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輝く希望 (霧島昇・菊池章子)。

新年への希望を込めて、大晦日の今日紹介するのは霧島昇と菊池章子の歌う『輝く希望』。大木惇夫作詞、服部良一作曲で、太平洋戦争中に書かれた知る人ぞ知る一曲です。日華事変が長引き、そして遂に太平洋での戦火が開かれた裏でも、満州への移住政策は続行していた様で、大陸の大地で一旗揚げんとする若き開拓民達は戦況をよそに日本を後にし、また此の時点で多くの先発した開拓民達が満州各地に居住していて、中には財をなした人もおりました。昭和16年にはまだ日本はソ連と戦火を交える可能性があり、関東軍の特別大演習が挙行された程。しかし日ソ中立条約が締結され、資源を求める軍部は南方への進軍を決定した事もあり、満州が最前線になる事態は回避されます。多くの開拓民達は胸を撫で下ろした事でしょうが、その不安は4年後には的中してしまうのです😱。

「輝く希望」は南方での戦いが注目される中で作られました。抒情詩を得意とした大木の歌詞に、服部良一はロシア歌曲風のメロディを付けており、色で例えるなら白っぽいモノクロームなサウンドです。打楽器を駆使した舞曲の様な出来で、バラライカ、ピアノ、バイオリン、マンドリン、シロホン、胡弓などが鮮やかに活躍しています。戦中はジャズ的なアレンジが禁じられた為に、服部はもう一つのスキルであるクラシックで勝負に出たのでしょう。これもですが、李香蘭の「私の鶯」「新しき夜」や、奈良光枝の「こだま」など、何もロシア歌曲風の作りであり、服部の才能は時局下でも冴えていました。一番を菊池、二番を霧島、三番で共唱という定石を踏んだ作りであり、まだ18歳の菊池章子の歌声は後年とは違った、無垢な美しさを感じます。昭和17年初夏の発売でした😀。

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