明治一代女の唄 (新橋喜代三)。
新橋喜代三の歌う空前のヒット曲「明治一代女の唄」。藤田まさと作詞、大村能章作曲、新興・入江プロ制作による同名映画主題歌とあります。これは明治20年に起きた「花井お梅事件」を基に川口松太郎が脚色し、田坂具隆監督で映画化。主演はもちろん入江たか子で、他に日活でも活躍した島耕作も出ています。此の物語の主人公である花井お梅とは、下級武士の家に生まれながらも類稀なる美貌の持ち主であり、長じて花柳界で人気を獲得。二十歳にして自分の置き屋を持つ程になりました。しかし名義人を実父にした事から諍いが絶えず、とうとう自分自身が追い出されてしまいます。そんな中、嘗て世話をした峯吉に相談するのですが、彼は恩義ある筈のお梅に冷たく当たるばかりで、その上関係まで迫る有様でした。逆上したお梅は、浜町河岸で峯吉を刺殺してしまうのです💥。
「明治一代女の唄」は裏面曲でして、片面は人気上昇中の東海林太郎が歌う「柳なびけど」でしたが、その彼を置いて大ヒットしました。日本調歌謡曲なら誰にも引けを取らない名コンビの楽曲だけに期待を裏切らない出来、長めの間奏では三味による新内が流れて夜の浜町河岸の風景を偲ばせます。伴奏ではスティール・ギターが活用されて、その揺らめく音色が主人公お梅の悶える様な心情を奏でていました。喜代三の歌い方も迫るものがあり、その辺りの事情はお梅に重なるものがあったのかも知れません。20代の頃は郷里鹿児島から台湾に流れたり、好きな男性の為に上京したりと苦労が絶えなかったとか。彼女は昭和7年頃にデビューし、暫くコロムビアで数曲歌った後でポリドールに転じまして、翌年に「わしゃ知らぬ」でお目見え。同社一の芸者歌手として大活躍しました😀。