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伝えたかった言葉たち〜クリスマスが誕生日の彼女

「わがままを言っても良いかな…」

いつもの喫茶店。
明るくて元気な彼女が、付き合い始めて、最初のクリスマスを前に、僕を見つめながら、珍しくポツリと話しはじめました。

「もし、サンタさんがお願いを聞いてくれているのなら、高価なものなんていらないから、プレゼントは2つ欲しいな」

「私ね、子どもの頃から、ケーキもプレゼントもクリスマスと誕生日、合わせて1つにされちゃうの」

「末っ子だったし、それなりに考えてくれて、他の兄姉と比べると、プレゼントの設定は、たぶん高めだったみたいけど、ほら、子どもなりに、やっぱり寂しくてさ」

「朝起きて、枕もとのプレゼントは、やっぱり1つ。兄姉も多かったし、笑顔のサンタさんには何も言えなくてさ…」

「社会人になって、独立して、友だちとクリスマスをお祝いしてから、コンビニで自分用にケーキを買って帰るんだけど、安売りになってる子たちを前に、自分まで安売りされているみたいで、それがまた寂しくて、クリスマスも誕生日も憂鬱なの…(笑)」

12月に入ると、クリスマスが誕生日の彼女の少し冷めたティーカップを眺めながら、言葉を選んでいた姿を思い出します。

「今年はコンビニに行かなくても大丈夫だね」
クリスマス当日、サンタが前から用意していた2つのプレゼントはサプライズじゃなくなったけど、彼女が子どもの頃から、ずっと伝えたかった言葉たちを受け取ってあげられて、良かったと思っています。

色々な思いが、それぞれの形になるクリスマスはもうすぐです。

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