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福江島の静かな時間が部屋に流れ込む"hotel sou"
福江島を訪れた。島で新たに事業を始めた知り合いに会いに行くことが目的だったけど、潜伏キリシタン時代を象徴する独特な教会建築、そして何よりこのhotel souに泊まるのを楽しみにしていた。
hotel souは福江港からほど近く、商店街から入った通りにある。近年福江島は移住者が増えて、従来の観光スポットに加え、島の魅力を発信するコンテンツがちらほら誕生し、観光客も増えつつある。このホテルもその一つだろう。昨年コロナ禍にオープンし、複数の建築雑誌で取り上げられ、コロナが落ち着いたら泊まりに行きたい!という人は少なくなかったと思う。
このホテルは長崎出身の代表2人が、島を冒険する非日常さ、廃墟のようなホテルで過ごす非日常さを提供したいという思いから誕生したという。デザインはもちろん?谷尻誠氏率いるsuppose design。リノベーション×ホテルは、尾道のU2同様に、彼らの持ち味が存分に発揮される分野である。
1.秩序だったディテールが整然とした佇まいを生み出す
毎回彼らの空間で感じるのは、整然としていてとにかく美しい。家具の配置、ピンスポット照明の絞り具合や自然素材と人工物との混ざり合いなどが絶妙である。そして何より空間を決定づけるディテールの完成度が高いことがその佇まいの理由だろう。なるべく細く、適度なちりを保ち、それら統一されたおさまりの指針が見事に守られていて、勝手に点検して楽しんでしまう。
2.内と外、過去と今をデザインで繋ぐ
建築のコンセプトは「共存と調和」。壊すか残すかではなく、自然か人工かではなく、その間にある「共存と調和」の魅力を引き出したかったそうだ。確かに、元々のサッシラインの壁は手ではつったような荒々しい断面が確認できる。内側にずらした新たなサッシとの隙間はベンチ状になっていて、島のゆったりとした時間を感じることができる、何とも不思議な中間領域だ。そして過去の建物の表情をなるべく残し、素材や取り合いを十分に配慮しながら新しいデザインが加えられ、見事にそれらが調和している。これぞリノベーションならでは、という感じ。
3.アップデートしていく余白を残している
オーナーの方が最近導入した幾つかの設備機器を紹介してくれた。ベッドサイドに置かれたBALMUDAのランタンとbluetoothスピーカーは、何とも機能的で空間全体に馴染んでいる。それ以外にも温度や湿度など快適に過ごすために後から装備される機器類は、機器そのもののデザインも十分吟味されているが、空間に悪さをせず全体に調和している。すなわち運用時におけるアップデートを見越しそれらを受け入れるために、余白を残したデザインになっているのだろう。
このホテルの取り組みは、時間がゆっくり流れる福江島だからこそ生きるプロジェクトだ。もっと便利なアクセスのアクティブな街に同じ空間があっても同じ体験はできなかったと思う。島の過去と今、内と外が混ざり合う空間でゆっくり自分に向き合うことができた。