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『WRESTLE MAGIC』を生観戦した感想を振り返る


はじめに

NOSAWA論外「多分なんだけど、『MONDAY MAGIC』より『WRESTLE MAGIC』の方が楽しいと思うんだよね。さあ、ホントに『WRESTLE MAGIC』、成功できるかな?出来ないかな?みんなホント、俺に騙されてくれ!」


2023年秋~冬にseason1(全5大会)、2024年4月にseason2(全4大会)が開催された、プロレスリング・ノアの『MONDAY MAGIC』。

「NOAHの熱い戦いを連続ドラマのように多くのプロレスファンの皆様に楽しんでいただく」というコンセプトの下、月曜夜に開催された同ブランドでは基本的に全カードが当日発表。
参戦選手や試合数、試合形式すらも殆ど分からない中で行われる実験的な大会だったが、結果的に全9大会が満員。season1初回を除けば前売段階で全席完売をマークする盛況だった。


そのseason1最終回にて発表された、2024.5.4両国国技館大会・『WRESTLE MAGIC』


『MONDAY MAGIC』の主戦場だった新宿FACEから、(後楽園ホールを挟まず)キャパシティが約10倍ほど多い両国国技館に挑戦する試みは、結果として観衆3,512人をマーク。
全対戦カードの半分にあたる6試合が当日発表だったにもかかわらず、『ジェイク・リーvs丸藤正道』がメインだった前年の両国ビッグマッチの集客を上回り、PPVについても好調だったのだという。


そんな『WRESTLE MAGIC』を生観戦して、私自身感じたことを書き綴ってみました。

存分に騙されました!!(最高!!)


①「俺に騙されてくれ」という常識破りの伏線

今回のWRESTLE MAGICで、私自身感じたのは、伏線や定石に囚われないサプライズだった

YouTube無料配信の第1試合枠に投入された『ニンジャ・マックvs石川修司』はセミファイナルで組まれてもおかしくない豪華カードだったし、


2020年7月より無期限休業に入っていた熊野準が、身体を絞って1夜限りの電撃復帰を果たしたり、


春先にGHCヘビー戦線から後退していた感のあるジェイク・リーを全日本プロレス時代に絡みのあったTAJIRIと師弟タッグで登場させたり、


あっと驚く様々な仕掛けは両国国技館でも健在だった。


特に、セミファイナルでGHCタッグ王座に挑戦したオープンチャレンジャー・テンコジも入場曲から両国中が沸き立つ様子を見て、2020年以降【全カード当日発表】のコンセプトで開催してきた『REBOOT』⇒『MONDAY MAGIC』の系譜に連なる、「入場曲で会場が盛り上がる」場に立ち会える共犯感に凄くゾクゾクした。


当日に発表された6試合や2大タッグ王座戦のXは、対外的なキャッチーさを前面に押し出したseason1、NOAHの通常興行との相互性を高めるseason2を経て、双方の傾向をミックスさせていたように思う。


今回のカードの中でも私自身印象的だったのが、第6試合で組まれた『拳王vsYAMATO』だった。


season2では大会中盤に謎の動物による5.4参戦予告が流され、出てきた動物が毎回変わったことから、その相関性を探そうと様々な予想がプロレスファンから飛び出した。


それとは別に、season2のEP4にて、拳王が新日本プロレスのヤングライオンを両国で迎撃すると宣言。NOAHの両国大会当日は新日が福岡ビッグマッチだったこともあり、ヤングライオンは出るのか否か注目された。


その結果、5.4両国で導き出されたのが、DRAGON GATEを象徴する存在・YAMATOと拳王によるシングルマッチである。


拳王の相手はヤングライオンでもなければ、動物との相関性も浮かびづらいYAMATO。

ただ、冒頭で紹介した論外の「俺に騙されてくれ」発言は伏線だったんじゃないかと私は感じていて、プロレスファンが推測しがちなストーリーや脈絡を無視して唐突に組んだカードでも、『MONDAY MAGIC』から続く「何が起こるか予想できない」流れには沿っている。

