兄ちゃんのオムライス
先日、友人と飲みに行った時、話の流れは覚えていないけど、「最後の晩餐で、何が食べたい?」とカウンター越しに笑顔で聞かれた。少し考えて、別に狙いもなく「オムライスかな」って答えると、かわいいと言ってもらえた(笑)
模範解答ではないけど、酒場の会話としては、合格点は取れたみたいだが、休日のランチに悩んだ時にも選ぶメニューなので、あながち間違いでもないと思っている。
そのオムライスも、ケチャップ味のチキンライスをキチンと巻いて、上からケチャップを一筋かかったオーソドックスなオムライスが好み。でも、オムライスは別に母の得意料理でもないし、お気に入りのお店の人気メニューでもない。もちろん、僕の得意料理でも…
ここまで書いて思いだした。
「兄ちゃんのオムライス」か…。
変なところにこだわりのある母、実家のご飯は電気炊飯器ではなく、鍋で炊いていた。結局、炊き上がったご飯を電気ジャーで保温するので微妙ではあるけど、確かに鍋で炊いたご飯はやっぱり美味しい。
そんな母から「男でも料理くらいは作れなきゃダメ。ご飯さえ炊ければなんとかなるものよ」と小学校に入った頃から教えてくれて、高学年には、夕食のご飯炊きの担当になっていた。
弟にそんな話はしていないようなので、“少し面倒なご飯炊きを僕に押し付けた説”が高いと思っている。
もっとも、おかげで大学の一人暮らしでは、中華鍋でもご飯を炊けるようになっていたし、今でもクルマ旅の飯ごう使いも苦にならないので、母の教えが役に立っているようだ。
料理自体も、魚を捌くのは苦手だけど、何となく切ったり焼いたり煮たりできるようになった。特に玉ねぎのみじん切りをフライパンで炒めるのは、音や匂い、フライパンを使って料理をしている感もあってお気に入りで、ここからスタートできる炒飯は、パートに出て母のいない土曜日の昼は材料を変えつつ3つ下の弟に作っていた。
ある日、気まぐれにケチャップを入れて、オムライスに挑戦したものの、簡単に巻ける訳もなく、それでも、ケチャップライスにスクランブルエッグが乗った「オムライスのようなもの」を美味しそうに弟が食べてくれた。
ちゃんとしたオムライスを食べさせたくて、それ以降、何度かチャレンジしたけど、やっぱり上手に出来ず「兄ちゃんのオムライス」と名付けられた料理とは呼べないものを土曜のお昼、定番のよしもと新喜劇を見ながら、一緒に食べた。
楽しかった、美味しかった。
その時のこと、今、思い出した。だからオムライスなんだ。
僕が高校に進むと弟も中学生。
お弁当に部活にお昼を一緒に取ることもなくなっていた。
わずかな時期に笑いながら一緒に食べた、今でもきっと上手く作れない「兄ちゃんのオムライス」。久しぶりに今度のお休みに作ってみたくなった。