目線を変えて都市を見る"TOTOギャラリー間 How is Life?".
大学時代から頻繁に通っていた「TOTOギャラリー間」
世界中の最前線で活躍する建築家や巨匠まで、毎回興味深い展示会を繰り広げている。
乃木坂、というとほぼこのギャラリー以外に行くことがなかった。
現在開催中の企画は「How is Life?地球と生きるためのデザイン」。塚本由晴氏、千葉学氏、セン・クアン氏、田根剛氏と錚々たるメンバーがキュレーターを務めている。
持続可能な社会の実現に向けて建築的アプローチで何が
できるか、というケーススタディは長らく各所で提案・検証されている。しかしながら状況は日々深刻になっている。
提案がどこまでリアリティがあるものか、社会に受け入れられるものかを冷静に見てしまう一方、あらゆる視点でチャレンジしていかないと、子どもたちの未来は明るくない。
自分が暮らしに関わる仕事をしているからこそわかる部分と学生時代の研ぎ澄まされていた?が鈍くなってしまった感性とその着眼点を今では多角的に捉えることができた。
1.自然と人間を取り持つTool Shed
都市森林プロジェクトを展開するユグチヨシユキ氏と東京工業大学の塚本研究室による道具庫の展示。これは実際に田んぼを整える鍬など出展プロジェクトの現場で用いられた道具が展示されている。
このような道具類は都市に暮らす人々は地方の歴史資料館などでしか見かけなくなっただろう。いかに効率的に自分に合ったサービスを享受できるかという点で都市部は急速に発展してきた。個々人がもつ道具は機械に代わりアウトソースされている。
しかし道具の寸法ひとつひとつを見ると人の身体や機能の延長として緻密に計算され作られてきたことがわかる。そしてそれは自然の力強さや繊細さに対峙するために自ずと形成された機能美が感じられる。
長らく人間と自然との間に介在する存在の道具たち。別々に発展してきてしまったが、今一度てあしの延長となら道具の価値を見直す機会かもしれない。
2.都市の浮遊Bicycle Urbanism
自転車関連の展示は予測できていたものの、つい前のめりに見てしまう。やはり計画は千葉学氏の事務所と研究室によるものだった。千葉氏本人もかなり本格的に自転車を乗る方であり、以前千葉事務所所員の人とツーリングをしたことがあるが本格的過ぎてついていくのに精一杯だった。
車、鉄道、歩行を前提に形成されていた都市のインフラと建築物。ここでは環境負荷低減のために「自転車乗りから見た世界」が見えてくる。
自転車を乗って改めて気付くのが都心部の起伏の激しさ。台地の安全性を高らかに唄う不動産やの気持ちがわかる。結構な登り坂が近づいてくると思わずそのために体力を温存しようと身体が働く。
そんな都心部の起伏を解析するマップ、それから自転車が主役となる南青山3丁目付近の大型模型が展示されている。細部までの作り込みが興味深い。
自転車に乗り続けていると重力が薄れて無になる時間がある。自転車は前述の道具と同様に身体の延長にあるものとも捉えられる。そんな自転車ライフは確かにもっと都市に浸透しても良いと思う。
3.茅葺普請の伝承
ギャラリー間の展示空間の醍醐味は都心でありながら屋根を活用した中庭があり、上下階の展示空間が中庭の階段で繋がっている動線だ。
今回中庭には塚本由晴氏らの苫編みによる逆葺が展示されている。
以前白川郷で目にした茅葺屋根の家屋群。持続可能を極めた建物の形態だ。全国では茅葺の技術や集落の人々で協力し合いながら葺き替えを行う結の存続も危ぶまれているという。そこで技術を伝承するための茅葺のワークショップが行われ、展示されているのがそのアウトプットだ。
解説資料は各展示エリアから取り出せるようになっていて、最後に表紙で挟み込み製本する仕組みになっている。この一連の体験もスマホ中心の生活において新鮮だ。
そして展示を見て、もうそろそろ人々は提案ベースに終わらず実践に向けて、寄り添う、歩み寄ることが求められルフェーズにきているのではないかと感じた。