「本命があって、その別パターンだったんじゃないか」と予想してた方もいたけれど、(私も含めた)そういう予想すら引っくり返すところに、不信を通り越して爽快感すら覚えた(笑)


一方で、このシングルと対照的だったのが第3試合で組まれた『マサ北宮vs杉浦貴』だ。
2018年9月のGHCヘビー級王座戦や、2020年裏イッテンヨンのセミファイナルなどで激闘を繰り広げてきた、サプライズとは縁遠い鉄板カード。
しかし、ノンタイトルで短い時間であっても、2人は内容の濃さと満足度の高さを抽出して見せた。


『拳王vsYAMATO』がseason1のサプライズに導かれる存在ならば、『マサ北宮vs杉浦貴』はseason2の系譜に沿った一戦。
こうしたブランドの特色もビッグマッチに上手く落とし込み、総じて破綻がない印象を受けた『WRESTLE MAGIC』だった。


②両国になって痛感した、気持ちの前のめり

『WRESTLE MAGIC』を見終えて楽しかったと感じた反面、個人的に一番後悔したのが「もっと前の席で見ておけば良かった」ということだった。


この日は2階席から観戦していたけれど、前述したサプライズにどよめきは起こっても、試合中の2階席からの声援とかは幾分か少なかったように感じた。
だからこそ、セミファイナルに登場した小島聡の「いっちゃうぞバカヤロー」で観客席が1つになる凄みも実感…。


やっぱり、『MONDAY MAGIC』ないし『WRESTLE MAGIC』は観客がガンガン声を出して、拍手を鳴らして主体的に楽しむ、観客参加型コンテンツだったと実感させられたのだ。


今回の動員が増えたことを、色んな所の動員数をカウントしている人が論評していたけれど、結局のところ、現地にも行かずPPVも買わない立場から論評できる箇所には限界があって、観客参加型コンテンツの前には勝てないことも改めて実感した。
言い方はアレだけど、金を払っている人が満足感にありつけるところとか。


そういう意味でも、『WRESTLE MAGIC』は現地ないし配信で参加したからこそ、サプライズを共有し合い、楽しむ空間が形成されていたと思う。


③「お前じゃ無理なんだよ」⇒海斗コールに見たドラマ性

色々な魔法がかかった『WRESTLE MAGIC』の中でも、私自身一番忘れられないシーンがあった。

メインイベントで、イホ・デ・ドクトル・ワグナーJr.に勝利してGHCヘビー級王座を戴冠した清宮海斗。


メイン後に清宮がマイクを握る最中、客席にいた男性から「お前じゃ無理なんだよ~!」という野次が飛んだのだ。


その直後、客席からは自然発生的に海斗コールが巻き起こり、野次を断ち切る空気が形成されたのである。


私自身、この客の野次に関して支持する気は一切ないし、両国メインに相応しい激闘を見せた直後の清宮に対して浴びせる言葉ではなかったと思う。

ただ、そんな野次が飛び出しても、ファンが迷わず声援で清宮を援護射撃して雰囲気を元に戻す光景を見た時に、主催のNOAHも、プロデューサーのNOSAWA論外も想定していない魔法が両国国技館内にかけられたと私は確信した。


連続ドラマのようなコンセプトの下の生まれた『MONDAY MAGIC』シリーズで、その劇場版的な立ち位置にある『WRESTLE MAGIC』の最終盤。
プロデューサーも予想できない、ドラマチックなワンシーンの爆誕は、選手と観客で一体となって作り上げた『MONDAY MAGIC』の盛り上がりを象徴していると言えないだろうか?


