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月下の進軍 (上原敏)。

早くも今年の9月も終わり、夜空を見上げて見れば大きな満月が煌々と輝いています。そう云う訳で『月』をテーマにした歌を。これは上原敏とポリドール男性合唱団の歌う「月下の進軍」。佐藤惣之助作詞、阿部武雄作曲で、日華事変勃発後に出た戦時歌謡の一つです。昭和11年に「月見踊り」でデビューした上原敏は、その朴訥で飾らない歌声が受けて一曲毎人気が上がって行きました。「遠い湯の町」「妻恋道中」「渡世かるた」と新曲が続々と出る中で、まだ日華の戦火が燻る直前には「声なき凱旋」と云う、戦死した戦友を弔う歌を入れています。昭和12年7月7日の盧溝橋事件を皮切りに戦火は徐々に拡大。国内の各陸海軍部隊に動員令が掛かると多くの青年男子らが赤紙一枚で応召されて行き、そして歌や映画の世界も時局を反映した作品が多くを占める様になりました💬。

『月下の進軍』は明治時代の軍歌「戦友」とよく似たメロディで、実際殆ど下敷きにした感があります。一番は上原敏のボーカルに男性コーラスが追従するスタイル、二番は上原のソロ、三番は合唱のみ、四番で上原、五番が合唱と云う流れです。二番の歌詞🎵何の泥濘これしきに、弱音吐くなとまた齧る、硬いカンパン牛缶や、水筒の水もラッパ飲み…には、兵士のリアルな前線での食生活が現れています。戦争が進めば一日一個のカンパン、牛缶など全く口にする事がなくなってしまうのですが、そんな悲惨な状況に帝国陸軍が陥ってしまう事など日華事変初期の時点では、誰も想像できなかったでしょう。伴奏にはシンバル、ドラム、トランペット等で、粛々と前線をゆく兵士らの歩調が浮かぶ旋律でした。裏面は結城道子の「誉の號外」が組まれて昭和12年暮れに発売されています😀。


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