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幻の一局⁉将棋棋士の羽生善治三冠(当時)と一般人とのハンデ無しの平手対局 ~将棋史から抹消された一局~

将棋棋士の藤井聡太七段が人気を博している将棋界ですが、今回は、過去に私が対局した非常に珍しい一局をご紹介します。

遡ること2006年11月26日、ヤフーが運営するサービス「Yahoo!ゲーム」(現在はモバゲーに事業譲渡)の「将棋」上で、将棋棋士の羽生善治三冠(当時)を招いての指導対局をするイベントがありました。

[ルール]
・対局時間の制限:60分
・ハンディキャップ:なし(平手指し)
・羽生三冠は3台のパソコンを使った「三面指し」
・参加条件:Yahoo! JAPAN ID(無料)

<当時の記事>


ニコニコ動画でも、当時の動画が一部残っています。
そこに登場する対局者1番が私です!信じてもらえないかもしれませんが。。

当時、Yahoo!ゲームの将棋には、一般対戦の交流ラウンジがいくつかあったのですが、1番の交流ラウンジにいた一般ユーザーから選ばるという噂が、数日前からラウンジ内にあるチャット上で流れていました。

当日、私が交流ラウンジを開いたときには、1番の交流ラウンジに人が殺到し、満員で入れませんでした。再度読み込みを何度か繰り返し、たまたま空いたので、運よくそのラウンジに入ることができました。

しばらくすると、突然招待の通知が届いたので、その招待を承諾して対局ルームに入りました。このとき、まだ羽生先生からの招待だとは気づいていませんでした。その対局ルームは非公開になっており、私と羽生先生だけが、その対局ルームにいました。

このゲームは、お互いが席につき、お互いが開始ボタンを押すことで対局が始まります。私が入室したとき、どちらの席も空いていたので、先手の席につきました。その後、羽生先生は後手の席につきました。私が先に開始ボタンを押し、他2人の対局者が決まったのか、しばらくして羽生先生も開始ボタンを押したことで、対局がはじまりました。

<対局ルームのイメージ(内容はサンプルのもの)>

画像6

通常、一般人同士の対局は非公開にしないので、もしかして羽生さん?と思いながら、同ルームのチャット機能を使って、「羽生さんですか?よろしくお願いします」と送っています。反応はありませんでしたが、ダイレクトにメッセージが送れる機能で、他のユーザーから私宛に届いたメッセージをみて、羽生さんと対局していることを確信しました。他のユーザーは、同時に配信していたライブ映像を見て、私にダイレクトメッセージを送ってくれたようです。

対局は、私が先手で、初手が7六歩。
お互いに矢倉囲いの対局でした。
変化があったのは中盤で、7三にあった角が、3七角成で突っ込んできて桂馬をとられました。

<3七角成の盤面>

対局画面4

角を飛車でとったところ、取られた桂馬を4五に打たれ、飛車と角の両取り状態になりました。
この手で頭が真っ白になりました。

<4五桂打の盤面>

対局画面2

その後、駒を取らせながらも、打たせる隙を全く与えてくれませんでした。
そして、羽生三冠の矢倉を全く崩すことができないまま、私の投了となりました。

<終局の盤面>

対局画面3

圧倒的な強さに、今でもその恐怖を感じています。

羽生先生は、小学生との百面指し等の動画は残っていましたが、一般人との対局で、しかもハンデ無しの平手指しの対局は、これが最初で最後ではないでしょうか。そうだとしたら非常に貴重なシーンかと思います。

しかし、日本将棋連盟の棋士データベースにも、wikipedia:羽生善治にも、イベントの存在自体が残っていませんでした。

なんとか当時の棋譜を再現したいと思い、日本将棋連盟やヤフー、モバゲーに問い合わせてみました。

<日本将棋連盟からの回答>

メール1

<ヤフー社からの回答>

メール2

<モバゲー社からの回答>

メール3

しかし、残念ながら棋譜は残っていませんでした。イベントの存在そのものも不明でした。

だから、せめてもの想いで、この記事を残しています。

もしこの対局の棋譜を再現できるとすれば、羽生善治三冠(当時)か、この場に解説で参加されていた早水千紗・女流二段(当時)の頭の中にある記憶だけかと・・・

渡辺竜王がボナンザと対局するよりも前、電王戦が始まるよりもずっと前、つまり人間同士の対局がもっとも強いとされていた時代の最後のお話です。

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