風になよなよ (豆千代、ナカノ・リズム・ボーイズ)。
豆千代とコロムビア・ナカノ・リズムボーイズの歌う「風になよなよ」。高橋掬太郎作詞、大村能章作曲で、当時人気を誇った鶯芸者の豆千代の全盛期の一曲です。明治最後の年に岐阜県富之保村(現、関市)で生まれた彼女は、本名を福田八重子と云いまして、切長の目元が特徴的な綺麗処として大変な人気を誇りました。子供の頃より芸事を徹底的に教え込まれており、10代で芸者として検番に身を置く事になりましたが、地元岐阜の御座敷では其の美貌と歌声が評判となります。21歳の時にコロムビアからスカウトされ、昭和9年に「こころ意気」「恋はひとすじ」の両曲を任されて、期待を背負っての一歩を踏み出しました。幸いにもコロムビアには同郷の作曲家である江口夜詩がおり、その彼が作曲し松平晃と入れた「曠野を行く」や「夕日は落ちて」はヒットを記録したのです🎼。
「風になよなよ」は芸者歌手の豆千代に、ジャズコーラスで売っていたナカノ・リズムボーイズと組ませた野心作で、和と洋の融合を意識したコミカルな歌です。伴奏もジャズバンドが担当し、歌のバックではリズミカルなピアノが歯切れ良く鳴っております。メインパートは殆ど豆千代が歌い、サビのパートでリズムボーイズが重厚なコーラスを添えて楽しく掛け合うという流れ。日本調流行歌の鬼才、大村能章の書いた旋律を奥山貞吉がフォックス・トロットにアレンジしており、コロムビアのレーベルカラーに沿ったオサレな一曲となりました。作詞は高橋掬太郎、締めの歌詞♬泣いて明石で、そりゃ須磨の浦…とは“泣いて明かして、すまないね”を捩ったのでしょうか。中々面白い粋な言葉遊びですね。裏面は中野忠晴とリズムボーイズの歌う民謡調流行歌「君と僕」が組まれました😀。