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誰かの熱に気持ちが動かされたこと~2022.9.21『N-Innovation』新宿FACE大会~

はじめに

2022.9.16、私は後楽園ホールのロビーにいた。

この日はプロレスリング・ノア観戦。


オープニングからメインまで充実感のある大会が終わり、退場しようとホールのロビーにいたところ、フォロワー様に声をかけられた。

「9.21、新宿大会行く?」


その日は新宿FACEで、NOAHのJrヘビー戦士による『N-Innovation』が行われる予定だった。
ただ、私は気分的・金銭的な面で、今回は配信視聴で良いと思い、チケットは押さえていなかった。

気持ちを固められていない私は、フォロワー様に「新宿大会、行かれるのですか?」と訊きかえした。

「行く。もうチケット押さえてるし。」


フォロワー様とは数年来の付き合いになるが、「この日の大会、行く?」と訊かれたことはあっても、"行こうよ"という強めのニュアンスで誘われたことは無かった。
今振り返ると、そんなフォロワー様が強めに誘ってきたということは、きっと何かあるんだと感じ取ったんだと思う。


「分かりました、行きます!」


気付けば私は、『N-Innovation』のチケットを購入していた…。


人を巻き込み、伝わる熱量と発信

迎えた大会当日。

2022年に発足したNOAHのJrヘビー戦士によるブランド・『N-Innovation』。
同ブランドとしては、今年6月以来、3ヶ月振りとなる新宿FACE大会だったが、前回の前売完売に引き続き、今回も満員マークの盛況っぷり。


NOAHの場合、選手個人の発信が、とかく弱いと言われがちだ。

『N-Innovation』発足から僅か数カ月で進出した両国国技館大会(2022.4.29)も、正直内容としては物足りなさを感じたし、盛り上がりに欠ける面は否めなかった。


ただ、そうした反省を踏まえてか、両国大会以降はNOAHの本隊Jr選手達が、毎週地道にTwitterのスペースやInstagramで配信を実施するなど、選手の発信が確実に増えた。

今大会も、各会場で試合後にチケット即売会を開催するなど、直近に控えた一つの目標(新宿大会完売)に向けて、本隊Jrが奔走した。
前述のように、私も即売会でチケットを購入したが、もし行われていなかったら、買うキッカケも掴めぬままで、当日足を運ぶことは無かっただろう。


そして、ファンもまた、発信で誰かの心を動かしている。

思えば、6月の新宿大会も、今回の新宿大会も、NOAHファンの発信やラブコールに私の心が動かされて観戦を決めている。
選手やファンの熱量は、確実に伝播しているものだ。



ブランドとして見えてきた形

両国大会以降に変化したのは、選手の発信だけではない。

『N-Innovation』というブランドで提示する、中身の濃さだ。

『矢野安崇vs藤村加偉』
金剛 vs PERROS DEL MAL DE JAPON


タイトルマッチに加え、遺恨・因縁清算の要素も大きかった6月の新宿大会と違い、今大会でのタイトルマッチは無し。
試合数も全5試合と若干少なめだったが、今回は【今のNOAH Jrだからこそ魅せられる内容】が詰まっていた気がする。

その根幹を担っているキーポイントだと私が感じたのは、第3試合の『鈴木鼓太郎vs近藤修司』、セミファイナルの5WAYマッチだった。


『鈴木鼓太郎vs近藤修司』では、ヘッドロックで近藤を締め続ける鼓太郎に、腕攻めで反撃する近藤という、全体的に静の場面が目立つ内容に。


それでいて、互いに一歩も譲らない姿勢とテクニックの数々…。
恐らく、タイトルマッチか、『N-Innovation』というJrに寄ったコンセプト興行でないと、中々見られない内容だった気がする。

試合は30分ドローという結果に。
NOAH所属ではないものの、2人の試合はNOAH Jrにとって指針の一つを提示していたかのような深みがあった。


一方、セミファイナルで行われた5WAYマッチは特色も内容も対照的であった。


ドラゴン・ベイン、アルファ・ウルフ、エクストリーム・タイガー、ニンジャ・マックといった外国人選手による、エアバトルの数々。


NOAHの本興行でも、外国人選手同士のシングルや3WAYは度々組まれてきたが、今回はそのメンツにアレハンドロが割って入る格好に。

これまで、Jrの外国人選手の試合は外国人選手だけでカードが固められる傾向にあった中、今回のアレハンドロの存在は、試合におけるスパイスになっていた。
スーパーな外国人選手がひしめく中、編隊飛行や連携技にも違和感なく対応していたアレハンドロが、私には頼もしく見えた程だ。


『鼓太郎vs近藤』が"静"ならば、5WAYマッチは"動"。
ただ、この対照的な2試合は決して相反することが無く、寧ろ、『鼓太郎vs近藤』が錨の役割を果たしている事で、5WAYのような自由に動ける試合も活きている印象を受けた。


まとめ

全5試合というコンパクトなラインナップも、熱量と内容が色濃かった今回の『N-Innovation』。


ブランド発足当初のつれない反応だったり、4月のジュニアの両国で色々言われたりしたところから、地道に熱を生んでいるのは成長の証だと私は感じている。

ジュニアだけで熱量を生み出し、その熱がファンにも伝播して、ファンも周囲に熱を伝播させている。
そういった点でも、今回は原田大輔の欠場もありながら、Jrヘビー級のみで固められたのはデカい。
(6月の新宿大会では欠場者が出た事もあり、清宮海斗、小島聡が参戦)


ただ、課題があるのも事実。

個人的に、ユニット間のパワーバランスでスティンガーが一つも二つも抜けている状況は否めないので、その対抗馬が台頭するか否かも、今後のJrヘビー級戦線において重要ではないかと考えている。
(他のユニットが不甲斐ないとかでは決してなくて、単純にスティンガーが強すぎる…。)


今のNOAH Jrで広報となっているのが本隊Jrなら、内容面で柱になっているユニットはスティンガーだ。

ユニット抗争でも対等に対峙できる『PERROS DEL MAL DE JAPON』は別格として、本体Jrや『金剛』が、スティンガーという絶対的強者を退けられるくらいの内容と結果は欲しいところ。


その為にも、9.25名古屋ビッグマッチで組まれた2大GHC Jr王座戦は、本体Jrがスティンガーを超えられるか否かが問われている。
(『HAYATA vs YO-HEY』、『小川良成&クリス・リッジウェイvs小峠篤司&吉岡世起』)

スティンガーという壁は高いが、この壁を超えた時、NOAH Jrは今以上に飛躍するのではないだろうか。

私は、その瞬間が訪れる事を、とても心待ちにしている。


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