書評|作品集『GROUND』収録作品 XXX編、2010年代
※この投稿は、過去の投稿を再構成したものです
作品集『GROUND』発表に向けた作品紹介シリーズ、第3弾は、2009年から2021年の後期作品からチョイスした、ファイル「XXX」です。
XXX(2009-2021) from kentaro fujita
解説
長く険しい作品集となった本作も、この「XXX(ローマ数字で30を示す)」が最後のパーツであり、大きく2部構成となった。そのため、前パートでも「Side1」「Side2」に分けた。
「XXX」編では、作品集でいうと『kentaro fujita』(2009年)、『夢や希望を見失わず健康で幸せになれますように』(2014年)、『SQL』(2018年)、『TRiPLE CROSS』(2021年)の4作品、また、パネル作品『淡空(あわぞら)』が挙げられる。この12年間は、作品集に翻弄される日々を繰り返していたのだ。
前半のSide1では、『kentaro fujita』の構成を基にしながら、内容は4つの作品集の混成チームとなった。
同作品集は、「詩的造形力はシンプルな表現である」をコンセプトにしており、Side1も継承された。単語の組み合わせである詩をシンプルに届けることを体現した作品群である。Side1の本編のラストナンバーと位置付けた「淡空(あわぞら)」(2010年)は、2024年だからこそ描けた解釈である。kentaro fujitaの代表作はと問われると、このパートにある「この世に君の好きな星空がある限り」「君が夢なら」「淡空(あわぞら)」と挙げられるし、作品集のための作品である「苛立ちのブルース」「イン ザ ネイム オブ ラブ」「流星群」と、作品(シングル)ではない作品集(アルバム)らしさも理想を現実にできた。
後半のSide2は、作品(シングル)を中心とした、本作のコンセプトを30年間を地続きにしなければ、この作品たちがベストと呼ぶ名の下に集まっただろう。シンプルなフレーズを継承した「空」は、コロナ禍の作品である。また、「染まらない世界」「握濁」「虚空」が同年(2012年)に書かれた作品であることも、「にゃるダッシュ」や「Wonderful Love」(ニャンだふるラブ)のような猫シリーズのような楽しさも、「いとしのリーナ」で情景を思い浮かべて微笑むところも、言葉のいいところをぎゅっと詰め込んだ作品群である。