咸興小唄 (藤本二三吉)。
藤本二三吉の歌う「咸興(かんこう)小唄」。山口敬一作詞、中山晋平作曲の新民謡です。咸興だなんて歌になる様な街があったかな…と思う方も多い筈。それもその筈、今の日本地図の何処を探しても咸興と云う地名はありません。咸興とは現在の北朝鮮咸鏡南道にあるハムフン市の事なのです。明治末に朝鮮全域が日本に併合されて以降、京城に置かれた朝鮮総督府の元で近代化がスタート。各地に鉄道が引かれて、釜山、仁川、元山などの港湾都市が整備され、日本企業の進出が相次ぎました。昭和2年に咸興南隣の興南には日窒コンツェルンの大規模な工場が建設され、朝鮮有数の産業地帯として発展を重ねて行く事になります。丁度その頃、新民謡ブームが起こり日本各地の御当地ソングが次々と制作され、やがて朝鮮や満州の都市の歌も現れました。「咸興小唄」もその一曲です🎼。
「咸興小唄」は四番構成で、それぞれ同市の四季が一番づつ歌われております。陰旋法で書かれていて、伴奏は三味線、太鼓、シロホン、ピアノなど和洋楽器による静かなサウンド。作詞者の山口敬一とは同市在住の方なのでしょうか、歌詞にはバンリュウ山(❓)、市内を流れる城川江に掛かる万代橋、白頭颪と呼ばれる寒風が出て来ます。作曲は昭和戦前期に多くの新民謡を書いた中山晋平で、彼は他にも「京城行進曲」「大平壌行進曲」「四季の朝鮮」などを作曲しており、唯一「京城小唄」(市丸)のみが過去復刻されました。咸興は高句麗時代からの歴史ある街で、咸鏡南道の道都として工業以外にも農産物、畜産物の集積地として発展。朝鮮戦争では戦火を浴びて、興南地区の工場群は破壊されてしまったそうです。裏面は羽衣歌子の「咸興行進曲」がカップリングされました😀。
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