幌馬車の唄 (和田春子)。
和田春子の歌う「幌馬車の唄」。山田としを作詞、原野為二作曲で、日本では短命に終わったパルロフォンレコードから出た新譜では、最大の売り上げを誇った一曲です。同社は前々世紀末にドイツで設立された歴史ある会社であり、後に英国コロムビアに買収されます。日本では昭和4年にイリス商会の手で立ち上げられて、昭和8年までほぼ4年間存続しました。途中、早々に店仕舞いした日本オデオンの音源を引き継いで、クラシックから純邦楽に至るまで幅広いジャンルのレコードをリリースし続けたのです。日本ではコロムビアやビククーがほぼヒットチャートを独占していたので、同じ海外企業同士でもパルロホォンは常に苦戦を強いられるまま。その時入社したのが、佐賀県出身の作曲家でディレクターも兼ねた“原野為二”こと池田不二男。旺盛な作曲活動を開始するのでした🎼。
「幌馬車の唄」は、当時色々な芸名で歌っていた渡邊光子に委ねられ、彼女はパルロフォンで和田春子と名乗りました。陽旋法三拍子のワルツで書かれており、アコーディオンのリードする前奏は、何処か遠く開拓時代のアメリカを連想させますが、此の歌が書かれた当時の日本はまだ一般大衆層に自動車が普及してはおらず、田舎は勿論のこと大都会でも馬車が移動の足として用いられていました。ですので此の歌は、当時は珍しくなかった日本の風景を長閑に描いていおり、渡邊の語る様な歌声を相まって発売されるや大好評を得たのです。伴奏はアコの他、フルート、ギター、ハープなどで、芳醇な和田春子の歌声にはなんとも言えない郷愁感が溢れていました。よく売れたのでパルロフォンがコロムビアに合併、閉鎖された後もリーガルに差し替えされ、裏面を変更して再発されています😀。