木造組積とネット、隙間が創造を生む"箱根彫刻の森美術館 ネットの森"
子どもの頃箱根彫刻の森美術館へ行き、シャボン玉のお城と呼ばれる透明のジャングルジムのような体験型アートの中に入ったまま出られなくなってしまい、知らない子どもに助けてもらってから数十年。
箱根彫刻の森美術館は色々進化していた。特に「ネットの森」は建築雑誌で見ていた為、イメージはあったが、実物の空間は想像を超えるものだった。
設計は手塚建築事務所。500本もの木材を積み重ねている。木材と子ども向け用途の建築物には定評がある。
1.伝統と最先端の技術が織りなす木組
構造は横浜赤レンガ倉庫の設計でも有名な今川憲英氏。氏というか大学の授業で教わっていたので先生。金物を一切使わない伝統的な木組を手本とし、特殊なジョイント工法。この量の組積というのもすごいが、さらにかなりの重量のネットを支えている。
2.ネットの幾何学模様と発色が圧巻
内部のネットは造形作家の堀内紀子氏。以前は海外で染色を学びテキスタイルデザインをしていたそう。道理でその計算された幾何学デザインとナイロンロープの発色が素晴らしい。屋外展示の場合、経年の劣化で色落ちしやすいが、おろしたてのメッシュバッグのような鮮やかさ。天候や時間によって変わる光の入り方で、内部の色の見え方も変わる。それらも含めた体験アートなのだろう。
3.子どもが動かして、考えて完成するアート
外部の組積も内側のネットも隙間がある。隙間は空間に素晴らしい変化を生み出し、子どもたちに創造力を与える。自分の手足の荷重のかけ方でネットが動き、思うように動けない。どうすればよいか考える。もしくは偶然生まれたネットのカタチや色の組み合わせを楽しむ。外に目を向けると木材の隙間から外部の緑が臨める。
大人は中に入ることができないため、大抵子どもからどこにいるか探すよう指示を受ける。休むタイミングを失う。