豊かな自然が生んだ曲線美"エリエル・サーリネン"
フィンランドのモダニズム建築家の巨匠といえばアルヴァ・アアルト。みんなアアルトが好き、私も例にもれず好き。しかしこの国でモダニズム建築の礎を築いたのは、エリエル・サーリネンだろう。もう残り僅かで開期を終える汐留の展示会でその真実を思い知る事になった。
エリエル・サーリネンはフィンランドに生まれ育ち、ヘルシンキ大学の仲間と立ち上げた設計事務所で手がけた、1900年パリ万国博覧会のフィンランド館が好評。その後のコンペではフィンランド国立博物館、ヘルシンキ中央駅など祖国の主要プロジェクトを勝ち取った。
私が気づいたことは、
1.椅子から博物館までスケールが違ってもアプローチは一緒
サーリネンは全てのデザインを一回り大きな枠組みから考えるという。椅子は部屋から、部屋は家から、家は周辺環境から。そのアプローチが一緒だから何を作っても、彼のデザイン性が毛細血管のように流れ渡っている。革新を続けながらもこの一貫性が人々に安心感を与えるのかもしれない。
2.スタイルが変わってもフィンランド愛は永遠
初期の作品には、フィンランドの民族文化が建築の所々に感じられる。その後、湖畔にアトリエ兼自邸のヴィトレスクを設計。そこから駅、博物館と手がける建物のスケールが大きくなり、アメリカに渡った後もビルのコンペや教会、美術学校の設計に参画、モダニズム建築へと発展していった。それでも彼の作品には一貫してフィンランドへの敬愛が存在し、フィンランドの独立への強い想いが感じられる。照明器具やファブリック、ヘルシンキ中央駅のアトリウム空間にも、ホッコリ温かい何かが内在してる。
3.内側から滲み出る曲線が機能的かつ洗練されてる
彼のデザインに曲線が多用されている。それは外観の装飾ではなく、内部プランの機能から派生したものが多い。コーナーの居室空間や階段室、開口部の形状も内部への光の入り方を考慮したデザインになっている。意図して外側だけを化粧せず、結果的に外に滲み出たものが何故か美しい。これって人も一緒?
13歳でアメリカに移住し、お父さんの背中を見て育ち、フィンランドの文化を受け継いで進化させたエーロ・サーリネンもまた素敵。この展示会を見終わると、何故か親戚の一人のように息子の活躍が嬉しい。