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プロレスリングBASARAの『宴』が再開した事について


はじめに

2020年春から新型コロナウイルス禍に突入して、かれこれ3年以上の月日が経過した。

この間の私は、プロレスから離れることなく会場にも足を運び続けていたが、"聖地"後楽園ホールでも2年以上にわたって声出し応援が禁じられるなど、プロレス団体もプロレスファンも長い苦しみの淵に立たされていたと感じている。


2022年夏頃より後楽園ホールでも声出し応援解禁の動きが見られ始め、2023年1月の新日本プロレス・東京ドーム大会以降は、声出し応援が各会場でも復活していった。


声出しが禁じられた時期の私は「声出し応援出来る環境が、必ずしも絶対とは思えない」という考えであったが、解禁以降は「声出し応援の空間無しでのプロレス観戦が考えられない」と感じる程には、そのスタンスを改めざるを得なかった。


そんな2023年、私の中で忘れられない出来事になりそうだと感じた興行がある。
プロレスリングBASARAの『宴』だ。


DDTプロレスリングで開催されていた、全席自由で飲み放題形式で行われる『酒場プロレス』を、プロレスリングBASARAが引き継ぐ形で行われた同興行。
全部で5~6試合程が組まれ、缶交換制のアルコール飲み放題が付いてくるのが同興行で最大の特徴だ。しかも、メインイベント終了後には選手とリング周辺で乾杯も出来るのだから、これで約5,000~6,000円は太っ腹だと言わざるを得ない。


そんな唯一無二の強みがBASARAの1ブランドとして確立されていたのだが、2020年春の新型コロナウイルス蔓延に伴い、『宴』は活動休止状態に陥る。


BASARAの新木場1stRING大会では、南側の雛壇席以外はリングを囲むようにして白テーブルが置かれ、各々がスタンディング形式で酒を飲みながら観戦するのがコロナ禍前は当たり前の光景だった。
しかし、『宴』の休止に伴い、東西にはパイプ椅子が設置され、いつしか当たり前だった風景は忘れ去られつつあった。


BASARAに関しては、コロナ禍であっても、会場ルールや条例、国内の感染状況を加味しながら【マスク着用なら声出し応援解禁】、【紙テープ解禁】を都度実施するなど、日本プロレス界では比較的早い段階から、コロナ禍で禁じられたルールの解禁を進めていた印象の強い団体だ。
それでも『宴』の解禁については、長らく慎重な姿勢を堅持していたように思う。


そして、2023年8月29日。

最後に行われた『宴』から約3年5ヶ月が経ったこの日、遂に『宴』が再開したのである。


SNSで再開の発表がなされた時、ファンからの反応は上々で、「この日を待ちわびていた」という反応で溢れた。

それだけに、チケットも争奪戦になるんじゃないかと思い、今大会をスルーしていた私がいたけれど、結局この日のチケットを押さえてしまった。

行くと決めた理由は単純だ。行きつけのバーで飲んでいたら、偶然選手の方がやってきて今大会の話になり、流れでチケットも購入できたからだ。
こういう飲み屋営業の光景や大会との出逢いも、コロナ禍に入ってからは減りつつあっただけに、ついつい財布の紐も緩んでしまった。


コロナ禍以前の活況が戻ってきた、新木場1stRING

大会当日。

定時に仕事を終えて、張り切って会場の新木場1stRINGへ向かうと、開場30分以上前にもかかわらず、既に10人ほどがチケット引き換えなどで並んでいた。

私の買ったチケットはスタンディング席だったこともあり、配布される整理券を早めに入手して、適当な位置で観戦しようと考えていたのだが、偶然会場でフォロワー様と一緒になり、空いていた白テーブルを複数名で囲むことになった。
コロナ禍前なら、1人観戦だと中々行けなかったテーブル席で、初めて試合を見ることになった。こうした出逢いにはつくづく感謝しかない。


この日は前売の段階で指定席(※試合中にスタンディング席への移動も可能)が完売していて、北側に自由席も設けられていたのだが、座席に座る観客は意外な程少なかった。いつしかリングサイドの周辺は、観客でひしめき合っていたのである。


試合が始まると、私が立っている所から5歩以内の距離にあるリング上で、迫力ある試合が展開されていった。


選手がレフェリーを買収する瞬間にも、盛り上がりが止まらない場内(笑)


シングルとタッグの2大王座戦も、どちらが勝つか分からないシーソーゲームに会場中の観客達が声を出し続けた。


缶チューハイなどが飲み放題という事もあり場内の熱気も凄まじかったが、これもすべて、試合自体の盛り上がりが素晴らしかったからこそ。

会場の熱気は、決してアルコール補正などではなく、今ある空間を全力で楽しもうとする観客によって生み出されていた。
この光景と空間はまるで、コロナ禍を耐え抜いたファンに捧げるプレゼントのようにも感じられたのだ。


メインイベントの『塚本拓海vsFUMA』で勝利を収めたFUMAは、試合後に乾杯の音頭を取ると、リングサイドに集まった観客達と乾杯を交わしていった。


この乾杯の光景と、興行終了後の観客達が皆笑顔だったことこそ、今大会に充満した多幸感のようなものを象徴していたと言える。

嗚呼、この時が来る事を、私は心の底から待ちわびていたのかもしれない…。


まとめ

前述のように、コロナ禍から暫くして、声出し応援が再開されたり、紙テープの投げ入れが可能となるなど、厳しいルールの中でもプロレス界は着実にコロナ前の風景を取り戻そうと前進してきた。

でも個人的には、アルコール飲み放題の『宴』が再開された今大会こそが、コロナ禍以降のプロレス界で強い一歩を踏み出す出来事になったのではないかと考えている。
厳しいルールを守ってきた団体や観客による不断の努力と、数多くの苦境を乗り越えてきたからこそ、この空間が戻ってきた幸せは何よりも大きい。


ただ、今回の事と同じくらい大事なのは、「今もなお、コロナ禍は終わっていない」という事実である。
2023年に入って以降、プロレス会場でのマスク着用や、マスク不着用での声出し応援は観客個人の任意とされているケースが殆どではあるものの、だからといって新型コロナウイルスが無くなった訳ではない。
欠場理由に【濃厚接触】や【陽性】などのワードを聞かなくなっていても、医療関係者のツイートからも罹患者は増えているという話も見聞きする。

だからこそ、感染防止対策には尚の事留意する必要性があるし、感染者が増えれば今回の『宴』のような光景だって見られなくなる可能性が0とは言い切れないと私は考えている。


なので、この一件を以て私は「コロナ禍は終わった」などとは思っていない。
でも、緊急事態宣言が出された時期に比べれば、プロレス界における対応もルールも確実に前進しているし、今回の件が喜ばしい出来事には変わりない。

いつまでも、この素晴らしい景色が見られますように…🛐
今回の『宴』を見終えて、私はそんなことを感じたのでした。

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