思えば、season1のEP4(2023.11.27)でGHCハードコア王座戦が行われた直後の清掃作業でも、清掃にあたるレフェリーやスタッフを後押しするような声援が自然発生していた。
プロデューサーを務める論外も、専門誌のインタビューに触れるほど好意的評価を示していた名シーンだったのだが、個人的にはその時に近い観客の後押しを実感したのである。


まとめ

近年のNOAHにとって、両国国技館はチャレンジと切り離せない会場だ。

私がプロレスを見始めた2015年以降、(鈴木軍侵攻期の2015~2016年を除いて)横浜文化体育館やディファ有明がビッグマッチの主戦場になっていたNOAHにとって、2018年の丸藤正道デビュー20周年記念大会が久々に両国国技館大会だった。

その後、親会社がリデットエンターテインメントだった2019年11月にNOAH単独で両国国技館大会を開催。
今のように大会場でのビッグマッチが打てなかった当時のNOAHにとって、『清宮海斗vs拳王』にメインを託した両国国技館大会は再浮上を狙うチャレンジでもあった。


コロナ禍による興行中止(2020年秋)を経て、2年半ぶりの両国国技館は2daysでの開催に。
中でも2days初日は、同年に発足したばかりのJr.ヘビー級選手によるブランド『N-Innovation』として開催され、出場選手もJr.ヘビー級のみという大チャレンジとなった(2022.4.29)。

結果だけ見れば動員も非常に苦戦したし、組まれた対抗戦などの試合でも惨敗を喫したが、両国大会後にJr.本隊の選手達がブランドを広めようと腐心した姿や、その後の『N-Innovation』新宿FACE大会が盛況を迎えた事を振り返ると、このチャレンジは決して無駄にはならなかったと私は思う。
また、コロナ禍以降来日が叶わなかった外国人選手達が、久々にNOAH参戦を果たしたのも2022年の両国ビッグマッチからだった。この時出場していたドラゴン・ベインやアルファ・ウルフはGHC Jr.タッグ王座、ニンジャ・マックはGHC Jr.ヘビー級王座を獲得するなど、今のNOAHに欠かさない存在となっている。


そして、今回の『WRESTLE MAGIC』。

当日カード発表が基本となっている『MONDAY MAGIC』ブランドを掲げての、両国国技館挑戦。
今回の両国は全12試合中、ナショナル王座を除く5大GHC王座戦+話題を席巻する女子プロレス団体『マリーゴールド』の計6試合を発表して最低限の保険はかけていたものの、終わってみれば総じて満足度の高い内容に終わった。


2024年秋にはseason3開催も決定するなど、NOAH本編と不定期開催の『MONDAY MAGIC』を並走させていく流れは今後定着しそうな気がする。


仮にもし、サプライズや外部参戦を大量に投入するseason1の流れから両国国技館に進出していたら、『WRESTLE MAGIC』は団体の垣根を越えるオールスター戦のような様相になっていたのかもしれない。
ただ、season2では一転してゲスト参戦を絞り、NOAHの本興行と相互に結び付く路線に重きを置いたことで、『MONDAY MAGIC』シリーズでGHC王座戦をガッツリ組み込む流れを違和感なく出来たと思うし、単なる一夜限りの打ち上げ花火に終わらなかったことも大きい。


『MONDAY MAGIC』シリーズにおいては、「豪華すぎるから、NOAHの本興行に行けなくなってしまうんじゃないか?」という指摘も少なくなかったし、実際私も「そうだよな…」と納得してしまう部分が否めなかった。
でも、今ならば、「『MONDAY MAGIC』がキッカケでNOAHの本興行が気になった」という入口も十分確保できているだろうし、サプライズと、通常興行で再現できる現実性の2つを併せ持てるようになった印象がある。


NOAHファン以外の方とお話していても「『MONDAY MAGIC』に行ってみたい」という声は聞いたりするので、ブランドが定着しつつあるんだなあと実感した。

今のところ、夏開催の『N-1 VICTORY』終了後の秋にseason3が始まる予定ですが、NOAHの秋~冬は毎年恒例行事とかも無い分、『MONDAY MAGIC』で話題を取りに行くんじゃないかと私は予想してます。


両国国技館、騙されました!最高でした!ありがとう論外!!!


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