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デンマーク発日本で培われた手仕事"BaBaBa セシリエ・マンツ展"
デンマークのデザイナー、セシリエ・マンツ氏は、フリッツハンセンやマルニ木工など多数のブランドで家具をデザインし、バング&オルフセンではスピーカーも手がける。
デンマーク王立芸術アカデミーで学んだ後に、ヘルシンキデザイン大学へ留学。フィンユール建築賞や家具賞など多数の名誉ある賞を受賞している。
そんな彼女の展示会が高田馬場のBaBaBaで行われた。「TRANSPOSE 発想のめぐり」と題して、物事をどのように捉え、見つめ、時代を刻むデザインへと変容させているのか、その環境と過程を独自の手法で紹介していく。
彼女の代表作と共にアトリエで使っている道具や日常の食事の風景など普段愛用している品々200点が展示されている。
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スカンジナビアのシンプルなデザインとクラフトマンシップが感じられ、モダンでカテゴライズされない普遍性がある彼女のデザイン。
世界中の日常に溶け込みながら、際立つ美しいフォルムやディテールを生み出す理由が、彼女の生い立ちやデザインプロセスから伺い知ることができる。
1.日常に馴染む陶器の表情
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両親が陶芸家だったことから幼少期に連れられて訪れた有田の記憶が、自身の作品と共に並べられている。1616/arita jpapnのブランドから彼女がデザインする有田焼の食器は、どれもシンプルで重ねた時に織りなす層、隙間に落ちる影も含めて美しい。有田焼というと丈夫で毎日使いの食器、というイメージだが、彼女はその有田焼に白の陰影を生み出し、料理が盛りつけられている時も、棚にスタッキングされている時も静かに確かな存在感を放つデザインに昇華している。
2.デンマークと日本の共通項
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食卓の風景は、バターナイフやレモン搾り器と共に急須や湯呑みが並べられている。一体何料理を食べているのかと不思議に思うが、そこは彼女のセンスでテーブルの上は秩序が保たれた空間に仕上がっている。それは日本の伝統文化やものづくりへの姿勢がデンマークのそれと多くの共通点があるからではないだろうか。いずれも使われる上での合理性を最優先に考えながら、その所作の美しさや使っていない時の佇まいも深く考えられているデザインだ。
3.発想を丁寧にカタチにする
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あまりデザイナーの創作現場を目にすることはないが、今回展示のひとつとして「創作の現場」がある。これは彼女が丁寧に創作プロセスを踏んでいることの自信の表れだと思うし、全てのデザインがこの創作の現場を通じて発想からカタチになる場であることが切実に伝わってくる。
角度や位置を試しながら仮止めしているのかマチ針のようなものが刺さっている。手芸のように身体とのフィット感が綿密に考えられながら、合理的なストラクチャー、デザインの両立のための試行錯誤が随所から読み取れる。
ギャラリーのアプローチ空間には彼女がデザインしたベンチもあった。
継ぎ手部分に使われているレザーは上品に家具のアクセントとなり、木目の表情も含め高い手仕事の様子が伺える。
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