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叱られて (川路美子)。
川路美子の歌う「叱られて」。清水かつら作詞、弘田龍太郎作曲で、過去定期的に行われて来た「日本人の好きな歌ランキング」では確実にランクインする名曲です。詩人の清水かつらが大正2年に二篇の詩を書き、雑誌「少女号」で発表するや好評を得ました。そして弘田龍太郎が曲を付け、その後は子供達の口へと咀嚼して行き今日に至るのですが、この歌は夭折した弟と生き別れになった母を胸に描いて書かれたと言われております。電気吹込み時代になってからは、奥田良三や宮川美子など有名声楽家のレコードが多く出ましたが、此処で歌っている川路美子とは渡邊光子の変名。あらゆる会社に出入りして、和田春子や渡瀬春枝などの芸名を駆使して数多の録音を残したのは有名な話ですが、日東では此の川路名義の他に笹川銀子と云う名前を使用し、旺盛な歌手活動を行ないました🎤。
川路盤は、当時フランスから来日して赤坂溜池のダンスホール「フロリダ」に出演していた、巴里ムーラン・ルージュ楽団が伴奏しており、編曲はアコーディオン担当のモーリス・デュフールが担当。タンゴのリズムとなっており、楽器はアコ(デュフール)、バイオリン(シャール・パクナデル)、ギター(ガストーン・トーマ)が確認できます。楽団は昭和11年頃まで活躍して、メンバーも次々と入れ替わりますが、楽長のジェーン・ジェラール含む4人が初期の主な面々でした。渡邊はいつもの芳醇な喉を披露しており、そのソフトな歌声はアンニュイなサウンドも相まって、日々不憫な運命にある子供を見守っている、優しい母親の姿が浮かぶ様です。これも彼女の知られざる名唱と言えるでしょう。裏面も同じ顔ぶれで吹き込まれた「濱千鳥」で、昭和7年夏に発売されています😀。