなあ」

「プロレス大好きかもしれないです!わたしも、本物のプロレスラーになりたいと思った。本当にやりたい。『いいお話でした』って(テレビで)編集されて…、それで終わりじゃないです!本当にプロレスラーになりたいと思った!もう一回やらせてください!!自分の必殺技もほしい!まず、今日の試合を反省して、フィードバックしないと…」


デビュー戦後に「自分の必殺技が欲しい」とコメントする前向きさは、次回以降の参戦も予感させた。
実際、これで終わりになるのは勿体ないと思わせる、まさに逸材だった。


試合後、葉月が観客に向けて「フワちゃんの試合、また見たいですか!?」と聞くと、会場中から割れんばかりの拍手。
試合に対する評価は、この大きな拍手に詰まっていたような気がする。





まとめ

大盛況のうちに終わった、フワちゃんのプロレスデビュー戦。


過去に芸能で有名になり、プロレスデビューした人は多くいたけれど、フワちゃんはその中でもトップオブトップではないだろうか?

試合後の関係者によるコメント然り、会場の拍手然り、贔屓目抜きで高い評価を得た事実こそが何よりの証左である。



「わたしも、本物のプロレスラーになりたいと思った。」

試合後にフワちゃんが述べたコメントの一節だが、私自身、その発言に対しては否定的だ。

何故なら、今回の試合で、彼女は既に本物のプロレスラーになっていたのだから。


数ある芸能人プロレスデビューの企画モノではなく、一新人選手として普通に通用するレベルまで持って行ったフワちゃんは、間違いなく、本物のプロレスラーだ。
個人的に、デビュー戦直後に番組収録へと向かうハードスケジュールは、巡業で連戦連戦のプロレスラーの姿に重なるものがあった。


試合前から否定的な意見も見られた今回のプロレスデビューだったけど、否定的な方にこそ、オンエアで試合を見てから判断してほしい。

それくらい、凄いものをフワちゃんは見せていたから。



試合なんて、実際に見てみないと分からないし、評価も出来ない。
私は、素晴らしいフワちゃんデビュー戦を見て、その事を改めて実感させられたのでした。


叶うなら、また試合が見たいです…!


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