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ドッペルゲンガーな彼女

男女間で友情は成立するか。よく聞くテーマですよね。
その上で、この話をすると「そんなの嘘だぁ〜」と言われますが、彼女との4年間の日々で「成立する」と僕は思っています。

中学から高校までソフトテニスをやっていました。
でも、さすがに大学までソフトテニスを続けるのも疲れそうだし、さりとて、改めて硬式テニスを部活でガチ・スタートするのもしんどそうで、大学では、クラブに入るつもりはありませんでした。
ところが、旧知の高校の先輩に半ば強制的に連れて行かれたのが、部員不足で同好会へ降格の危機に瀕している「文芸部」でした。

「山のように本のある部室」が第一印象でしたが、そもそも文芸部って何をするところなのかよく分かりませんでした。
聞けば、幽霊部員も多いようですが、本を読んで作家談議をしたり、それぞれの得意分野(俳句や短歌、エッセイや小説など)の作品を冊子にして売ったり、一応、大会みたいなものもあって、他校とディベートして勝敗を決めたりするんだそう。入部後もよく分からなかった(笑)

その文芸部で沖縄出身の女性と知り合いました。
聞けば同じように連れられて来たようですが、作家の趣味や作品に対する感性が似ていて、自然に話せる初対面とは思えない人でした。

大学最初の履修は難しいよね。
「これは出席を取らない」とか「試験はレポート提出のみ」など、部の先輩情報を参考に登録しましたが、そもそも本好きで居心地の良い部室や図書館がお気に入りの僕は、毎日、通学しました(当たり前ですが)。
同じ履修を組んでいる彼女とは、席が決まっていなければ、先に教室に着いた方が、隣に相手の席を確保するパターンで、授業も学食も、図書館や部室もいつも一緒。美男美女なら、学内の話題になるところですが、アベレージな2人ですので、そもそも気づく人なんて全くありません…(笑)。

一緒にいるだけで、会話しなくても、お互い何を考えているか分かる心地よさ。ツーと言う前にカーが来る感じ。「Doctor-X」の大門未知子と城之内博美の雰囲気と言えば伝わるかもしれませんね。

ある日、部の飲み会で先輩が、
「いつも一緒だけど、いつから付き合ってるの?」と聞かれて、顔を見合わせて、同時に気がついた。「あっ、確かに付き合ってる」って(笑)

別に純粋培養で育った訳はないけど、それまで、お互いの住んでいるところも知らなかったのですが、その先輩の素朴な質問がきっかけで、その日から付き合うことになりました。
もっとも、周りから見れば、いつもと変わらない、いつも一緒の2人ですが。

才能だけで片付けちゃいけないけど、彼女が書くものは凄くて、付き合い始めて、僕のアパートに来ることもありましたが、原稿用紙と格闘する姿を眺めるだけで、僕にはいい刺激でした。
気まぐれに僕の書いているものを見て『着眼点はいいけど、着地点がなぁ』って言うのが口癖でした。

ネットワークを駆使したおかげで、部は格下げを回避したけど、僕も彼女もヘルプ入部でしたから、大会メンバーや要職に就くこともなく、自由に創作活動することができたのは、彼女と出会えたことを含めて、今、考えても、ありがたかったです。

卒業後、僕は地元に、彼女は東京に就職しました。
付き合っている間、艶っぽいこともなく、それでも、いつも一緒の4年間。異性というより、同じベクトルの上の同志という感覚。
ドッペルゲンガーと付き合うというは変ですが、不思議な4年間でした。

彼女、きっとNOTE 空間で何か書いている気がします。
僕が書き始めたんだから、間違いなく。いつか、この空間で出会えると思っています。そして『相変わらず着地点がなぁ』って言うんだろうな。
彼女の気配を感じて、今回は、彼女が気づくように書いた『存在証明的エッセイ』です。

連絡、待ってる。

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