細やかな装飾が建築と料理で味わえる"小笠原伯爵邸"
結婚が決まり披露宴をどこにするか検討していた頃、仕事が猛烈に忙しかった。その数年前に担当していた現場が若松河田駅の近くにあり、小笠原伯爵邸は知っていた。食事もした。加えて建築学科の先輩が披露宴を挙げた写真を見せてもらい密かに狙っていた。大して建築に興味のない今の主人を説得して披露宴をここで挙げた。
小笠原伯爵邸は旧小倉藩主の小笠原長幹の邸宅として、昭和2年に建てられた。設計は曾禰中條設計事務所。スパニッシュ様式として、アーチ状の開口部、細やかな装飾、スパニッシュ瓦、パティオなどが特徴的である。現在はレストラン、カフェ、ウェディングが展開されている。
1.漂う気品に自ずと背筋が伸びる
エントランスを抜けるとラウンジがあり、その奥に円弧状のシガールームがある。どの空間も用途に応じた様々な様式のインテリアが楽しめる。いずれも煌びやかなだけでなく、光の取り入れ方、吟味された調度品が醸し出す雰囲気に背筋が伸びる。
2.自然や鳥類をモチーフにした装飾が緻密
エントランス庇に見る葡萄柄のモチーフ。外壁に施された葉っぱや小鳥が舞う色鮮やかなレリーフ。他にも随所に見られる植物や生き物をモチーフにしたステンドグラスやレリーフが美しい。高い技術と独創性があり、全体を印象づける一貫性もある。
3.中央のパティオと屋上への階段がドラマティック
中央にパティオがあり、メインダイニングに光りをもたらす。パティオには屋上へ上がる階段があり屋上につながる。披露宴では階段の中段からパティオに集う人に向けてブーケトスが行われる。スペインの一角にいるかのような錯覚を覚える。
料理についてあまり知見がないので上手い表現ができないが、とにかくクリエイティブ。予想できない味わいに毎回ワクワクして、驚いて、あー食べ終わっちゃった、の繰り返し。建築も料理も同時に味わえる。若松河田というマイナーな立地も何だかよい。