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ブランド店のファサードに建築技術の進化を見る"ルイ・ヴィトン銀座並木通り店"

お昼の時間にお弁当を食べながら新建築の雑誌を見て、時間ができた時に訪れる建物をピックアップするのがルーティンだ。2021年4月号の表紙を飾っていた何ともインパクトのあるファサードの建物は、銀座だからいつでも見に行けるものと思い、時間が経ってしまった。

銀座を訪れると、有名ブランドの有名建築家たちによるテクニカルな意匠の競演を楽しむことができる。ファサードデザインは各ブランドのアイデンティティを体現する役割を担いつつ、最先端の建築技術を駆使した挑戦的なデザインが多く見られる。それはうねっていたり、重なっていたり、金属やガラスが柔らかく浮遊していたり‥。過去に建築家の内田祥哉氏が建物のコーナーをどう設えるか、という文章を読んだが、もはやコーナーが存在しないような建物が増えてしまった。ある種、銀座を歩くとその時代の最先端の建築デザインに触れることができる。
東京タイプディレクターズクラブのギャラリーを訪れた後、並木通りに昨年リニューアルしたルイヴィトン銀座並木通り店を訪れた。時間もお金もないので外観のみで店内には入っていないが・・。

こちらの建物の設計は、全国にあるルイヴィトンの店舗を多く手がける青木淳建築計画事務所。内装はイタリアの建築家ピーター・マリノ氏が手掛けた。
銀座並木通り店は、1981年国内初の直営店としてオープンし、2021年3月にリニューアルオープンした。

最新の銀座並木通り店を含め青木淳氏の代表的なルイヴィトンの店舗を紹介する。

1.ダイクロイックフィルムが瑞々しさを実現

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青木淳氏が提案するのは「水の柱」。これを実現したのは、カーブした数種類の大判ガラスとアウターガラスに使用されたダイクロイックフィルムだ。ダイクロイックフィルムは特定の波長の光を反射するため、角度によって様々な表情を生み出す。内装もピーターマリノ氏が海や水を想起させる曲線を多用したデザインが売り場を彩る。並木通り沿いで言うと視認性が高く、建物ボリュームもそれなりにあるが、ゆらゆらと波打つ水の柱となっている為、圧迫感は全く無くむしろCGを見ているような感覚を覚える。

2.レース生地のような柔らかな膨らみ

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2013年に完成した中央通り沿いの松屋銀座のファサード。建築はどこまで柔らかくなり得るのか、果敢に挑戦した作品だ。銀座がアール・デコ様式の街であった歴史をテーマにデザインが構成されている。幾何学的な繰り返しで共通点する、江戸の伝統的な文様「江戸小紋」から「アール・デコ」、ルイヴィトンの代表的なシリーズである「ダミエ」へと歴史が繋がれている。文様は微妙に柔らかな曲線を描いている。白いこともあり、触ると優しく押し返すウレタン材のような錯覚を覚える。夜は内部の照明が曲線の隙間からこぼれ出て、その模様を象徴的に浮かび上がらせる。

ファサードデザインは年々洋服や鞄のデザインに近づきつつある。曲がったり、編んだり、重なったり‥。その進化を楽しんでいきたい。

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