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天皇鑽仰 (木下保・内田栄一・斎藤静子・黒澤貞子)。

木下保ら4人の声楽家の歌う「天皇鑽仰」。結城勲作詞、島崎赤太郎作曲で、キングレコードの記念すべき第一曲目です。大日本雄弁会講談社は今も昔も日本出版界の最大手と言われおり、当時でさえも「キング」「少年倶楽部」「少女倶楽部」などの有名雑誌がリリースされ、書店の人気コーナーを占領していました。その講談社がレコード界への進出を発表したのが昭和5年の事。ただし自社では文芸部のみを設け、演者や歌手、オーケストラや作詞作曲家らは外部委託とし、製作は日本進出して新譜を出し始めたばかりのポリドールに任される運びとなりました。其の当時の謳い文句には以下の通り👇。

『流行歌は社会風敬上に甚大な影響があります。日本に良き歌、健全なる歌を広めたい。聞く人、歌う人の心を、清く明るく正したい。各家庭に平和と幸福とを漲らしたい。而して一層明るい日本を建設したい。此の熱烈、真剣なる念願により、更に健全なる歌を募集した処、応募総数実に18万篇。此の中より厳選し、特別に此の意味で諸大家に作詞作曲を乞い、之をレコードにして世に出すことにしました』

“流行歌を浄化する”と云う、かなりの冒険的野心をもってキングレコードはスタートした訳ですが、其の当時と云えばエロ小唄やジャズソング、シティソングの全盛期であり、従って初期のキングの流行歌は大して売れず、凡そ其の大半が埋もれ行く運命にあったのです。其の第一弾である「天皇鑽仰」は、国歌「君が代」の裏面にカップリングされており、結城勲の歌詞に音楽学校の教授も務めた島崎赤太郎が曲を付けました。三番構成で上品かつ厳かな旋律ながら、そう堅苦しさを感じず覚えやすい曲なのは、制作側の「より多くの人に聴かせて歌って貰いたい」と云う思いかも知れません。一番を女声、二番を男声、三番で合唱という流れで伴奏は辻順治指揮、陸軍戸山学校軍楽隊が担当しています。此のレコードは内容故に白盤と云う特殊ラベルで、昭和6年初頭の発売です😀。


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